魔法にゃんこ - Desuga?
私は猫です。
正確には魔法使いになる代償に、猫の姿になった者です。
「おーミケさん、こんな所におったんか」
一羽の黒いかたまりが飛んで来て、アスファルトの道におりた。
相棒のカラスです。人とは話せないんですが、コイツとは話せます。
「カラスさん。その名前を呼ばないでくださいよ」
「なんでや」
「本当の名前じゃ無いんですよ」
「そうなんか?」
「まあいいんですけど。そう言えば、カラスさんって名前ありましたっけ?」
「ひどいなぁ、クロノですよ。クロノ」
「ああ、クロノさんでしたか」
名前、あったんですね。
中学生の女の子がコンクリート壁の角から出てきた。
「あれやな、例の」
「そうですね。もうすぐ男の方も来ると思いますよ」
「……おーきたきた。それにしてもミケさん人が良すぎます」
「あー言うの、ほっとけないタイプなんですよ」
「お!ミケさんの出番やな。三丁目の野良猫、しかも雄の三毛猫にして魔法が……」
「しっしずかに」
私は声を小さめにクロノに怒鳴った。
『堀川さん!』
男は女を呼び止めた。
『はい……』
女はゆっくりと振り向いて返事をした。
男は少し頬を赤らめながら言った。
『好きです。付き合ってください』
それから、沈黙が続く。
私は男たちとは反対の方へ歩きだした。
「ミケさん、どこ行くんですか」
「もう、大丈夫ですよ。お互い両思いですし」
「まあそうやけど、今回は出番なかったな」
「まあ、そんな時もありますよ」
「ところで、なんで人間の恋愛の手助けなんてしてるんですか?」
「聞きたいですか」
「ええ。まあ」
「実は私、人間なんです」
「ああ、だからですか」
「あまり、驚かないんですね」
「ええ、実は僕も人間なんで」
「だから言葉が通じるんですね!」
「そうかも知れんな!でも猫の方がええで。カラス、人間に嫌われてるし」
「猫もダメですよ。良い人と悪い人を見分けないと殺されますから……」
「そんなん魔法でどうにでも……あっ!ミケさん、魔法使えるやん。それで人間戻られへんの?」
「ホントですね。試して見ますか」
私は意識を集中させ呪文を思い出す。
「にゃんこの魔法で人間になれ!」
「なんやそれ」
――ポワンッ
私の周りを白い煙が包む。
「おー!凄いやんミケさん」
視界が高くなり少しふらついた。
「そうですね、慣れるのに時間かかりそうですが」
「僕にもやってや」
「にゃんこの魔法で人間になれ!」
――ポワンッ
カラスを白い煙が包む。
「僕も戻れたわ」
「簡単でしたね」
「ほんまやわ」
あっさり人間に戻れてしまいました。
「あっ家の鍵。森の巣に置いてきてもうたわ」
「えぇ……」