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15歳から始まる悪女人生計画。  作者: 聖蓮
そして、舞台は始まった。
9/32

捕まえないで、捕まえないで。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――



強い力で抱きしめられた。


「い、痛いっ」


そういっても彼の力が弱まることはなかった。

動けないことに気付いて彼は男なんだ、そう実感する。

翠の瞳はやさしさを帯びているはずなのに。

少しづつ恐怖がこみ上げる。


「は、はなして!痛ッ、痛い!!」


何度訴えても彼は頭を振って抱きしめ続ける。

一体、どうしたというのだろう。

諦めて抵抗するのをやめると、ほんの少しだけ抱きしめる力が緩くなった。

落ち着いて彼を見ていればわかった。

肩が震えている。

なんとなく、泣いているきがして、こみ上げている恐怖が薄れた。

男なんだ、なくんじゃない!!

まるで私が泣かしているようじゃないか・・・。

ぽんぽんと頭をなでる。


「姉さん、ぼく・・・」


弟、一輝は私の様子を伺うように見つめてくる。

私も恐る恐るのぞき見れば熱の孕んだ瞳がそこにあった。

すっと視界の端で私の手首を掴んだのが見えた。

先ほど花瓶の破片を拾おうとした手だ。

拾うときに切ったのだろうか、ほんの少しだけれど血が滴っていた。


「ぼくもう、治ったのかと思ってた、そんなことなかったのに・・・」


なにを言っているのか、考えようとして意識は掴まれている腕に流れてしまう。

意識、してしまう。

彼はそのまま傷口を舐めた。


「―――っん?!」


熱い、舐められたところがとても熱い。

恥ずかしくて、恥ずかしいことをされている、

そう見せつけらられている気がして。

私は目を伏せた。


―――ん、まてよ、これって異常性癖発動してるの・・・?


「ままっまま、待ってお願い!!」


恥ずかしさを隠せなくて言葉がうわずっている。

ああ、穴があったら入りたい。なんて言葉はここで使うのだろう。


「姉さん恥ずかしがってかわいい」


そういいつつ手をどこに入れようとしているのかな?

だんだん彼のもう片手が怪しいところに滑りこもうとしていた。

腰のあたりから服を捲り上げながら、肌を撫でるように、上へとずれていく。

つま先から膝、背筋にかけて何かが走った。

力が抜けて立っていられなくなる。


「ね、食べても、いいよね」


アウト!!

これはダメだ!!

その一言を聞いたとき、自分の中の羞恥心もろもろは吹き飛んだ。

代わりに恐怖心で埋め尽くされる。

こ、ころされる。


扉からなんて逃げられない。

引き止められてしまう。

頭は嫌に冷静だった。

だから、結論にいたった。



微笑む。



一瞬、力の抜けたその瞬間。

私は精一杯肩をおして、そのまま体を後ろに倒した。

カーテンはたなびく。

開いている窓に、私の体は躍り出た。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――



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