思い出すな、思い出すな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次に目を覚ました時、私はベットの中に居ました。
朝です、窓のカーテンの隙間から日が差し込んでいます。
そのカーテンも少し風に揺られている。
あたりを見渡せば自分の部屋だとすぐにわかりました。
私は安心して胸をなでおろします。
「助かった・・・のかな?」
けれどおかしい、私は一回死んだのかと疑いたいくらいおかしい。
けれどそんなことはない、はず。
昨日のことを思い返せば、それだけで。
死と冷たさが支配する世界、あそこにはもう帰りたくない。
本当は、だめかとおもった。
不覚思い出すのはやめておきましょう。
それよりもあの時聞こえた声、あれはたしかに彼のもの。
あの時言った助けるって、なんですか。
口に出しても、この場に彼はいないだからこれ以上は意味がないと思う。
けれど脳は、頭は考えてしまう。
あの時の言葉を。
”強制力”
文字通りに考えるならそれは世界がこうあるべきだと、元に戻す力・・・?
それともすでに一つのエンドが決まっていてそれに進ませる力?
いや―――。
どっちにしたって、どれにしたって。
それが私を殺そうとしていることに違いはないのだ。
身が凍る思いとはこんな気持ちなのでしょうか。
生きた心地がしません。
コンコン
控えめにノックされる音に私は必要以上に反応してしまいました。
私はこんなに臆病者だったでしょうか。
後ろに下がろうとして肘が近くの花瓶にぶつかった。
そのまま花瓶は床に吸い込まれるように落ちていく。
当然、割れました、はい。
扉のむこうの存在は音にぎょっとしたように声をあげます。
「だ、大丈夫?!姉さん」
それは義理の弟の声でした。
ええ、もちろん攻略対象の一人です。
ああ、彼にこんなところを見せてはいけない。
私は寝台からおりて床に落ちた破片を拾おうとします。
”今は”彼は異常性癖を抱えてはいません。
実は彼、途中から異常性癖を抱えるのです。
何がきっかけで異常性癖が発症するかわかりませんが、
シナリオ中にそんな描写があった気がします。
どうしてもっとちゃんと、視なかったのか。
あのころの自分を叱咤したい気持ちでいっぱいです。
「開けるよ、姉さん!!」
しまった。
彼は扉を開けようとします。
ですが扉はガチャと音を立てただけで、開きませんでした。
よかった鍵がかかっています、かけた記憶もないですが。
「私は大丈夫ですよ」
私は扉越しに声をかけて床の破片に手をかけます。
けれどその時、ガチャリと音がして私は扉をみます、開いていました。
なぜ、どうして鍵が彼の手に握られて。
「姉さん?!それ・・・」
何を勘違いしたのか、彼の表情が歪みます。
すごく、怒った表情です。
あああ!花瓶を割ったから怒っているのですか!!
そうですね、物は大切にしないとバチが当たりますよね!
それとも異常性癖発症ですか?それはやめてほしい!
彼は私のそばに駆け寄ると、突然。
私を抱きしめました。
「―――え?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――