巡ろう、巡ろう。
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それは刹那のようで永遠にも思える時間。
私は闇のように暗い、氷のように冷たいそんな空間にいました。
どうしてこんなことになったのでしょう。
私は悪くないはずです。
家出、が原因でしょうか。
妹がどうしてああなってしまったのか。
いえ、私が悪いのでしょうか。
15年間、そこで何かが変わっていたのかもしれません。
受け継いだこの悪女の記憶には確かに嫌がらせになる、
そんな類のこともした記憶もありました。
きっと、嫌われていたのでしょうね。
空間に座り込んで私は身をかき抱くように丸くなります。
寒い、寒いのです。
暗くてここは好きじゃない。
死、とはこうゆうものなのでしょうか。
あんまりじゃないですか。
前世で私は死にましたけれども、また私はここに送り込まれたのですか。
悪女だからですか、ですが私は――。
「悪女だよ」
ふと声が降ってきた。
伏せていた視線を上げればそこには空間に不釣り合いなくらい
白い少年が立っていました。
ファンタジーの神官が着るような、そんな白い礼服を身にまとって
光を吸い込んだような金髪に水晶のような青い瞳。
幼さを残す彼はきっとイケメンといわれる部類の人間ですね。
と、私はこんな状況でもなに説明口調でいってるのですか。
内心自重気味になってしまうのは、しかたないと思います。
「君は悪女だ、あそこで彼女を見捨ててはいけないよ」
見捨てるとは、なんの、いや、そうなのですか。
「そうなんですね、主人公を蔑ろにした、
そうゆうことになるんですか」
乙女ゲームの鉄則、主人公を蔑ろにした人は誰でもひどい目にあう。
いわゆるテンプレという展開のころだろう。
まぁ、妹にあんな風に殺されるなんて夢にも思いませんが。
彼は頷く、肯定の意味だろうか。
「あの世界はあまりに歪んで作られてしまった、彼女を中心に世界は動くんだ」
彼は指でルーンのような文字を綴る、
軌跡は光となって魔方陣のような形をとった。
溢れる青い光の粒はとても暖かかった。
「もう一度、繰り返そう、変えてほしい、世界を」
光が溢れ出て、世界が白く塗りつぶされる。
ただ私はそれを見ていることしかできませんでした。
彼が何を言っているのか、冷たさに晒されて思考力の落ちた私には
過ぎた産物のようにしか考えられなかったのです。
後のことになるでしょうが、きっと後悔します。
なぜ、この時、彼を問い詰めなかったのかと。
「廻ろう、ダークネソフィア――」
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