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レジェンド  作者: 神無月 紅
再びガンダルシアへ。

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4019/4076

4019話

 ジュレスダーのボスの魔石。

 それは結局セトが使うことになった。


(ジュレスダーはともかく、ボスはどういう攻撃をしたのか分からないし、そうなると魔石を使ってもセトがどういうスキルを習得するのかは予想出来ないんだよな)


 魔石を手にそんなことを考えるレイだったが、実際にはセトも王の威圧を使って相手の動きが鈍くなったところで一方的に攻撃して勝利したので、ジュレスダーのボスがどのような攻撃をするのかはセトにも分からなかった。


「ともあれ、試してみるしかないか。……準備はいいか、セト?」

「グルゥ!」


 レイの言葉に、セトは分かったと喉を鳴らす。

 そんなセトに向かい、レイはボスの魔石を手にし、放り投げる。

 ……幸いなことに、ボスの魔石は汚れていない。

 もし汚れていたのなら流水の短剣の水で洗ったのだろうが、セトが咥えたということもあって、ミラエンが持っている時にずっと撫で回していたお陰だ。

 ……もっとも、それはつまりミラエンがずっと触り続けていたということでもあるのだが、その辺まではレイにも詳細は分からなかった。

 ただ、触ってみた感じ特に汚れの類もなかったので、拭いたか何かしたのだろうと判断したのだ。

 魔石だけで、他の素材が何もなかったのは、セトがボスを倒したという意味では少し疑問だったが。

 ともあれ、放り投げられた魔石はセトが先程と同じようにクチバシで咥え、飲み込む。


【セトは『アイスブレス Lv.四』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。

 その内容はレイにとっては少し意外だったが、そもそもジュレスダーのボス……希少種か上位種かすらも分からない、もしかしたら実はジュレスダーとは全く違う種類のモンスターが何らかの方法でジュレスダーを操っていたという可能性もある。

 そういう意味では、魔獣術でアイスブレスのレベルが上がったのは、レイにしてみればそんなにおかしいことではない。


「グルゥ! ……グルルゥ?」


 アイスブレスのレベルが上がったことを喜ぶセトだったが、一体何故? と疑問に思う。

 レイと違って、セトはジュレスダーのボスがどのような外見をしてるのかは十分に理解している。

 ジュレスダーよりもかなり大きかったが、外見的な特徴ではジュレスダーと似ている部分が多かったというのもその目で見ている。

 そうである以上、特にアイスブレスのような氷系の攻撃をしてきた訳でもないのに、何故? とセトが疑問に思っても仕方がない。

 もっとも、ボスは最初にセトの王の威圧によって動きがかなり鈍くなっていた。

 一応王の威圧に対する抵抗には成功し、完全に動けなくなるというのは避けられたのだが……それでも、その動きがかなり鈍くなっており、そのような状態ではセトと戦っても勝利するのは難しいと判断し、即座に逃げ出している。

 だからこそ、もしボスがアイスブレスのような攻撃方法を持っていたとしても、セトに使うことは出来なかったのだろう。

 ……少しでもセトを足止めしようとして使うという方法はあったかもしれないが。


「まぁ……取りあえずアイスブレスのレベルが上がったのは悪くないことだ。ちょっと使ってみてくれるか?」

「グルゥ!」


 レイの言葉にセトも何故ボスの魔石でアイスブレスを習得したのかというのは忘れ、レイに言われたように実際にスキルを使ってみる。


「グルルルルルルルゥ!」


 セトのクチバシから、アイスブレスが……吹雪のブレスが放たれる。

 その威力は間違いなく以前と比べても増しており、ブレスの向かう先にあったジャングルの植物は、アイスブレスに触れた部分が凍り付く。


「へぇ……これは便利だな。アイスブレスだけに、使い勝手もそう悪くないように思えるし。……セト、良かったな」

「グルルゥ!」


 レイに褒められたことを嬉しく思い、セトは喉を鳴らすのだった。


「……さて、それでだけど、これからどうする? もう少し探索するか、そろそろ戻るか。まぁ、時間的には……まだ三時前だし、探索を続けて問題が……あ」


 懐中時計を出して時間を確認したレイは、それを再度ミスティリングに収納しようとしたところで、ふと気が付く。

 昨日、ムカデとカブトムシを倒して入手した甲殻を、防具屋にまだ持っていっていなかったと。


「グルゥ?」


 急に動きを止めたレイに、セトはどうしたの? と喉を鳴らす。

 レイはそんなセトに、困った様子で視線を向ける。


(このまま探索を続けるのもありだ。それは間違いないけど、昨日忘れたことを思えば、今日このまま探索を続けたら、また忘れそうな気がするんだよな)


 甲殻を防具屋に売って防具にするというのは、そこまで急いでやる必要がある訳ではない。

 だが、昨日すっかり忘れていたことを思えば、ここでまたダンジョンで攻略を続けて、夕方近くになってからダンジョンから出た場合、またその件については忘れるのではないかとレイには思えた。


「……よし。セトには悪いが、今日はもうダンジョンを出よう」

「グルゥ?」


 レイの口から出た突然の言葉に、セトは何で? と疑問に喉を鳴らす。

 レイはそんなセトに対し、悪いと思いつつ口を開く。


「昨日、ムカデとカブトムシから入手した甲殻を防具屋に売って、防具を作って貰おうと考えていたのを、すっかり忘れていてな。今は思い出したからいいけど、このままだとまた忘れそうだから、覚えている今のうちにしっかりとやっておきたい。……まぁ、防具の為にそこまでする必要があるのか? と言われれば、正直ないんだが」


 甲殻を防具にするというのは、ガンダルシアにいる冒険者達の為になるだろうという思いがあったが、同時にそれはレイの思いつきの行動でしかない。

 そうである以上、レイとしてはどうしてもそうしなければならないという訳ではないのだが、それでも一度考えてやってみようと思った以上、途中で投げ出すのはどうかと思った。

 もしモンスターの素材、今回の場合は甲殻なのだが、その甲殻がもっと高ランクモンスター……それこそランクAモンスターの素材であったりした場合は、レイもそれを使った防具を他の者達に使わせようとは思わないだろう。

 自分で使うか、あるいは仲間に渡すか……もしくは、何かあった時の為にミスティリングに収納しておくか。


「グルルゥ、グルゥ……グルルルルゥ」


 レイの言葉に、セトは残念そうにしながらも、ダンジョンから出ることに同意するのだった。






「あら、レイさん。今日は随分と早かったですね」

「ちょっと防具屋に行く用事があってな」


 ギルドの受付嬢、アニタの言葉にレイはそう返す。


「それに、早いと言っても俺にとってはそこまで早いって訳でもないと思うが」


 時間は午後三時すぎ。

 ……普通なら十六階から十五階の転移水晶まで移動するだけでも、結構な時間が必要となる。

 それこそジャングルではどこから敵が出てくるのか分からないので警戒しながら移動する必要があるし、溶岩の階層では足下が固まった溶岩だけに歩きにくいし、その暑さ……いや、熱さから、歩いてるだけでも体力を消耗する。

 ただし、それはあくまでも普通の場合だ。

 十六階は階段のある場所までセトに乗って飛んでいけば空を飛んでいるだけに奇襲についてはそこまで心配する必要はない。

 十五階もまた、セトに乗って空を飛べば足場の悪さは意味がないし、非常に素早く移動出来る。

 溶岩の熱については、レイはドラゴンローブがあれば、セトは素の状態で何も問題はない。

 そんな訳で、レイとセトはダンジョンから出ようと思えばすぐにでも出られるのだ。

 それこそ数分……とまではいかないが、十六階から脱出するまでに十数分程度の時間があれば余裕だった。

 そうしてダンジョンから出たレイは、そんなに数は多くないが、今日の探索で入手したモンスターの素材等を売り、アニタからその代金と共に今日は早いと言われたのだ。


「そうですね。……でも、そんなにダンジョンに潜ってないのに、レイさんが持ってくる素材はかなり多いんですよ。状態もこれ以上ないくらいに良いですし」

「俺の場合はマジックアイテムがあるしな」


 レイはミスティリングに視線を向ける。

 モンスターを倒し、その解体をするにしても丁寧にやるとなれば相応の時間が必要になる。

 なので、普通は魔石と討伐証明部位、後は高く売れる部位だけを素早く剥ぎ取るのだが、レイの場合はドワイトナイフを刺せば一瞬で解体が終了する。

 それも解体をしたというのに、魔石や素材は血や体液で汚れるということもない。

 また、ミスティリングがあるので、素材は全て持ち帰ることが出来るというのも大きい。

 これもまた普通なら、冒険者達が……そしてポーターが持てる限りの素材しか持ち帰れないのだから。

 そういう意味で、レイはソロであってもその辺のパーティ……いや、それこそガンダルシアにおける最高の冒険者パーティである久遠の牙と比べても、その点では間違いなく上だった。


「冒険者としては……いえ、冒険者以外であっても、それは羨ましいですよね」

「それは否定しない」


 実際、ドワイトナイフはともかく、ミスティリングはそれを持っているだけで金に困ることはない。

 それこそ商人としてやっていくのも、非常に簡単だ。

 何しろ収納した物は時の流れが変わるのだ。

 例えば農作物が大豊作になった時、安値で大量に購入してミスティリングに収納しておき、不作になった時に高値で売る。

 これだけで、ぼろ儲け出来る。

 他にも幾らでも金儲けが出来る方法はあるだろう。

 レイの場合は、魔獣術の件もあるので冒険者を止めるつもりはなかったが。


「とはいえ、冒険者を辞めるつもりはないから安心してくれ」


 冒険者以外でも稼げるというのを否定しなかったレイの言葉に、少し……本当に少しだけだが不安そうな表情を浮かべたアニタにレイはそう言う。

 実際、レイは冒険者を辞めるつもりはなかったので、その言葉を聞いたアニタは安堵する。


「そうですか。……それは何よりです」

「それでだ。……冒険者としてやっていく上で、ちょっと評判のいい防具屋について聞きたいんだが」

「防具屋……ですか? レイさんが?」


 意外そうな様子でアニタが尋ねる。

 アニタにしてみれば、レイは防具を装備しているようには思えない。

 ……勿論、レイの担当である以上、上からレイは全身をマジックアイテムで固めているといった情報は聞いているのだが、それでもアニタの目には精々が初心者用のローブを着ているようにしか見えなかった。

 幸か不幸か、アニタはドラゴンローブの隠蔽の効果を見抜くことが出来るだけの眼は持っていない。

 そういう物だと聞いているので、半ば無理矢理納得してるだけだ。

 だからこそ、そんなアニタにとってはレイがわざわざ防具屋に行くというのは疑問だった。


「ああ、ちょっとダンジョンでいい素材を入手してな。それを使って防具を作って貰おうと思って」

「レイさんが新しい防具を……十六階というのは、それだけ厳しい場所なのですね」

「え? ……ああ、いや。防具を作って貰うのは間違いないが、別に俺が使う防具じゃないぞ」

「……じゃあ、何でわざわざ防具を?」

「十六階のモンスターから剥ぎ取った甲殻を使った防具だ。それを使えば、ダンジョンに潜ってる冒険者も少しは生き延びられると思ってな」

「……ありがとうございます」


 レイの言葉に、アニタが……そして暇潰しがてらに話を聞いていた他の受付嬢やギルド職員達が一斉に頭を下げる。

 ギルド職員達にしてみれば、レイの行動にはそれだけ感謝すべきという思いがあったのだろう。


「ちょっ、おい? 別にそこまで感謝されるようなことじゃないぞ? 本当に、何となく思いつきでの行動なんだ。これからも同じようなことをするって訳じゃないから、あまり期待はしないでくれよ?」


 慌てた様子で言うレイ。

 言葉にした通り、レイにとって今回の行動は本当に思いつきによるものだ。

 だというのに、まさかアニタを含めたギルド職員や受付嬢からここまで感謝されるとは思ってもいなかった。

 そして当然ながらアニタやギルド職員がそのような行為をしていれば目立つ訳で……ギルドにいる冒険者や、カウンターで受付嬢と話していた者達も、頭を下げられているレイに視線を向けてくる。

 ……レイにとってせめての救いだったのは、時間が時間だけにまだギルドにはそこまで冒険者が多くなかったことだろう。

 結果として、忙しい時間のピークとなる夕方にギルドにいる冒険者と比べると、その人数はかなり少なかったのだから。

 もっとも、それでも多くの者達に見られるのは、レイとしては勘弁して欲しかったが。


【セト】

『水球 Lv.六』『ファイアブレス Lv.七』『ウィンドアロー Lv.七』『王の威圧 Lv.五』『毒の爪 Lv.九』『サイズ変更 Lv.四』『トルネード Lv.四』『アイスアロー Lv.八』『光学迷彩 Lv.九』『衝撃の魔眼 Lv.六』『パワークラッシュ Lv.八』『嗅覚上昇 Lv.七』『バブルブレス Lv.四』『クリスタルブレス Lv.四』『アースアロー Lv.六』『パワーアタック Lv.三』『魔法反射 Lv.一』『アシッドブレス Lv.八』『翼刃 Lv.七』『地中潜行 Lv.四』『サンダーブレス Lv.八』『霧 Lv.三』『霧の爪牙 Lv.二』『アイスブレス Lv.四』new『空間操作 Lv.一』『ビームブレス Lv.二』『植物生成 Lv.二』『石化ブレスLv.一』



アイスブレス:吹雪のブレスを吐く。吹雪の威力はセトの意志である程度変更可能。

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