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レジェンド  作者: 神無月 紅
再びガンダルシアへ。

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4007/4053

4007話

4000話達成記念の為、今日は2話更新となります。

今日が4000話達成記念の最終日なので、明日からはまた通常の更新に戻ります。

こちらに直接来た人は、前話からどうぞ。

 真っ直ぐ巨大ムカデに向かって飛ぶ、百十本の長針。

 その長針は、ムカデとの間にある木々や茂みを貫き、削りといったように進んでいく。

 それを見ながら、レイはやったか? と思ったのだが……

 キキキキキキキン!

 そのような金属音を立てつつ、長針は巨大ムカデの甲殻に弾かれる。


「え……嘘だろ?」


 予想外の結果に、レイは驚く。

 レベル七になった長針は、レイの感覚が正しければ金属の鎧すら貫くだけの威力を持っている筈なのだ。

 だというのに、ムカデはその甲殻だけで無数の長針を防いでいた。

 勿論、何もしないままに長針の攻撃を受けて平気だという訳ではない。

 ムカデは防御態勢とでも呼ぶような表現が相応しいように、甲殻だけを外側に出して丸まっている。

 また、そのような防御態勢であって、長針の一撃を完全に防げる訳ではない。

 甲殻と甲殻の隙間に、あるいは甲殻で守られていないような場所に、一本、二本と長針が突き刺さっている。

 いるのだが、それは所詮その程度でしかないのも事実。


(ムカデの甲殻で長針の一撃を防げるのなら、それはつまりあの甲殻は下手な金属鎧よりも固いってことか?)


 ムカデを観察してる間に、百十本の長針の掃射は終わる。

 するとムカデもそれを理解したのだろう。

 丸まっている状態から一気にレイに向かって襲い掛かろうとする。

 本来なら、このムカデは先程のセトの鳴き声に引き寄せられた存在だ。

 そうである以上、襲うのならレイではなくセトの筈なのだが……ムカデはセトに見向きもせず、レイに襲い掛かった。

 それだけムカデにとって、長針の一撃は驚きだったのだろう。

 鋭い牙……それこそ人の一人や二人は容易に切断出来るだけの鋭さと力強さを持った牙でレイに向かって襲い掛かろうとするものの、レイは突進してきたムカデの一撃を横に跳びつつ回避し……


「地中転移斬!」


 スキルを発動し、地面に向かって掬い上げるようにデスサイズの一撃を放つ。

 デスサイズの刃は地面を砕くのでもなく、掘るでもなく、吸い込まれるように消えていき……


「シャギャアアアア!」


 ムカデの下の部分が地中から出て来たデスサイズによって斬り裂かれる。

 しかし、ムカデも危険を察知したのだろう。

 デスサイズの刃が身体に触れたと思った瞬間、ムカデは身をくねらせて回避する。


「シャギャアアアッ!」


 身体を斬り裂かれた巨大ムカデは、レイの一撃を脅威に思ったのだろう。

 血を流しながらも、近くにある木に登り……レイに向かって口を開く。


「シャギャアアアア!」

「グルルゥ!」


 ムカデが何をしようとしたのか理解したセトは、跳躍して近くにあった木を蹴り、三角跳びの要領で木に巻き付く形で登っていた巨大ムカデの頭部に前足の一撃を……それもただの一撃ではなく、パワークラッシュのスキルを使った一撃を放つ。

 パァン、と。

 まるで水風船が地面に落ちて破裂したかのような、そんな音を立てて巨大ムカデの頭部が破壊され……


「グルゥ!?」


 何かに気が付いたセトは、翼を羽ばたかせてその場から素早く退避する。


「セト?」


 一体何があったのか。

 突然のセトの行動に疑問を抱くレイだったが、次の瞬間にはその理由を理解出来た。

 頭部を砕かれた巨大ムカデだったが、その身体はまだ木に巻き付いたままだ。

 その巨大ムカデが巻き付いている木が、パキパキという音と共に急速に石化していく。


「これは……石化ブレスか?」


 先程、巨大ムカデはレイに向かって口を開いた。

 その瞬間にセトが危険を察知して即座に動いたのだが、それが正解だったのを強く示している。


「グルルゥ?」


 セトが、大丈夫? とレイに向かって近付いてくる。


「俺は大丈夫だ。……セトの方こそ大丈夫か?」


 石化ブレスと思しき攻撃をされる前に、セトは巨大ムカデの頭部を砕いてくれたので、レイにとっては特に何も問題はなかった。

 だが、セトは石化ブレスを放とうとした巨大ムカデの頭部を砕くといったことをしたのだ。

 それはつまり、レイよりもセトの方が石化ブレスに触れる危険性があったということになる。

 だからこそ、レイはセトに大丈夫かと心配したのだが、セトはそんなレイに向かって大丈夫と喉を鳴らす。


「グルルルゥ」


 石化した木から、巨大ムカデが地面に落ちるのを横目に、レイはセトの身体を確認しておく。

 セトの身体のどこかに石化している場所はないか。

 素早くそれを確認し、本当にセトが大丈夫なのだと理解して安堵する。


「ふぅ……どうやら大丈夫みたいだな。……助けてくれたのには感謝するけど、だからってセトが危険な目に遭うようなことはしないでくれよ? もし石化ブレスを使われても、それこそマジックシールドを使えば対処出来るんだから」

「グルゥ」


 窘めるようなレイの言葉に、セトは少し元気をなくした様子で喉を鳴らす。

 レイを助けたのに、こうして怒られるとは思っていなかったのだろう。

 レイもセトを見て、今の態度が少し厳しいのではないかと思ったらしく、力を抜くように息を大きく吐いてから、セトを撫でる。


「セトが俺を助けてくれたのは嬉しく思う。けど、セトが俺を心配してくれたように、俺もセトが心配なんだ。今回は上手くいったからよかった。けど、もし頭部を破壊する前に石化ブレスが放たれていたら、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、セトが石化していた可能性もあるんだぞ?」

「……グルゥ」


 セトもようやくレイの言いたいことが分かったのか、素直にごめんなさいと喉を鳴らす。


(とはいえ。俺がセトの立場でも、恐らくさっきと同じことをするんだろうけど)


 それが自覚出来るだけに、そこまで強くセトを窘めることは出来ない。

 ……それこそレイとセトの立場が逆なら、恐らくセトもレイに危険なことはしないで欲しいと喉を鳴らすのだろうから。


「さて、この話はこれで終わり」


 このまま話すといずれ自分にとって不利なことに……それこそ自爆的なことになりそうだったので、この話についてはここで切り上げることにする。

 ……巨大ムカデの解体が楽しみだという理由もそこにはあったのだが。


「さて、じゃあ都合よく死体が地面に落ちてきてくれたことだし、解体するか。……あ、でも頭部を砕いたとなると、あの宝石? 鉱石? とにかくムカデの額に埋まっていたのはドワイトナイフではどうにもならない」

「グルルゥ!」


 レイの言葉に、セトはじゃあ自分が探してくると言い、周辺を探し始める。

 セトにとっては、自分が巨大ムカデの頭部を破壊したので、そのことに思うところがあったのだろう。

 もっとも、ここは熱帯雨林だ。

 地面には大量の植物が生えており、宝石か鉱石かは分からないが、とにかくそう簡単に見つけられる様子ではなかったが。

 とはいえ、この状況での探し物となると、やはり五感がレイよりも鋭いセトに任せるのが最善なのも事実。

 なのでそちらについてはセトに任せ、レイはドワイトナイフを取り出すと、巨大ムカデの死体に近付いていく。


「さて、何が素材として残るのか。……取りあえず、魔石と甲殻はあると考えてもいい筈だ」


 金属鎧すら貫く飛針の攻撃を防いだということは、巨大ムカデの甲殻は下手な金属鎧よりも上ということになる。

 そうなると、防具の素材として甲殻は非常に美味しい素材となるだろう。

 ……もっとも、その素材をどのように使うのかは、職人の技量次第だが。

 そんな風に思いつつ、レイはドワイトナイフに魔力を込めつつ、巨大ムカデの死体に突き刺す。

 眩い光によって周囲が満たされ……その光が消えると、そこには各種素材が残っていた。

 魔石と甲殻はレイが予想した通り。

 他にも保存ケースに入った何らかの内臓や、足。そして……


「えっと……肉……?」


 そう、出て来たのは間違いなく肉。

 ただし、当然ながら巨大ムカデをドワイトナイフで解体して出て来たということは、これはつまり巨大ムカデの肉となる。


「肉……肉か。虫なのに、肉?」


 レイが知る限り、虫に肉というのはない。

 いや、あるのかもしれないが、レイがイメージする肉は動物や鳥といった生き物の肉だ。

 だというのに、この巨大ムカデを解体して出て来たのは、そういう……動物や鳥の肉のように見える肉だった。


(まぁ……俺が知らないだけで、もしかしたら虫の中にもこういう肉を持ってる虫がいるのかもしれないけど。地球で一番繁栄してるのは虫だって話もあるくらいだし)


 それは、日本にいる時に知った知識だ。

 TV番組か、あるいは本か

 それはレイも既に憶えてないが、間違いなく何かで見た記憶がある。

 このエルジィンは地球でなく異世界だったが、だからといって多種多様の虫がいるのは間違いない。


(それに、これはムカデじゃなくてモンスターだしな。そう考えれば、普通に肉があってもおかしくはない……のか?)


 そう思うレイだったが、だからといってその肉を食べたいのかと言われると、レイとしては好んで食べたいとは思わない。

 地球では昆虫食というのはそこまで珍しくはないし、日本でもイナゴや蜂の子を食べる者はそれなりにいる。

 それはレイも分かっていたが、どうしてもレイの中には昆虫を食べるという認識がないのだ。

 ……あるいは小さい頃からレイもまた昆虫を食べていれば話は別だったかもしれないが、生憎とそういうことはなかった。


(これが蛇の肉とかなら、まだマシだったんだけどな)


 蛇の肉も、当然ながらレイは日本では食べていなかった。

 ただ、昆虫と比べると蛇の肉はそれなりに普通に食べられているというイメージがレイの中にはある。

 鶏肉に近い味や食感というのを何かで見たか聞いた覚えもあった。

 また、蛇を酒に漬けるというのもTVで見たことがある。

 そんな諸々から、レイはギルムに来てから蛇のモンスターの肉はそれなりに食べているので、今となっては既にそこに嫌悪感はなく、普通に食材として見ることが出来た。


「セト、これ食べたいと思うか?」

「グルゥ?」


 宝石を探していたセトは、レイの言葉に視線を向けてくる。

 そしてレイが持っているムカデの肉を見て……


「グルルゥ」


 普通に食べられるよと、そう喉を鳴らす。


「え? いいのか?」


 もしかして、自分に気を遣っているのではないか。

 そのように思って尋ねるレイだったが、セトは特にそのような様子もなく、本当に問題ないと思ってるかのように、レイを見ていた。


「……まぁ、セトが食べたいというのなら、俺はそれで構わないけど。じゃあ、魔石だな。これはセトが使ってくれ」

「グルゥ?」


 いいの? と喉を鳴らすセト。

 だが、レイはそんなセトに頷く。


「あの猿のモンスターの魔石は俺が貰ったんだから、当然次の魔石はセトが使うべきだろう?」

「グルルゥ!」


 レイの言葉に嬉しそうに喉を鳴らすセト。

 レイはそんなセトの様子に笑みを浮かべ、魔石を手にする。


「じゃあ、セト。ほら」

「グルゥ!」


 放り投げられた魔石を、セトはクチバシで咥え、そのまま飲み込み……


【セトは『石化ブレス Lv.一』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。

 それはレイにとって予想出来た内容だった。

 巨大ムカデが石化ブレスを使おうとしたところで、セトがそれを阻止したのだから。


「グルルルゥ!」


 石化ブレスを習得したことに、嬉しそうに喉を鳴らすセト。


「よかったな、セト。……とはいえ、新しく習得したスキルだ。実際にどうなるのか試してみないとな。あの茂みに向かって使ってみてくれるか?」

「グルルルルルルルルゥ!」


 レイの言葉に、セトは即座に茂みに向かって石化ブレスを使う。

 ブレスそのものは、灰色の煙のような気体だ。

 そのブレスが茂みに命中すると、茂みとその周辺……灰色の煙に触れるとパキパキと音を立てながら茂みは石化していく。


「お、これは……レベル一から強いタイプか?」


 そんな疑問を抱きつつ、セトが石化ブレスを使うのを止めたのを確認すると、レイは石化された茂みを確認する。

 だが……その茂みに触れると、レイはすぐにレベル一である理由を理解する。

 茂みは間違いなく石化されていた。

 だがそれは、あくまでも表面だけだ。

 茂みの一部を折ってみれば、すぐにその理由については理解出来た。


「表面だけ……そういう意味では、クリスタルブレスと同じような感じなのか? もっとも、レベル一だからこういう結果であって、レベルが上がっていけば、また違う結果になるのかもしれないけど」

「グルルルゥ……」


 レイの言葉に、セトは微妙な様子で喉を鳴らす。

 石化ブレスとクリスタルブレス。

 レイが言うようにその効果が殆ど同じだとしたら、それはスキルを使うセトにとって好ましくないと……そう思ったのだろう。

【セト】

『水球 Lv.六』『ファイアブレス Lv.七』『ウィンドアロー Lv.七』『王の威圧 Lv.五』『毒の爪 Lv.九』『サイズ変更 Lv.四』『トルネード Lv.四』『アイスアロー Lv.八』『光学迷彩 Lv.九』『衝撃の魔眼 Lv.六』『パワークラッシュ Lv.八』『嗅覚上昇 Lv.七』『バブルブレス Lv.四』『クリスタルブレス Lv.四』『アースアロー Lv.六』『パワーアタック Lv.二』『魔法反射 Lv.一』『アシッドブレス Lv.八』『翼刃 Lv.六』『地中潜行 Lv.四』『サンダーブレス Lv.八』『霧 Lv.三』『霧の爪牙 Lv.二』『アイスブレス Lv.三』『空間操作 Lv.一』『ビームブレス Lv.二』『植物生成 Lv.二』『石化ブレスLv.一』new


石化ブレス:石化する灰色の煙を放つブレス。レベル一では表面だけを石化させることが出来る。

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