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レジェンド  作者: 神無月 紅
再びガンダルシアへ。

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4000/4042

4000話

祝、4000話達成です。

それを記念して、今日から4日間、毎日2話投稿します。

Ⅰ日で4話投稿しようかとも思いましたが、こちらの方が読者の皆さんに喜んで貰えると思い、4日間2話更新jとしました。

これからもレジェンド、よろしくお願いします。

 セトの周囲に集まっているセト好きの者達。

 そのような相手を前に、レイはどうするべきかと考え……やがて、仕方がないと諦める。


「セト! 用事は終わった! 帰るぞ!」


 人混みの中心に向かい、レイはそう声を掛ける。

 すると次の瞬間……


「グルルルルルゥ!」


 人混みの中心部分から、セトの鳴き声が聞こえてきた。

 その鳴き声に、セトの周囲にいる者達はレイが来たのなら仕方がないと諦め……


「ちょっと、私はまだセトちゃんと遊んでいたいのに、何でよ!」


 不意にそんな声がレイの耳に入ってきた。

 どうやらセトの周囲にいるセト好きの一人が、これでもうセトと遊んだり愛でたりする時間が終わりだというのを、許容出来なかったらしい。


「止めなさいってば、セトちゃんと遊ぶのは、レイが来るまでってことは知ってるでしょう?」

「私はセトちゃんともっと遊びたいの!」

「……いや、だから……あー、もう。いい加減にしなさい。セトちゃんが好きなら、こうしてセトちゃんに迷惑を掛けるようなことは絶対にしちゃいけないことでしょ。それくらい分からないの? あんたが今こうして問題を起こしたら、それこそ次からはセトちゃんと遊ぶのが禁止されるかもしれないんだから」


 その言葉に、騒いでいた女は何も言えなくなる。

 女の言葉に反論が出来ない……のではなく、女の言葉を聞いた周囲にいるセト好きの面々が女を責めるような視線で見た為だ。

 騒いでいた女だけがセトと遊べなくなるのなら、それは構わない。

 だが、その女の道連れとして自分達もセトと遊べなくなったら……という思いからの視線だろう。

 そのような視線の集中砲火を浴びた女は、本当にそれ以上は何も言えなくなってしまう。


「グルゥ」


 そんな周囲の様子に、セトは騒いでいた女に向かって、またねと喉を鳴らすとレイのいる場所に向かう。

 集まっていたセト好きも、そんなセトの行動を邪魔するようなことはしない。

 ……名残惜しいという思いもそこにはあったが。


「グルルルゥ」

「皆に遊んで貰えてよかったな。ギルドでの話は終わったから、家に帰るぞ」

「グルルゥ、グルゥ、グルルルルルルゥ?」


 レイの言葉に、ダンジョンに潜らないの? と転移水晶のある方を見て喉を鳴らすセト。

 レイは正門にいた警備兵からの伝言で、ライグールとギランの件についてどうなったのかを聞きに来ただけで、ダンジョンに潜るつもりはなかった。

 しかし、ギルドに来ればいつもはダンジョンに潜るという認識だったセトは、レイがダンジョンに潜らずに家に帰るというのを聞いて疑問に思ったのだろう。


「ダンジョンは……あー、どうするか」


 ガンダルシアに帰ってきたばかりだが、歩くのではなくセトに乗って移動していたので、レイはそこまで疲れてはいない。

 それでもガンダルシアに戻ってきてから冒険者育成校に行ったり、家に帰ったり、それからギルドに来たりといったことをして、それなりに疲れてはいる。

 また時間ももう少しで夕方になるだろうという時間帯だ。

 そのような状況でダンジョンに潜りたいかと言われれば、レイは首を横に振るだろう。

 勿論ダンジョンでは未知のモンスターの魔石であったり、宝箱に入っているマジックアイテムだったりが入手出来るかもしれず、そういう意味では悪くないと思えるのも事実。

 だが、ギルドでの話もあったので、今日は何となくダンジョンに潜りたいとはレイには思えなかった。


「悪いな、セト。今日は何となく気が乗らない。明日の午後まで待ってくれ」


ガンダルシアに戻ってきたばかりである以上、明日は教官の仕事をサボってダンジョンに潜るといったことは出来ない。

 だが、冒険者育成校の授業は午前中で終わる。

 きちんと教師として雇われている者なら、午前中で授業が終わっても、書類仕事や明日の授業の準備といったことをする為に午後からでも忙しいのだろうが、レイは教官だ。

 書類仕事も殆どなく、授業の準備も特にない。

 その上、レイは冒険者としての行動に重い比重を置く、マティソンの派閥に入っている。

 そうである以上、午後からダンジョンに挑むというのは全く何も問題はなかった。


「グルルゥ? ……グルゥ!」


 レイとは違い、こちらは元気一杯のセトだったが、レイがそう言うのならと、大人しく引き下がる。


「じゃあ、家に帰るぞ。今日はガンダルシアに戻ってきた記念だし、少し豪華な料理にしよう」

「グルゥ!」


 豪華な料理と聞き、嬉しそうに喉を鳴らすセト。

 既にセトの中ではダンジョンに潜るという考えは消えてしまっているらしい。

 それでいいのか?

 セトの様子にそう思わないでもなかったが、変に駄々をこねられるよりはいいと思い、その件には触れずに家に向かう。

 もっとも、レイの家はギルドやダンジョン、冒険者育成校からそう離れた場所ではないので、そこまで長い時間歩く訳ではないのだが。


「グルゥ」


 だが、そんな短い時間であっても、セトは屋台に興味を惹かれ、食欲を刺激する香りを漂わせている串焼きの屋台を見ながら喉を鳴らす。


「家に帰れば、すぐに夕食だぞ?」

「グルゥ! ……グルルルゥ」


 レイの言葉に、セトは分かっているけど、それでも食べたいと喉を鳴らす。

 そんなセトの様子に、レイは少し考え……


「しょうがないな」


 セトを撫でながら、そう言う。

 もしこれでセトの食べる量が少なければ、レイも我慢しろと言っただろう。

 だが。セトはかなりの大食いだ。

 レイもまたその体格からは信じられないくらい大食いだったが、セトはそんなレイ以上に大食いなのだ。

 だからこそ、レイは屋台で買い食いをするくらいは問題ないだろうと判断したのだ。


「いらっしゃい。セトの分も合わせて、出来るだけ多く買っていってくれよ」


 当然ながら、屋台の店主も近くで行われていたレイとセトのやり取りは聞いていたので、レイとセトが屋台に近付いてくると、すぐにそう声を掛ける。

 その顔に浮かんでいるのは、満面の笑みだ。

 当然だろう。ギルムでもそうだったが、このガンダルシアでもレイはその屋台の料理が美味いと思えば、大量に購入していくのだから。

 屋台の店主にしてみれば、これ以上はない上客だ。

 ……勿論、そうして大量に買っていくのは、あくまでもレイが美味いと思ったらの話だが。

 もし匂いに惹かれつつも、この屋台で売っている串焼きを購入し、実際に食べてみたらいまいちだったということになれば、大量に買い取ったりということはしないだろう。


「……美味いな」

「グルゥ」


 購入した串焼きを食べたレイは素直に感想を口にし、セトもそれに頷くように喉を鳴らす。

 絶品という程ではない。

 だが、美味いか不味いかで判断するのなら、間違いなく美味い。

 肉は猪か何かの肉で、モンスターの肉程に深みのある味ではない。

 だが、それでも獣臭さはなく、外側はカリッと焼かれ、中はシットリとしている。

 素材の味はそこそこといったところだが、それを美味く調理していた。


「満足して貰えたかい?」

「ああ。取りあえず現在焼いてある分だけ全部くれ」

「毎度あり」


 レイの言葉に満面の笑みを浮かべて、店主は肉を焼き始める。

 レイが言ったのは、あくまでも今ある分だけでいいという意味だったのだが、店主にしてみれば、ここで焼けば焼いただけ全てをレイが買い取ってくれるのだ。

 そうである以上、ここで肉を焼かないという選択肢はない。

 そう判断していたのだが……


「もう、いい」


 串焼きを焼いていた店主に、レイが呆れたように言う。


「え?」


 店主は何故そのようなことを言われたのか全く分からず、完全に意表を突かれた様子だった。


「……もういいと言ったんだ」

「いや、でも……」


 店主にしてみれば、これから肉を焼いて焼いて焼きまくって、今日仕入れた分は全てレイに売り、早めに店じまいとするつもりだった。

 だというのに、こうしてレイにもういいと止められたのだから、一体何故と戸惑うのも当然だろう。


「……お前が焼いた肉を見ろ。最初に俺達が食べた串焼きは、しっかりと肉の状態に気を付けながら焼いていたから、あれだけ美味かったんだ。なのに今は、肉の状態を気にせず、とにかく焼いてしまおうということだけしか考えていない」

「……あ」


 そこまで言われ、店主も自分の失態に気が付く。

 とにかく金を稼ぐ為に徹底的に肉を焼いていたのだが、それは肉を美味く焼くのではなく、とにかく素早く焼くというのを優先してしまっていたのだと。

 勿論、それで生焼けといったことはないだろうが。

 しかし、それでもやはり串焼きの仕上がりは大きく違ってくる。

 店主の様子から、レイも事情を理解したと判断したのだろう。

 少しだけ語気を弱め、口を開く。


「俺は別に美食家とか、そういう訳じゃない。勿論美味い料理は好きだが、ただそれだけだ。けど、そんな俺から見ても串焼きの扱いが乱雑だった。悪いけど、そういう串焼きは買いたいとは思わないな」


 これが例えば、単純に料理の技量が拙くてや、美味い串焼きを焼けないというのであれば、レイもここまで不満に思わなかっただろう。……もっともその場合は、大量に纏め買いをしたりといったことはしなかっただろうが。

 美味い串焼きを焼く技術があるにも関わらず、焼くことだけを目的にして味を考えなかった。

 それがレイにとっては不満だったのだ。


「あー……うん。悪い。そうだな、折角の串焼きなんだ。適当に焼くというのは違うよな」


 店主も素直にレイの言葉を受け入れる。

 結局レイは最初に焼いてあった分だけの……少しでも美味いようにと焼かれた串焼きだけを購入する。


「悪かったな」

「次から気を付ければいい。折角技量があるんだから、それを伸ばす方向で考えた方がいいと思うぞ」


 そんなやり取りをし、レイはセトと共にその屋台を離れる。

 他にも屋台は何軒かあったのだが、今のやり取りを見ていた為だろう。自分達からレイに向かって買っていかないかと声を掛ける者はいなかった。

 そうしてレイはセトと共に串焼きを食べつつ、家に帰る。


「……レイさん、もうすぐ夕食の時間だというのに、何だか妙にいい匂いをさせていますね」


 ジャニスがレイを出迎えたが、レイからは食欲を刺激する香りが漂っていた。

 串焼きの香りがまだ残っていたのだろう。


「セトが食べたがってな。それでちょっと買い食いしてきた。俺も少し食べたけど、美味かったぞ? ほら」


 そう言い、レイはミスティリングから取り出した串焼きを一本ジャニスに渡す。

 串焼きを渡されたジャニスは、どう反応すればいいのか少し迷い……それでも折角渡されたのだからと、串焼きを口に運ぶ。


「……あら、美味しいですね」


 串焼きを一口食べたジャニスの口から、感嘆の声が上がる。


「だろう? セトが食べたくなるのも分かると思わないか?」

「……そうですね」


 レイの言葉に否定は出来ないものの、それでも夕食前に買い食いをするのはどうかという思いがそこにはあった。


「だろう?」

「……まぁ、いいですけど。レイさんが何を食べても、私は何も言えませんし。それに、レイさんなら夕食前に少し買い食いをしても、問題がないでしょうし」

「だろう? ……で、ついでだ。これを今日の料理に追加してくれ」


 そう言い、レイはミスティリングからギガントタートルの肉を取り出す。

 ギルムにおいては、既に冬の風物詩と言ってもいいギガントタートルの解体。

 それによって解体された肉で、非常に希少な肉なのは間違いない。


「……このお肉は何のお肉ですか?」

「ギガントタートルという巨大なモンスターの肉だ。高ランクモンスターの肉だから、美味い肉だと思うぞ」

「どのような料理が合うのでしょう?」

「どうだろうな。俺が食べた料理だと焼いたり茹でたり、煮たりとか、そういう感じだったが」


 レイは自分が食べたギガントタートルの肉の調理法を思い出しながら、ジャニスに説明する。

 焼く、茹でる、煮る。

 その調理法そのものは特におかしなものではない。

 だが、調理法そのものは分かるが、その詳細なレシピが分からないと何とも言えない。

 例えば焼くとしても、強火で一気に焼くのか、それとも弱火でじっくりと焼くのか。

 茹でるにしても肉だけで茹でるのか、それとも香草と一緒に茹でるのか。

 煮るのも、一体どのような具材と一緒に煮るのか。


「分かりました。少し試してみます。……ただ、折角美味しいお肉なのですから、出来ればもっとしっかりと美味しい調理法を探したいと思いますので」

「まぁ、その辺は好きにしてくれ。ただ、セトにはしっかりとこの肉を食べさせて欲しい」


 そう言うレイの言葉に、ジャニスは分かりましたと頷くのだった。

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