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レジェンド  作者: 神無月 紅
ギルムへの一時帰郷

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3958/3981

3958話

「嘘だろ……一体どんな魔力をしてるんだよ、お前」


 呆れたようにニラシスが言う。

 それは、レイが無詠唱魔法で出したファイアボール……熱はなく、明かりだけをもたらすそれをいつまで出していても……それこそ数時間どころか、一日、十日、百日、一年、十年、あるいはそれ以上の間出し続けていても問題はないと、そうレイに言われたニラシスの感想だ。

 文字通りの意味で莫大な魔力を持っているレイにしてみれば、この程度の魔法を出し続けるのは本当に問題がないのだが。


「そう言われてもな。そもそもこれくらい出来ないと、異名持ちにはなれないぞ?」

「いや、それのどこが……」


 明かりの魔法を出し続けるだけで異名持ちになるのか。

 そう言いたくなったニラシスだったが、ここでそれを言えばレイと色々と話す必要が出てくるだろうし、生徒達の中にも興味を持つ者がいるだろう。

 今はまず、このダンジョンの探索を行うのが先決なのだ。

 折角ギルムまで来て、ダンジョンの探索をする機会が出来たのだ。

 ここで無駄に時間を潰すようなことはしたくなかった。


「話は分かった。取りあえず明かりについては問題ないんだな。……なら、探索を始めよう。もっとも、見たところ一本道のようだから、罠に注意するくらいだが。モンスターも……今のところはいないようだし。あくまでも今の時点での感想だが、やっぱりまだこのダンジョンは出来たばかりの場所のようだな」


 ニラシスの言葉には誰も異論がないらしく、揃って頷く。

 レイもまた、そのニラシスの意見に異論はない。


「ああ。道が複雑になってなくて助かった。……明かりの件は多分、このダンジョンがもっと成長すれば、問題なくなるのかもしれないな。ただ、ダンジョンの広さを考えると、隊列はどうする?」


 十分に戦闘が可能となると、レイが見たところ、並ぶのは二人がせいぜいだ。

 その上で、ザイードのような巨漢のことを思えば、二人で並んで戦うのは厳しいだろう。


「背後からの攻撃がないように安心して戦うということを考えると、最後尾にザイードがいてもいいのではないですか?」


 レイとニラシスの会話に、イステルがそう口を挟む。

 その意見は、なるほどと頷けるようなところのあるものだった。

 実際、ダンジョンの探索に限った話ではないが、いきなり敵に背後から襲われるというのは、非常に危険なのは間違いないのだから。


(もっとも、このダンジョンはまだ出来たばかりであるし、一本道だ。後ろから敵が来る可能性は……今のところは、そこまで高くないとは思うけど)


 このダンジョンがどのくらいの広さ、深さなのかは、まだレイにも分からない。

 とはいえ、それでもダンジョンとして成立している以上、今は大丈夫でも奥の方まで進めば分かれ道等があってもおかしくはないし、あるいは隠し通路の類があった場合、そこから敵が出てくる可能性は十分にあった。

 その時のことを思えば、後ろから襲撃されないようにしておくというのは、決して間違ってはいないだろう。


「じゃあ、一番後ろはザイードでいいな?」


 確認を求めるようにレイが尋ねると、ザイードもその提案に特に異論はないのか、素直に頷く。

 本来なら、ザイードにしてみれば自分が最前線で戦いたいという思いがあるのだろうが、それでもレイが言うのならそうなのだろうと、素直に聞き分けることが出来た。

 本来なら壁役として活躍することが多いのだが、このダンジョンでは自分が自由に動くのは難しいという思いがそこにはあったのだろう。


「さて最後尾が決まったとなると……他の面子だな。ハルエスは真ん中でいいか」

「そうだな。弓を使えるハルエスだ。真ん中にいれば、前後どちらから敵が来ても対処は可能だろう」


 ニラシスがレイの言葉に同意し、これでハルエスの配置も決まる。

 だが……そこからが問題だった。

 ザイードとハルエスはこの臨時パーティの中で役割が非常にはっきりとしている。

 しかし、それ以外の面々となると役割が被っている者達ばかりなのだ。

 具体的には前衛を務める戦士ということで。

 勿論、一口に戦士と言ってもタイプは違う。

 例えばイステルは速度を活かした攻撃を得意とするし、ニラシスは純粋に戦士としてこの中でレイに次ぐ実力を持っているといったように。

 他にもアーヴァインは下手な低ランク冒険者よりも高い戦闘技術を持っている。

 そしてレイは、魔法も使える魔法戦士だ。

 カリフとビステロの二人は、典型的な戦士ではあるが、どうしてもアーヴァインやイステルに比べると腕が未熟だ。

 とはいえ、そこまで戦士に偏っているのは、かなり厳しいのも事実。

 あるいはこのダンジョンがもっと広い通路を持っていれば、戦士が多数いても問題ないかもしれない。

 だが、二人が並んで戦うのが精々といったことを考えると、これだけ戦士がいるというのは、戦力過剰……どころか、それによって足を引っ張られるようなことになってもおかしくはない。


「取りあえず、俺は絶対に前衛じゃなくてもいいから中衛に回るよ。ハルエスと同じく、前後どちらから敵が来ても対処出来るし」


 レイはここは自分がまず前衛から抜けるべきだろうと判断し、そう告げる。

 恐らくこのダンジョンはまだ出来たばかりで、そこまで強力なモンスターはいないだろうというレイの予想からくる行動でもあった。

 生徒達は折角ギルムに来て、出来たばかりとはいえ、未知の……本当に何も情報のないダンジョンの探索を行うのだ。

 そうである以上、一種の課外授業とも呼べる今回の行動で、レイは自分が出しゃばる必要はないと思えた。

 勿論、もし何かが……具体的には生きるか死ぬかといったようなことでもあれば、レイも前に出る気満々ではあったが。


「そうだな。なら、俺も何かあった時はすぐに対処出来るようにしながら、中衛に行こう」

「ニラシス教官?」


 レイに続き、ニラシスまでもが自分は中衛に回ると言い、それを聞いたアーヴァインが訝しげに名前を口にする。

 ニラシスが中衛に回ったのは、レイの考えを察したからだ。

 そうして残ったのは、アーヴァイン、イステル、カリフ、ビステロ。

 そうなると話は早かった。

 アーヴァインとイステルが前衛。

 カリフとビステロはザイードの前で、レイとニラシスの後ろ。

 後方から敵がザイードを襲ってきた時、ザイードが攻撃を防いでいる時にカリフとビステロの二人がその敵に応戦するといった形だ。


「じゃあ、陣形が決まったところで進むぞ。……お前達には心配いらないとは思うが、どんな敵が襲ってくるか分からない以上、何があってもすぐに対処出来るように注意はしておくように」


 レイの言葉に、話を聞いていた者達はそれぞれ頷く。

 具体的にどのような敵が出てくるのか分からない以上、何があっても即座に対応出来るように準備をしておくのは重要なことだと、誰もが分かっていたからだろう。


(とはいえ……出来たばかりのダンジョンである以上、そこまで強力なモンスターがいるとは思わないが。いたらいたで、こっちとしては嬉しいんだけどな。その場合は俺が倒すとして)


 そうなった場合、どう誤魔化すのがいいか。

 そう思いながら、レイはダンジョンを進み始め……


【セトは『クリスタルブレス Lv.四』のスキルを習得した】


 不意に脳裏に響くアナウンスメッセージ。


「おう?」


 いきなりのことだったので、レイは思わずそんな声を出す。

 そしてレイ……現在ダンジョンにいる中で最強のレイがいきなりそのような声を出したとなると、当然ながら他の者達も素早く反応する。


「イステル、敵を発見出来るのか!?」


 前方を進むアーヴァインが、素早くイステルに尋ねる。

 イステルはレイピアを手に、いつ反応してもいいようにしながら素早く周囲を見回しつつ、アーヴァインに返す。


「いえ、敵はいないわ」


 その二人だけではなく。他の面々もレイの言葉に反応して、何が起きてもいいように準備をしていた。


「あー……悪い。俺の気のせいだったみたいだ。何か透明なモンスターがいたような気がしたんだが」


 まさかいきなり魔獣術のアナウンスメッセージが流れたと言える筈もなく、レイはそう誤魔化す。

 レイのそんな様子に、ニラシスは疑問の表情を浮かべる。

 レイの実力を知っているからこそ、レイが言ったようなミスを本当にするのか? と疑問に思ったのだ。

 とはいえ、実際周囲にモンスターの姿が見える訳ではない以上、何かがある訳でもなかった。

 そんなニラシスの視線を感じつつも、レイは先程のアナウンスメッセージについて思い浮かべる。


(アナウンスメッセージがあったということは、つまりセトが魔石を食べたということか。以前にもこんなことがあったな。あれは……ランクアップ試験で、セトと別行動をしていた時か)


 以前一度あったことなのだから、今日こうしてまた同じことがあったというのは、驚くべきことではない。

 つまり、地上で坂道を守っているセトにモンスターが襲撃してきたのだろうと、レイは予想する。

 そしてこのトレントの森において、多くのモンスターがいるのは明らかだ。

 まだモンスターや動物の縄張りが決まっていない今、未知のモンスターが姿を現してもおかしくはない。


(とはいえ、レベルが上がったのはクリスタルブレスか。……そうなると、一体どういうモンスターが襲ってきたんだろうな)


 クリスタルブレスはかなり珍しいスキルだ。

 そして魔獣術は、基本的にそのモンスターの特徴が強く影響する。

 ……時には、なんでそのモンスターの魔石からそのスキルが? といったようなこともあるが。

 ともあれ、クリスタルブレスのレベルが上がったということは、恐らくクリスタルブレスを使うモンスターと戦ったのだろうというくらいは予想出来た。

 それが具体的に、どのようなモンスターなのかまでは分からなかったが。


「前方に穴を見つけた。落とし穴という訳ではないようだが、それでも何があるのか分からないので気を付けてくれ」


 アーヴァインの言葉が周囲に聞こえる。

 レイに対しては、ファンということもあってか丁寧な言葉遣いをするアーヴァインだったが、普段はそこまで丁寧な言葉遣いではない。

 今もまた、ダンジョンの中というのもあってか、丁寧な言葉遣いをしている余裕はないと判断したらしい。

 レイもそんなことで気分を悪くするようなことはないので、アーヴァインの言葉を聞いても特に気にしなかった。


「穴か。出来たばかりのダンジョンだと考えれば、もしかしたら罠になりかけの穴なのかもしれないな。レイはどう思う?」

「その可能性は十分にあるが……でも、まだ中に入ったばかりだぞ? そこでもう罠があるとなると、このダンジョンはかなり面倒臭いダンジョンになりそうだな」


 純粋に戦闘であったり、あるいはガンダルシアのダンジョンの中でも砂漠や氷、崖、溶岩の階層といったような、いわゆる環境が厳しい場所であれば、レイにとっては特に問題ない。

 ドラゴンローブの簡易エアコン機能によって、大抵はどうにかなるのだから。

 だが……それが罠となると、レイにとって少し厄介なのは間違いない。


(いざとなれば、罠対処用の魔法もあるから、それを使えばいいんだろうけど)


 左手に持つデスサイズを眺めつつ、レイはダンジョンを進む。


「あれ? これ……レイ教官、ニラシス教官、これってランプ……なのでは?」


 歩いている途中、土壁を見ていたイステルが不意に呟く。

 そんなイステルの言葉に、声を掛けられたレイとニラシスは、そして他の面々もイステルが見ている場所を確認する。

 するとそこには、ランプが……正確にはランプもどきとでも呼ぶべき存在があった。

 正確には、ランプになりかけているような、そんな何か。


「これ、もっと時間が経てば明かり用のランプになるんだろうな」

「周辺がそれなりに明るいのにですか?」


 レイの呟きに、ビステロがそう言ってくる。

 ビステロにしてみれば、壁や床、天井が微かにとはいえ明るくなっており、それもダンジョンが成長すればその明かりも強くなるのだろうと予想は出来るのに、何故そこで別の光源となるランプが出来るのかと、そう疑問に思ったのだろう。


「ダンジョンだしな」


 レイの口から出たのは、そんな言葉だった。

 ある意味で疑問を棚上げするかのような言葉だったが、実際にそれが事実である以上は他に言えることはない。

 ダンジョンの中というのは、誰にとっても予想外のことが起きてもおかしくはないのだから。

 だからこそ、イステルを含めた他の者達もレイのその言葉に納得し……ダンジョンについて生徒達より詳しいニラシスは、レイの言葉に頷くのだった。

【セト】

『水球 Lv.六』『ファイアブレス Lv.七』『ウィンドアロー Lv.七』『王の威圧 Lv.五』『毒の爪 Lv.九』『サイズ変更 Lv.四』『トルネード Lv.四』『アイスアロー Lv.八』『光学迷彩 Lv.九』『衝撃の魔眼 Lv.六』『パワークラッシュ Lv.八』『嗅覚上昇 Lv.七』『バブルブレス Lv.四』『クリスタルブレス Lv.四』new『アースアロー Lv.六』『パワーアタック Lv.二』『魔法反射 Lv.一』『アシッドブレス Lv.八』『翼刃 Lv.六』『地中潜行 Lv.四』『サンダーブレス Lv.八』『霧 Lv.三』『霧の爪牙 Lv.二』『アイスブレス Lv.三』『空間操作 Lv.一』『ビームブレス Lv.二』『植物生成 Lv.二』


クリスタルブレス:相手を水晶に閉じ込めるブレス。現在はLvが低いので水晶でコーティングする程度の威力。ただし、それでも相手の動きを多少止めることは可能。

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