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レジェンド  作者: 神無月 紅
迷宮都市ガンダルシア
3841/3865

3841話

カクヨムにて42話先行投稿していますので、続きを早く読みたい方は以下のURLからどうぞ。


https://kakuyomu.jp/works/16817139555994570519


また、カクヨムサポーターズパスポートにでサポートをしてくれた方には毎週日曜日にサポーター限定の番外編を公開中です。

「グルルゥ」


 部屋の中にあったお宝の収納を終えたレイが次に向かったのは、Y字路のもう片方の道。

 そちらの道を進んでいると、不意にレイの左肩に乗っているセトが鳴き声を上げる。

 いつもはレイがセトに乗っているのだが、今日はそれとは逆。

 そのことに疑問を思いつつ、レイはセトにどうしたのかと尋ねる。

 するとセトは洞窟の壁の方を見て喉を鳴らしていた。


「何か……ああ、なるほど」


 セトの見ている方をしっかりと確認すると、そこには隠し通路……という程に大袈裟ではないが、横道が一本あった。

 外から来た者には分からないが、内側から来た者には分かるようになっている、そんな横道。

 Y字路をもっと極端にしたような、そんな通路だ。

 もしセトがいなければ、レイも最初はこの通路については気が付かなかっただろう。

 今いる場所の奥を探索し、それが終わって帰る時に気が付いた筈だった。


(セトを連れてきてよかったな)


 通路を見つけてくれたセトを撫でる。

 そんなレイの手が気持ちよかったのだろう。セトは嬉しそうに喉を鳴らす。

 そうして少しセトを撫でてから、レイはまずセトが見つけた通路を調べることにする。

 とはいえ、通路そのものはそこまで長い訳ではなく、一分も歩かないうちに行き止まりとなった。

 そして行き止まりとなった場所に置かれていたのは、長剣や短剣、槍、斧、弓、矢。

 つまり、ここは武器庫だったのだ。

 もっともレイが捕らえた盗賊達がここにある武器を持っていった為か、残っている武器はそんなに数が多くはなく、質も悪かったが。

 それでも武器は武器だ。

 このまま放っておけばそのまま錆びるだけだろうし、最終的には朽ちてしまうだろう。

 ……警備兵が探索に来れば、回収していくかもしれないが。

 もしレイが普通の冒険者であれば、残っている武器の中でも程度の悪くない物を一つが二つ選んで持っていくだろう。

 あるいは馬車があるのならもう少し持っていくかもしれないが。

 だが、レイにはミスティリングがある。

 それを使い、この武器庫にある武器は全て収納する。

 使い物にならないような武器であっても、それこそ鍛冶師に売れば溶かして再利用が可能だし、もしくは火災旋風の中に放り込めば、それだけで威力は凶悪になる。

 弓と矢に関しては、そういう訳にもいかないので、いずれ何かに使わないといけないだろうが。

 ともあれ、そうして武器を全て収納すると、来た道を戻り……


「あ、これもしかして待ち伏せというか、挟撃用に隠れたりとか、そういう役目もあったりするのか?」


 ふと、そんな風に思う。

 レイが今いる場所は、洞窟に入ってきた時には見つけにくい場所にある。

 だとすれば、もし何者かが侵入した場合、ここに隠れていれば見つからない可能性が高い。

 そうすれば、容易に相手の背後から攻撃することが出来るのだ。


「……けど、普通ならそういうのはお宝のある場所の方に用意しないか? 何でわざわざお宝をあっちの通路の先に? まぁ、その辺については俺が考える必要もないか。何かしらのそういう理由があったんだろうし」


 そう言いつつ、レイは再び元の道に戻って奥に進む。

 するとやがて奥には盗賊達の生活スペースとなっている場所があった。

 ただし、盗賊達の性格を考えれば当然かもしれないが、かなり散らかっている。

 不幸中の幸いなのは、食べ残した料理といったものが散らかっていないことか。

 とはいえ、それは別に盗賊達が綺麗好きだからという訳ではなく、初夏の今、そのようなことをすれば虫が集まってきて不快だからだろう。

 ましてや、この洞窟があるのは森であり、自然豊かな場所で、虫も多いのだから。


「とはいえ……こうして見る限りだと、特に何も価値のある物はないっぽいな」


 この空間はあくまでも生活空間だったのだろう。

 レイから見て、特に何かがあるようには思えない。

 あるいは何らかの知識のある者が見れば、もしかしたら相応のお宝がある……という可能性もあったのだが。

 ただ、レイから見てそのような物がない以上、わざわざここで何かを探すといったことをする必要はない。


(というか、あの盗賊達……地面で寝ていたのか?)


 当然の話だが、こうして見たところ生活空間の中にベッドの類はない。

 そうなると寝る時は地面に直接……もしくは、精々が何らかの布を敷いて寝るといったところだろう。

 人の一生において、睡眠時間というのは三割前後もある。

 勿論詳細な時間については人それぞれだが、その三割の時間を地面で寝るというのは、疲れが取れるとはレイには到底思えなかった。


(いやまぁ、俺がそういうのを心配する必要はないんだろうけど)


 そんな風に思いつつ、最後に生活空間となっていた場所を一瞥すると、すぐに興味を失う。

 もしかしたら何かがあるかもしれない。

 そう思わないでもなかったが、それを込みで考えてもやはりそこまで詳しく調べたいとは思えなかったのだ。

 もし何かがあっても、それはそれで仕方がない。

 自分の後にこの洞窟に来た者が何かを見つけたら、その人物が幸運だったのだろうと、そう思う。

 そうして洞窟を出ると、今までレイの左肩にいたセトが地面に下りて元の大きさに戻る。


「どうやら、時間制限的には問題なかったようだな」

「グルゥ!」


 レイの言葉に、セトは嬉しそうに喉を鳴らす。

 先程まではかなりの小ささだったセトが、こうして四m近い大きさになるとやはり驚く。

 こちらの姿の方がレイには見慣れている。

 それは間違いないのだが、それでもやはりつい先程までは三十cm程の大きさで自分の左肩にいたのを思えば……今のこの状況では色々と思うところがあるのも事実。


(まぁ、それでもすぐに見慣れるんだろうけど)


 そんな風に思いつつ、レイは頭を擦りつけてきたセトを撫でる。

 撫でながら……ふと気が付く。

 そう言えば今日こうしてガンダルシアの外に出たのは、昨日倒したモンスター……赤い山羊と溶岩の大蛇の魔石を魔獣術に使う為だったと。

 それを考えたレイは、この場所なら丁度いいだろうと思う。


「セト、ここで魔石を使おう」

「グルゥ!」


 レイの言葉に、セトは分かったと嬉しそうに喉を鳴らす。

 セトにしてみれば、いつ魔石を使うのかと楽しみにしていたのだろう。

 そんな中でこうしてレイがここで魔石を使うと言ってきたのだから、それに喜ぶなという方が無理だった。


「一応……本当に一応だけど、周囲に誰かいないかを見てくれ」


 ここは盗賊のアジトで、その盗賊は全員捕まった。

そう考えれば、この近くに誰かがいる可能性は低い。

 それはレイも分かっていたが、それでも魔獣術を使う以上、そしてここには今日初めて来た以上、周囲の様子を警戒するなという方が無理だった。


「グルルゥ……グルゥ!」


 レイの言葉に、セトは素早く周囲の様子を確認する。

 しかし、そこにはやはり誰の姿もない。

 そのことを喉を鳴らして報告すると、レイはそれに安堵し、ミスティリングから魔石を取り出す。


「さて、じゃあ早速魔石を使うか。……ちなみにセトはどっちの魔石がいい? こっちが赤い山羊で、こっちが溶岩の大蛇だ」


 どっちにする? とレイはセトに尋ねる。

 しかしそんなレイに、セトは自分が先に選んでもいいの? と円らな瞳を向ける。

 レイはセトに向かい、安心させるように口を開く。


「セトがどっちを選んでも、俺にとっては問題ない。セトが好きな方を選べ」


 これはレイの正直なところだ。

 レイはデスサイズのスキル以外にも黄昏の槍やネブラの瞳を始めとしたマジックアイテムがあり、魔法という攻撃手段もある。

 ましてや、今となっては無詠唱魔法も使えるようになっているのだ。

 それに比べると、セトは普通の攻撃手段以外にはスキルしかない。

 いや、正確には剛力の腕輪のようなマジックアイテムもあるのだが、それはあくまでも身体能力を増すもので、黄昏の槍やネブラの瞳のように直接攻撃するものではない。

 だからこそ、レイとしてはセトに多くのスキルを習得して貰いたいと思っていた。

 ……だからといって、魔石を二つともセトにやるつもりはなかったが。


「グルルゥ……グルゥ!」


 少し考えた後で、セトが見たのは溶岩の大蛇の魔石。

 レイは頷くと、セトに向かって魔石を放り投げる。

 セトは魔石をクチバシで咥えると、そのまま飲み込み……


【セトは『ファイアブレス Lv.七』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。

 それ自体はそこまで驚くようなものではない。

 何しろ溶岩の大蛇はその名の通り溶岩を身体に纏っていたモンスターだったのだから。

 であれば、炎系のスキルのレベルが上がる、あるいは新たな炎系のスキルを習得するというのは、そこまでおかしなことではない。


「グルルゥ!」


 嬉しそうに喉を鳴らすセト。

 ファイアブレスはそれなりに使い勝手がよく、セトも使うことが多いスキルだ。

 だからこそ、セトはファイアブレスのレベルが上がったのを喜んだのだろう。


「試すのは……森から出たらだな。ここは結構空間的な余裕があるけど、それでもセトのファイアブレスを使ったら大きな被害が出るだろうし」


 盗賊達にとっても行動する時に邪魔だったからだろう。

 洞窟の前にある木は伐採され、ある程度の広さを確保していた。

 しかし、それはあくまでもある程度でしかない。

 セトのファイアブレスを試せる程かと言われれば、レイは即座に首を横に振るだろう。

 なので、ファイアブレスは森を出てから試すということになり、次はレイの番となる。

 ミスティリングからデスサイズを取り出し、赤い山羊の魔石を放り投げると……そのまま切断する。


【デスサイズは『火炎斬 Lv.一』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。

 それを聞いたレイは、先程セトがファイアブレスのレベルが上がった時と同じく、特に驚いたりはしない。


「火炎斬か。……氷雪斬のことを考えると、どういうスキルなのか想像するのは難しくないな」

「グルゥ」


 レイの言葉にセトが同意するように喉を鳴らす。

 セトにとっても、やはりアナウンスメッセージの内容からどのようなスキルなのか想像するのは難しくはなかったのだろう。


「ともあれ、魔石は使い終わった。後は森から出てスキルの確認をするだけだな」


 ファイアブレスの威力の上昇はともかく、火炎斬がどのようなスキルなのかは容易に想像出来る。

 だが、それでも実際にスキルを使ってみなければ、その予想が当たっているのかどうか、分からないのだ。

 だからこそ、レイとしてはどのようなスキルなのかは予想出来るものの、それでも実際に一度は発動してみる必要があった。


「グルルルゥ」


 レイの言葉にセトは嬉しそうに喉を鳴らし、そしてレイに乗ってと身を屈める。

 これ以上このアジトにいる必要もない以上、レイは素直にセトの背に乗り……するとセトは即座に走り出し、数歩の助走の後で翼を羽ばたかせて空に駆け上がっていくのだった。






「さて、ここなら問題ないだろ」


 盗賊のアジトのあった森から出てすぐの場所。

 盗賊達がアジトにしているだけあって、周囲には特に人の気配はない。

 あるいは、ガンダルシアの周辺で活動してる盗賊達の中でも他の盗賊のアジトもこの辺りにあるのかもしれないと思ったレイだったが、すぐにその考えを否定する。

 もしそうであった場合、心が折れている盗賊達に尋問した時に、その辺りについて話していてもおかしくはなかったのだから。


「まずはセトのファイアブレスだな。……やってくれ」

「グルゥ」


 レイの言葉に、セトはレイとは正反対の方を見て……


「グルルルルルルルゥ!」


 スキルを発動する。

 放たれたファイアブレスは、間違いなくレベル六の時と比べても威力も……そして攻撃範囲も広がっていた。

 放たれたファイアブレスによって周囲の温度が急速に上がるものの、レイは簡易エアコン機能付きのドラゴンローブが、そしてセトは元々がグリフォンでこの程度の温度は何の問題もなさそうに周囲の様子を眺めていた。

 ファイアブレスによって周囲に生えていた草は燃えたものの、その威力が強かったこともあってか、一瞬にして草は黒焦げになり、燃え広がるということはなかった。


「さすがだな、セト。使う場所は選ぶけど、この威力は凄まじい」

「グルルルゥ」


 レイの言葉に嬉しそうに喉を鳴らすセト。

 レイはそんなセトを撫でて落ち着かせると、次は自分の番だとデスサイズを手に、セトから少し離れ……


「火炎斬!」


 スキルを発動する。

 名前からして予想通り、氷雪斬の時と同じくデスサイズの刃が炎に包まれる。

 ……普通なら炎に刃が包まれると刃の方に相応のダメージがあるのだが、デスサイズのスキルというのも影響しているのか、デスサイズの刃にダメージがあるようには思えなかった。

【セト】


『水球 Lv.六』『ファイアブレス Lv.七』new『ウィンドアロー Lv.五』『王の威圧 Lv.五』『毒の爪 Lv.九』『サイズ変更 Lv.四』『トルネード Lv.四』『アイスアロー Lv.八』『光学迷彩 Lv.九』『衝撃の魔眼 Lv.六』『パワークラッシュ Lv.七』『嗅覚上昇 Lv.七』『バブルブレス Lv.四』『クリスタルブレス Lv.三』『アースアロー Lv.五』『パワーアタック Lv.二』『魔法反射 Lv.一』『アシッドブレス Lv.六』『翼刃 Lv.五』『地中潜行 Lv.四』『サンダーブレス Lv.七』『霧 Lv.三』『霧の爪牙 Lv.二』『アイスブレス Lv.三』『空間操作 Lv.一』『ビームブレス Lv.二』





【デスサイズ】


『腐食 Lv.九』『飛斬 Lv.七』『マジックシールド Lv.四』『パワースラッシュ Lv.八』『風の手 Lv.六』『地形操作 Lv.六』『ペインバースト Lv.六』『ペネトレイト Lv.七』『多連斬 Lv.六』『氷雪斬 Lv.八』『飛針 Lv.四』『地中転移斬 Lv.四』『ドラゴンスレイヤー Lv.二』『幻影斬 Lv.五』『黒連 Lv.三』『雷鳴斬 Lv.二』『氷鞭 Lv.三』『火炎斬 Lv.一』new





ファイアブレス:高熱の炎を吐き出す。飛竜の放つような火球ではなくブレス。炎の威力はセトの意志で変更可能。現在は川の一部を蒸発させる程度の威力を持つ。




火炎斬:デスサイズに刃が炎で覆われ、斬撃に炎属性のダメージが付加される。また、刃が炎に覆われたことにより、攻撃の間合いが若干伸びる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 確認以外で使う描写の少ないサイズ変更が見られた。 [気になる点] スキルの組み合わせを見たいです。 サイズ変更中のセトがパワークラッシュ等の直接攻撃系を使うとどうなるのか。威力が弱まるのが…
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