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レジェンド  作者: 神無月 紅
迷宮都市ガンダルシア
3833/3865

3833話

 青色の蛇の死体から出た素材は、青い鱗が多数に保管ケースに入った毒腺と思しき部位、そして魔石。


「牙だとか眼球とか肉とかも残るかと思ったけど……特に肉なんかは普通にあってもおかしくはないのに、何でだ?」

「グルゥ……」


 レイの言葉はセトにとっても同様だったのか、残念そうに喉を鳴らす。

 蛇の肉というのは、鶏肉に近い味がする。

 ましてや、ダンジョンの中でも十三階の草原の階層のモンスターである以上、それなりにランクの高いモンスターであり……つまり、それだけ美味い肉の筈だった。

 それでもこうして肉が出なかったということは……


(毒腺だろう内臓もあるのを考えると……肉にも毒があって、食べるのに向いていないとか?)


 肉ではないが、フグに毒があるのは広く知られている事実だ。

 そうである以上、モンスターの青色の蛇が肉に毒を持っていても、おかしくはない。


「まぁ、この青色の蛇から肉を手に入れられなかったのは残念だが、肉だけなら大量にあるしな」


 そう言うレイの言葉に、セトは少しだけ嬉しそうな様子を見せる。


「さて、解体も終わったし……いよいよ本番だな」

「グルゥ!」


 レイの言葉に、セトは嬉しそうに喉を鳴らす。

 レイやセトにとって、ドワイトナイフを使った解体というのは、あくまでも本番前の余興とでも呼ぶべきものだ。

 もっとも、解体で色々な素材が取れるので、そういう意味では余興だからといって手を抜くことはなかったのだが。

 ただ、それでもやはりレイやセトにとって一番大きな意味を持つのは、魔獣術なのだ。


「そうなると……順番的には、やっぱりアンフィニティの魔石からだな。セトからやるか?」

「グルゥ」


 分かった、自分が最初にやると喉を鳴らすセト。

 レイはそんなセトに向かって魔石を放り投げる。

 するとセトはそれをクチバシで咥えて飲み込み……


【セトは『ファイアブレス Lv.六』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。

 それを聞いたレイは、嬉しそうにしながらも特に驚いたりはしない。

 何故なら、アンフィニティの外見は溶岩の塊と称すべき姿だったのだから。

 そうである以上、炎系のスキルであるファイアブレスのレベルが上がるのは、そうおかしなことではない。

 アロー系のスキルであるファイアアローはまだ習得していなかったので、もしかしたらそちらを習得するかもしれないという思いがレイの中にはあったのだが。

 もしくは、いっそ溶岩のブレスという可能性も。


(ビームブレスは……まぁ、炎系じゃないにしろ、熱をもつという意味では同じなんだし、そう考えればという期待がなかったかと言えば嘘になるけど)


 そう思うレイだったが、ビームブレスについては空飛ぶ眼球の魔石で期待出来る以上、アンフィニティの魔石の件で残念に思っても、その残念さは軽い。


「セト、えっと……あー……ここだとちょっとまずいか。ちょっと林から出てからファイアブレスを試してみるか」

「グルゥ」


 レイの言葉にセトは分かったと喉を鳴らす。

 レベル五を超えた時点で、ファイブレスの威力は以前よりも大分強くなっている。

 そして今の魔石でレベル六になったのだから、林の中で試すことが出来る筈もなかった。

 幸いなことに、レイ達がいる林はそこまで深い林ではない。

 少し歩けば、容易に林の外に出ることが出来る。

 そうして林から出たレイは、何気なく空を見上げる。


「夏空って奴だな」

「グルゥ?」


 レイの言葉に、セトも空を見上げる。

 そこには入道雲が幾つかあり、それがない場所ではどこまでも高い青空が広がっている。


(ギルムに一時的に帰るのも、そろそろ本格的に考えないといけないな)


 ギルムに行く面子は既に決まったが、具体的にいつギルムに帰るのかというのはまだ決まっていない。

 正直なところ、レイとしては既に準備は整っているのでいつでもいい。

 一番の懸念は十五階に到達して転移水晶に登録するということだったが、それも既に終わっている。

 そうである以上、レイとしてはそれこそ明日急にギルムに帰ると言われても全く何の問題もないのだ。

 ……もっとも、十五階の転移水晶に登録しただけで、十三階と十四階は殆ど探索していないし、十五階もそれは同様だ。

 未知のモンスターとの遭遇であったり、あるいは宝箱の発見といったことをしたいとは思う。

 ただ、それをレイやセトが満足するまでやるとなると、また結構な時間が掛かる。

 そうなるとギルムに帰る日時を他の者達と合わせるのが難しくなるだろう。


(せめてもの救いは、アーヴァイン達のパーティが全員揃っているから、その辺は幾らか楽だってところか)


 もしギルムに行く面子が全員違うパーティの者であれば、日時を合わせるのは不可能……とまではいかないものの、かなり大変なのは間違いない。

 そう考えると、アーヴァイン達のパーティが揃っているというのはレイにとっても……そして他の関係者にしても、幸運だった。


「グルルゥ?」

「ん? ああ、そうだな。ここなら問題ない。使ってみてくれ」


 そろそろファイアブレスを使ってもいい?

 そう喉を鳴らすセトにレイが頷くと、セトは早速ファイアブレスを使う。


「グルルルルゥ!」


 セトのクチバシが開き、そこから放たれるファイアブレス。

 その威力は間違いなくレベル五だった時よりも上がっていた。

 そして十秒程ファイアブレスを放つと、セトはスキルの発動を止める。


「グルルゥ?」


 どう? どう? と嬉しそうにレイを見て鳴き声を上げるセト。

 レイはそんなセトを撫でて褒める。


「凄かったぞ、セト。今のファイアブレスは間違いなく強力なスキルだ」

「グルルゥ、グルゥ、グルルルルゥ」


 レイの言葉に嬉しそうに喉を鳴らし、次はレイの番だよと視線を向ける。

 レイはそんセトの様子に頷き、魔石を手に林に戻っていく。

 恐らくは林の外であっても誰にも見られてはいないだろう。

 そうは思うが、それでも魔獣術については可能な限り隠す必要がある以上、ほんの少し……僅かであっても、見つかるかもしれない可能性は可能な限り下げた方がいい。

 そう判断してのことだった。

 とはいえ、それでも最初にいたように林の奥深くまでは移動しない。

 ようは何らかの手段で誰かに見られなければいいのだ。

 だからこそ、レイは林に入ったすぐの場所……周囲が木々に囲まれている場所で足を止めると、ミスティリングから取り出しだデスサイズを手に、魔石を放り投げ……切断する。


【デスサイズは『黒連 Lv.三』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージだったが……


「うげぇ」


 それを聞いたレイの口からは、自分でも気が付かないうちにそんな声が漏れ出ていた。

 当然だろう。

 この黒連というスキル、デスサイズで切断した場所が黒くなるという、ただそれだけのスキルなのだ。

 デスサイズが習得したスキルの中で、最も使えないスキルなのは間違いない。

 ……それ以前に、レイとしては何故アンフィニティの魔石で黒連のレベルが上がったのかが分からなかったが、

 魔獣術というのは、基本的にその魔石を持っていたモンスターの特徴が大きく影響してくる。

 例えば今回のアンフィニティの場合、炎系のスキルのレベルアップ……はデスサイズに炎系のスキルはないので、新しく炎系のスキルを習得出来れば、レイにも納得は出来ただろう。

 実際セトはファイアブレスのレベルが上がっているのだから。

 だというのに、何故自分は……いや、デスサイズは黒連のレベルが上がるのか。

 それがレイには全く理解出来なかった。


「グルゥ」


 レイの様子に……そして何よりセトもまた先程のアナウンスメッセージを聞いた為に、レイを励ますように喉を鳴らす。

 レイはそんなセトの態度で我に返ると、気分を切り替える。


「気にするな、セト。何でまた黒連のレベルが上がったのかは分からないが、それでもスキルはスキルだ。今はまだ使い道がなくても、レベル五になればどうなるか分からないし」


 そう言い、一応黒連を使ってみる。

 するとレベル三になったことでデスサイズで斬り裂いた黒い空間は三つ作ることが出来るようになっていた。


「うん。……まぁ、この辺は当初からの予想通りだな」


 黒連を習得した時と、レベル二になった時。

 その時の予想からレベル三になったら黒い空間を三つ作ることが出来るのだと思っていたので、そういう意味ではこちらも予想通りの結果となった。


(アンフィニティとの戦いではそういうのがなかったけど、何か黒連に関係するような何かが、実はアンフィニティにあったとか? ……とはいえ、それはそれでどうかと思わないでもないけど)


 もっとも、レイもまたデスサイズが習得した黒連というスキルを持て余しているのだ。

 そうである以上、もしアンフィニティが黒連と似たような何らかのスキルを持っていたとして、それを実戦で使うかどうかというのは、微妙なところだろう。


「まぁ……黒連についてはいいか。そういうものだと思っておけば、それで構わないし。そんな訳で、次の魔石だ。こっちも……まぁ、多分セトなら問題はないと思う」

「グルゥ」


 空飛ぶ眼球の魔石を手に言うレイの言葉に、セトも異論はないといった様子で喉を鳴らす。

 そしてレイは魔石をセトに向かって放り投げると、セトはクチバシで魔石を咥え、飲み込み……


【セトは『ビームブレス Lv.二』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。

 それを聞いたレイは、やっぱりなと思う。

 空飛ぶ眼球はビームを放つ攻撃をしていた。

 それを考えれば、セトの持つ同じようなスキルのビームブレスのレベルアップは当然の流れなのは間違いない。


「グルゥ!」


 やった! と喉を鳴らすセト。

 レイはそんなセトを撫でつつ、実際に使って貰う。

 レイ達がいるのは林に入ってすぐの場所なので、そこでビームブレスを試す。

 ファイアブレスと違い、周辺の木々が延焼するといったことはないので、多分大丈夫というのがレイの予想だった。

 レイが頼むと、セトはすぐにビームブレスを使う。


「グルルルルゥ!」


 放たれたビームブレスは、レベル一の時よりも明らかに太い。

 レベル一の時は指程の太さ……細さと称してもいいようなものだったのに対し、レベル二になったことで握り拳程の太さになっている。


「へぇ、大分ビームの太さが増したな」

「グルゥ!」


 ビームブレスを放つのを止めたセトは、レイの言葉に嬉しそうに喉を鳴らす。

 そんなセトを撫でつつ、レイはデスサイズを手に自分で空飛ぶ眼球の魔石を放り投げ、切断する。


【デスサイズは『幻影斬 Lv.五』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージに、レイはまたもや微妙な表情を浮かべる。

 ビームを放ってきた空飛ぶ眼球の魔石だけに、光系のスキルを習得するか、あるいはマジックシールドのレベルが上がるとばかり思っていた。

 実際、セトも当初の予想通りにビームブレスのレベルが上がったのだから。

 だというのに、何故かレイのレベルが上がったのはマジックシールドではなく幻影斬。


(あ、でも幻影斬も幻……つまり光系のスキルなのか? それに、レベル五になったのも事実だし)


 そういう意味では幻影斬のレベルアップでも納得するしかない。

 そう思いつつ、レイは実際に幻影斬を試してみる。


「幻影斬!」


 スキルを発動して幻影斬を使用すると……


「え?」


 幻影斬の名の通り、レイの振るったデスサイズの一撃が同じよう振るわれる幻影が生み出される。

 だが、その数は五。

 レベル四の時に生み出された幻影が四だったのを考えると、レベル五では五つの幻影が生み出されるのは不思議ではない。

 不思議ではないのだが……今までの経験からすると、スキルというのはレベル五になると一気に強くなるのだ。

 なのに、生み出された幻影が五つなのは一体どういうことか。

 それを疑問に思いつつ、このスキルも外れなのか? と思ってしまう。


「まぁ、今度実戦で試してみればいいか。……今回の魔石はどっちもデスサイズにとっては微妙な感じだったけど。……セト、最後の青色の蛇の魔石はお前が使ってもいいぞ」

「グルルゥ?」


 本当に自分が使ってもいいの?

 そう喉を鳴らすセトに、レイは頷く。

 先程自分で口にしたように、今日の魔獣術では黒連と幻影斬という微妙なスキルのレベルが上がった。

 なら、青色の蛇の魔石をデスサイズに使っても……そう思ってしまう。

 であれば、セトに使わせた方がいいだろうと判断し……そしてレイは魔石を放り投げると、セトはそれをクチバシで咥えて飲み込む。


【セトは『バブルブレス Lv.四』のスキルを習得した】


 そう、脳裏にアナウンスメッセージが響くのだった。

【セト】

『水球 Lv.六』『ファイアブレス Lv.六』new『ウィンドアロー Lv.五』『王の威圧 Lv.五』『毒の爪 Lv.九』『サイズ変更 Lv.四』『トルネード Lv.四』『アイスアロー Lv.八』『光学迷彩 Lv.九』『衝撃の魔眼 Lv.六』『パワークラッシュ Lv.七』『嗅覚上昇 Lv.七』『バブルブレス Lv.四』new『クリスタルブレス Lv.三』『アースアロー Lv.五』『パワーアタック Lv.二』『魔法反射 Lv.一』『アシッドブレス Lv.六』『翼刃 Lv.五』『地中潜行 Lv.四』『サンダーブレス Lv.七』『霧 Lv.三』『霧の爪牙 Lv.二』『アイスブレス Lv.三』『空間操作 Lv.一』『ビームブレス Lv.二』new



【デスサイズ】

『腐食 Lv.九』『飛斬 Lv.七』『マジックシールド Lv.四』『パワースラッシュ Lv.八』『風の手 Lv.六』『地形操作 Lv.六』『ペインバースト Lv.六』『ペネトレイト Lv.七』『多連斬 Lv.六』『氷雪斬 Lv.八』『飛針 Lv.四』『地中転移斬 Lv.四』『ドラゴンスレイヤー Lv.二』『幻影斬 Lv.五』new『黒連 Lv.三』new『雷鳴斬 Lv.二』『氷鞭 Lv.三』


ファイアブレス:高熱の炎を吐き出す。飛竜の放つような火球ではなくブレス。炎の威力はセトの意志で変更可能。現在は川の一部を蒸発させる程度の威力を持つ。


バブルブレス:無数の泡を吐き出す。泡の大きさはレベル一で直径一~三cm、レベル二で三~五cm程、レベル三で五~七cm程、レベル四で七~九cm程の対象にぶつかると破裂して粘着力のある液体へと変わり、敵の動きを止める。


ビームブレス:ビームのブレスを吐く。レベル一では指一本分、レベル二では握り拳くらいの太さで岩を破壊するくらいの威力。


幻影斬:デスサイズを振るった時、デスサイズの幻が生み出されてレイが振るった一撃の近辺に振るわれる。あくまでも幻影だが、触れ者は実際にデスサイズで斬られた痛みを負う。ただし、幻影なので傷跡は残らず、あくまでも非常にリアルな幻影に脳が痛みを感じるというだけ。レベル一で生み出される幻影は一つ。レベル二で二つ、レベル三で三つ、レベル四で四つ。レベル五で五つ。


黒連:デスサイズの刃が黒くなり、その刃で切断した場所が黒くなる。レベル一では一度、レベル二では二度、レベル三では三度デスサイズを振るって黒い斬り傷を作ると消える。その黒い空間はただそこに存在するだけで、特に特殊な効果はなく、数分で消える。


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[一言] 全ての作品と更新に感謝を込めて、この話数分を既読しました、ご縁がありましたらまた会いましょう。(意訳◇更新ありがとな、また読みに来たぜ、じゃあな!)
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