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レジェンド  作者: 神無月 紅
迷宮都市ガンダルシア
3726/3865

3726話

すいません、予約投稿を1日ミスってました。

 じっと地面に倒れた蔦の四足獣を見るレイ。

 身体が切断されても、蔦によって他の部位と繋がり、それによって修復しようとするその生命力は、レイにとっても驚きだった。

 攻撃手段そのものは蔦を槍や鞭のように使うといった程度で、レイにとっても対処がしやすいのは間違いなかった。

 だが、体力……しぶとさという一点については、レイが見ても驚くべきものだったのは間違いない。

 正直なところ、このしぶとさを他のモンスターが持っていたら……そう考えると、うんざりとする。

 勿論、今こうして倒したように、このようなしぶとさがあっても倒せない訳でもない。

 ましてや、今は敵を倒すというよりも雷鳴斬を試すというのが目的だったのだから。


(雷鳴斬は、相手の動きを少しだけだが止めるのか。そう考えると、それなりに……いや、かなり使いやすいスキルだな)


 蔦の四足獣に使ってみた感覚からすると、雷鳴斬によって動きを止められるのは数秒程度だろう。

 だが、戦闘の中で数秒も動きを止めるというのは、非常に大きな……まさに致命的な隙となる。

 また、今回の戦いを見れば分かるように、デスサイズのスキルというのは連続して別のスキルを使うことが出来る。

 つまり、雷鳴斬で相手の動きを止め、その一瞬の隙を突いて強力なスキルを叩き込むといった使い方が出来る。


(いや、それだけじゃないな。雷鳴斬がレベルアップして、相手の動きを十秒とか止められるようになれば、スキルじゃなくて魔法を使うことが出来る。もしくはもっと長い間止められるのなら、詠唱の長い呪文を使ったりも出来る。……まぁ、相手が単体なら、魔法を使うよりも手っ取り早くデスサイズで攻撃した方がいいんだろうけど)


 そんな風に考えていたレイだったが、セトが近付いて来たのを見て我に返る。


「ああ、悪い。少し雷鳴斬について考えていたんだ。……それで、この蔦の四足獣の魔石はセトが使うということでいいか?」

「グルゥ!?」


 レイの言葉に驚くセト。

 まさかそのようなことを言われるとは、思ってもいなかったのだろう。


「グルルルゥ、グルゥ……?」


 本当に自分でいいの? とレイに尋ねる。

 セトにしてみれば、蔦の四足獣については自分は何もしていない。

 レイが倒したのだから、レイが……より正確にはデスサイズがその魔石を使うのは当然のことだった。

 とはいえ、レイにしてみればその辺については特に気にしていないのだが。

 蔦の四足獣を倒したのは間違いなく自分だ。

 それは間違いないが、そもそもレベルアップした雷鳴斬を実戦で試してみたいという思いがあったのも事実。

 その為に自分が戦ったのだから、それなら魔石をセトに譲るくらいのことはしてもいいと思うのは自然な流れだ。


「雷鳴斬を試したいという俺の我が儘を聞いて貰ったんだ。なら、魔石をセトに譲るくらいはいいだろう?」


 これが、もし一緒にいるのがセトでなければ……それこそ見知らぬ冒険者であれば、レイも魔石を譲るなどということは言わなかっただろう。

 だが、相手はセトだ。

 それなら話は別だった。

 レイは死体の中から魔石を取り出すと、流水の短剣で洗ってからセトを見る。


「ほら、セト。この魔石はセトが使え」


 そう言い、魔石をセトに向かって放り投げるレイ。

 セトはクチバシでそれを咥え、飲み込む。


【セトは『アースアロー Lv.四』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。

 その内容は、レイにとっても特に驚くようなものではない。

 蔦の四足獣は、その名の通り蔦で身体が構成されていた。

 つまり植物である以上、その属性は土だろう。

 そうなると、セトのスキルの中でも土属性のアースアローのレベルが上がるのは、レイにとっても不思議なことではなかった。

 もっとも、どうせなら植物の蔦を伸ばせるといったようなスキルを新たに習得しても面白いだろうとは思ったが。


「グルルルルゥ」


 アースアローのレベルが上がったことに、嬉しそうに喉を鳴らすセト。

 レイはそんなセトの様子に笑みを浮かべる。


「よかったな、セト」

「グルゥ!」


 一通りセトが喜んだ後で、次に実際にスキルを試してみることにする。


「セト、レベルアップしたアースアローを見せて貰えるか?」

「グルルゥ? グルゥ!」


 レイの言葉に、セトは分かったと喉を鳴らすと早速スキルを発動する。


「グルルルルルゥ!」


 アースアローが発動し、生み出された岩の矢は二十本。

 レベル三のが最大十五本だったのを思えば、間違いなく強力になっていた。

 そうして放たれるアースアローだったが、レイが見た限りでは威力そのものは以前と変わっていないように思えた。

 もっともアースアローの数が増えただけで総合的な威力は間違いなく増していたが。


「なるほど。レベルアップしただけあって、以前よりも強化されたのは間違いないな。これから使いやすくなったんじゃないか? まぁ、レベル五になるまではまだもうちょっと時間が必要だろうけど」

「グルゥ!」


 レイの言葉に、セトは同意するように喉を鳴らす。

 セトにしてみれば、出来ればもっとアースアローのレベルを上げたいとは思ってるのだろう。

 問題なのは、それが具体的にいつになるのか分からないことか。


(とはいえ、土系の属性を持つモンスターとかなら、結構多いと思うんだけどな)


 土属性の攻撃をしてくるモンスターがいても、本当にそのモンスターの魔石からアースアローのレベルが上がるとは限らない。

 しかし、それでもアースアローのレベルが上がるだろう可能性を考えると、ここで頑張らないといった選択肢はレイにはなかった。

 ……もっとも、実際にそれがいつになるのかはレイにも分からなかったが。


「ともあれ、アースアローの件はそれでいいと仮定して……これからどうする? セトはもう少し小川で遊ぶか?」

「グルゥ? ……グルルルルゥ」


 レイの言葉に首を横に振るセト。

 このまま小川で遊んでいてもいいが、レイと一緒にダンジョンの探索を進めたいという思いの方が強かったのだろう。

 レイとしては、セトがもう少し遊んでいても構わないとは思うのだが。

 とはいえ、セトがこうして探索に戻りたいと言うのなら、レイもまたそれに反対するつもりはなかった。


「分かった。じゃあ、探索を続けるか。何か面白い光景でも見ることが出来ればいんだけどな」


 そう言いつつ、レイはセトと共に探索を続ける。

 なお、先程までは小川に入っていたセトだったが、犬のように身体を振るって水気を飛ばしたことによって、現在既にその身体は十分に乾いている。

 元々川底は浅く、足首までしかない場所だったので、身体に掛かった水飛沫もその程度のものでしかなかったのだろう。

 セトの背に跨がったレイは、その時にもしセトの身体がまだ濡れていたら……と、そのように思い、乾いていたことに安堵する。

 そうしてレイは乾いたセトの背に乗り、移動を開始する。


「次に遭遇するモンスターは一体どういう奴だろうな」

「グルゥ? ……グルルルゥ」


 セトはレイの言葉を聞いて、色々なモンスターと遭遇したいと、そう喉を鳴らす。

 そうしてレイ達は草原を進み始めた。

 ただし、それから十分程歩き続けてもモンスターと遭遇することはない。


「おかしいな。そろそろ他のモンスターと遭遇してもいい頃合いなんだが。……どう思う?」

「グルルゥ? グルゥ」


 レイの言葉にセトは分からないと首を横に振る。

 セトの能力があっても、モンスターを見つけることが出来ないのだ。

 そういう意味では、やはりモンスターが近くにいないということを意味しているのだろう。


「草原だし、モンスターとかは他にも結構いてもいいと思うんだが。……まぁ、ここで俺とセトが頑張って探しても見つからない以上、諦めて別の場所に向かうとするか。この階層でも、小川があったから何もなかったって訳でもないし」

「グルルゥ?」


 セトにしてみれば、もう少しこの階層を探索したいという気持ちがあったらしい。

 それは十階が墓場だというのも影響しているのだろう。

 転移水晶があるのはともかく、墓場という時点であまり好ましくないと、そのようにも思うのはそうおかしな話ではなかった。

 それについては、正直なところレイも同じ気持ちがない訳でもない。

 とはいえ、既にダンジョンに入って相応の時間が経っている。

 この階層では暗くなったり夕方になったりといったことはないが、外に出ればそろそろ夕方近い時間なのも事実。


(午後三時……夕方にはまだちょっと早いか)


 ミスティリングから取り出した懐中時計で時間を確認する。

 これが例えば冬なら、三時でも既に夕方近い。

 だが、今は春……それもそう遠くないうちに夏になるだろう頃合いだ。

 レイの感覚では、五月末から六月頭くらいか。

 もっとも、これはレイが日本で東北に住んでいたからの感覚だが。

 東北で五月末から六月頭というのは、まだ春だ。

 南の方……それこそ沖縄や九州、四国といった場所では、このくらいの時期は既に夏に近かったりもする。

 関東もそのような感じだろう。

 あるいは北海道の住人なら、まだ夏までは遠いと言っても間違いではない。

 そんな季節だが、レイにとっては三時というのは夕方にはまだ早いという認識だった。


「わかった。じゃあもう一時間くらい九階を探索していくか。階段のある方に向かいながら、ぶらぶらとしていこう」

「グルゥ!」


 レイの言葉にセトは嬉しそうに喉を鳴らす。

 そうしてセトはレイを背中に乗せたまま、階段のある方に向かって進み始める。

 レイが地図を確認しながらの移動だったので、方向を間違えるということはない。

 ……もっとも、レイが地図を読み間違えたりすれば、あらぬ方向に向かうという可能性も十分にあったのだが。

 そうして歩き始めて十分程が経過したところで、不意にセトはとある方向に視線を向ける。

 そんなセトの動きに釣られるように視線を向けると、そこには三人の冒険者がいた。

 セトが気が付き、レイが気が付いたタイミングだったのもあってか、どうやら向こうはまだレイ達の存在に気が付いた様子はない。


(つまり、別に俺達と接触したくて一緒の方向に向かっている訳ではないと。けど、俺達と一緒の方向ってことは、多分向こうも十階に下りる階段が目当てなんだろうな。だとすれば、俺達と同じく丁度このタイミングで初めて十階に向かうとか?)


 タイミングが合いすぎではないか?

 そのように思わないでもなかったが、ダンジョンで活動しているとなればそういうこともあるだろうと思い直す。


「取りあえず今はスルーしておくか。向こうから何か行動してきたら、その時はその時で対応すればいいだろうし」

「グルルルゥ?」


 それでいいの? と喉を鳴らすセト。

 レイはそんなセトの首を撫でながら、問題はないのだと告げる。

 もし向こうが自分達に何か用件があるのなら、その時はその時で対処すればいいのだから。


(あ、でもそうだな。初めて十階に行くんじゃなくて、転移水晶で十階まで来て、一つ上のこの階に何らかの用件があって来た……という可能性も否定は出来ないのか。ニラシス達のように何らかの依頼を受けたとか、そんな感じで)


 そう思うレイだったが、それならそれで別に自分に絡んでくるようなことはないだろうと、そう思っておく。

 あるいはセトの存在についてもそれなりに知られてきたので、セト好きの一員がいたりしてもおかしくはないが。

 レイとしては、もし自分に接触してくるのなら、セト好きのような者であって欲しいと思うが。

 そんな風に考えながら階段に向かって歩いていると、当然ながら向こうがレイやセトの存在に気が付く。

 レイ達も向こうも、一緒の場所に向かっているのだ。

 そうなれば当然ながら、向こうもレイ達の存在に気が付くのはおかしな話ではない。

 そして一度気が付いてしまえば、レイはともかくセトの存在を見逃すということはまずない。


(どうするか相談してるな)


 レイとセトを見つけた三人が、どう対応すればいいのか……どう接すればいいのか、話している様子がレイにも理解出来る。

 だが、ここでレイの方から何らかのアクションを起こすと、それはそれでレイが向こうに興味を持っているといった風に認識される可能性が高い。

 そうなると、妙な勘違いをしたりする者もいるのだ。

 レイとしてはそこまで気にしてはいないのだが、それでも何らかのトラブルがあった時にそれが理由で巻き込まれかねないのは遠慮したい。

 そんな風に思いつつ、レイは向こうの様子を気にはせずにそのまま進み続ける。

 するとレイの態度を見て、向こうも何か思うところがあったのか、自分達から積極的にレイに接触する様子を見せずに階段に向かって進むのだった。

【セト】

『水球 Lv.六』『ファイアブレス Lv.五』『ウィンドアロー Lv.五』『王の威圧 Lv.五』『毒の爪 Lv.九』『サイズ変更 Lv.三』『トルネード Lv.四』『アイスアロー Lv.六』『光学迷彩 Lv.八』『衝撃の魔眼 Lv.五』『パワークラッシュ Lv.七』『嗅覚上昇 Lv.七』『バブルブレス Lv.三』『クリスタルブレス Lv.三』『アースアロー Lv.四』new『パワーアタック Lv.二』『魔法反射 Lv.一』『アシッドブレス Lv.六』『翼刃 Lv.五』『地中潜行 Lv.三』『サンダーブレス Lv.七』『霧 Lv.三』『霧の爪牙 Lv.二』



アースアロー:土で出来た矢を飛ばす。レベル一では五本。レベル二では十本。レベル三では十五本、レベル四では二十本。

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