表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レジェンド  作者: 神無月 紅
穢れ
3347/3865

3347話

 魔石を一つ使い、セトのアシッドブレスが強化された。

 アシッドブレスを使った件で少し落ち込んだセトだったが、そのセトもレイが出したガメリオンの肉を食べたことでもう元気になったらしい。

 そうして残るのは、四つの魔石。


「次はデスサイズの番だけど……セトが選んでもいいぞ」


 ガメリオンの肉で元気になったセトだったが、それで念押しをするようにレイが言う。


「グルルゥ……」


 レイの言葉に、セトはいいの? といった様子を見せながらも、残っている魔石を見る。

 クリスタルドラゴンの魔石はセトが使うと決めている。

 そうなると、残っている魔石のうちでセトが使えるのはもう一個だけだ。

 

「グルルルゥ、グルゥ、グルルルルルゥ……グルルゥ……」


 セトも、どの魔石を使えばいいのかということで迷った様子を見せる。

 それでも数分程悩んだ結果……


「グルゥ!」


 これ! とセトが選んだのはヴァンパイアの魔石。

 人型のモンスター……それも喋って意思疎通出来るモンスターの魔石を飲み込むのはどうかと一瞬思わないでもないレイだったが、それでもすぐに今更のことかと判断する。


「分かった。じゃあ、そのヴァンパイアの魔石だな。……色んなスキルが上がる可能性があるな」


 レイが知る限り、ヴァンパイアというのは複数の強力なスキルを使いこなす存在だ。

 そのようなモンスターの魔石だけに、セトが持つスキルのうち、一体どのスキルが上がるのかはレイにも分からなかった。

 ……だからこそ楽しみな一面があるのも事実だったが。

 そんな期待の視線が向けられる中でセトはヴァンパイアの魔石を飲み込み……


【セトは『衝撃の魔眼 Lv.四』のスキルを習得した】


 脳裏にアナウンスメッセージが流れる。


「衝撃の魔眼か。これは当たりだな」

「グルルルルルゥ!」


 レイの言葉に、セトは嬉しそうに喉を鳴らす。

 ヴァンパイアと魔眼というのは、組み合わせとしておかしなものではない。

 もっともレイがヴァンパイアの魔眼で最初に思い浮かぶのは、魅了の魔眼だが。


「衝撃の魔眼は使い勝手のいいスキルだからな。……セト、試してみてくれ」


 アシッドブレスで巨木を折ったが、衝撃の魔眼についてはそこまで心配していない。

 衝撃の魔眼というのは、威力そのものはそこまで強力という訳ではない。

 レベル三の時でも、岩に傷を付けられる程度でしかないのだから。

 岩を破壊するのではなく、あくまでも表面に傷を付ける程度の威力だ。

 そういう意味では、純粋にスキルの威力として考えると使い物にならないと判断してもおかしくはない。

 だが、衝撃の魔眼というスキルの真価はスキルの発動速度という点にある。

 例えばセトのスキルにはアイスアローというのがあるが、それはスキルを発動すると氷の矢が複数生み出され、それから発射という形になる。

 あるいはパワークラッシュという、一撃の威力を強化したスキルもあるが、これは一撃……例えば前足の一撃を放つ為にその一撃が命中する場所にまで接近する必要がある。

 そのようなスキルに対して、衝撃の魔眼はセトの見た場所に発動する。

 敵との距離が離れれば離れる程に威力が減衰していくという欠点はあるものの、それを考えても発動して即座に衝撃の魔眼が効果を発揮するというのは非常にメリットの大きいスキルだ。

 例えば敵の注意を逸らす為、あるいは魔法の詠唱をしている敵を止める為といったように、使い時を間違えなければ、その効果は非常に大きい。

 また、威力が弱いのでレベルが四に上がった今の状況でもスキルを試しやすいのもレイにとっては幸運だった。


「グルゥ!」


 レイの言葉に、セトは早速スキルを使う。

 衝撃の魔眼によって放たれた一撃は、直径五十cmくらいの太さの木の幹が破裂して折れる。


「へぇ……結構威力が上がったな」


 レベル三では岩の表面に傷を付ける程度の威力しかなかったのが、レベル四になったら直径五十cm程度の細い――アシッドブレスの試し打ちで使った木と比べてだが――木を折るだけの威力を持つ。

 今までは純粋な攻撃の威力という点では頼りにならない衝撃の魔眼だったが、レベル四になったことにより、純粋な攻撃力でも頼りになるスキルとなった。


「グルゥ?」


 どう? 凄いでしょと自慢げな様子のセト。

 レイはそんなセトを褒めながら撫でる。

 実際、レベル四でここまで威力が上がるとはレイも思っていなかった。

 だとすれば、スキルが別物と思えるくらいに強化されるレベル五になった時、衝撃の魔眼がどこまで強化されるのか、かなり興味深い。


(とはいえ、魔眼を持つモンスターってのはそう多くないしな。次に衝撃の魔眼のレベルが上がるのはいつになることやら)


 将来を楽しみにしつつ、レイは地面に敷かれた布に置かれた魔石に視線を向ける。

 残るは、闇の世界樹、巨狼、クリスタルドラゴンの魔石の三つだ。

 そしてクリスタルドラゴンの魔石はセトが使いたいと主張している以上、闇の世界樹と巨狼の魔石はどちらもデスサイズが使うことになる。

 そうなると、どちらの魔石から使うかということになり……


「まずはこれだな」


 レイが手にしたのは巨狼の魔石。

 それを見たセトは、不意に円らな瞳でレイを見る。

 巨狼の魔石を、自分で使いたくなったのだろう。

 それを見たレイはセトに駄目だと言おうとするが……円らな瞳で視線を向けられると、やがて大きく息を吐き、魔石をセトに向かって放り投げ……セトがそれを飲み込む。


【セトは『霧の爪牙 Lv.二』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。

 それを聞いたレイは、微妙な表情を浮かべる。

 どうせなら、レベルが四のスキルのレベルが上がってスキルが飛躍的に強化されるレベル五になったり、あるいはレベル五以上の強化されたスキルのレベルが上がって欲しかった。


「まさか霧の爪牙のレベルが上がるとは思わなかったな。……このスキルも嵌まれば強いんだろうけど」


 霧の爪牙のスキルは、霧の中で牙の生えた口や爪の生えた足となって物質化し、敵を攻撃するというスキルだ。

 霧の中、いきなり牙や爪で攻撃されるという、相手にとってはいつどこから攻撃されるのか……それこそ自分の目の前の空間にいきなり口や足となって牙や爪で攻撃してくるといったことになってもおかしくはないという意味で、非常に厄介なスキルだ。

 そのようなスキルだが、スキルの名称に霧のとついているように、周囲が霧で覆われていることが前提のスキルでもある。

 つまり霧のない場所でこのスキルを使っても意味はない。

 つまり、セトが霧の爪牙を使う前にセトが持つ別のスキル、霧によって周辺に霧を生み出す必要があった。

 それを使えば霧の爪牙も使えるのは間違いないのだが……一つのスキルを使うのに二つのスキルを使わなければならないというのが、レイに微妙な気持ちを抱かせる。

 もしくはセトのスキルの霧ではなく、レイが長から貰った霧の音というマジックアイテムで霧を生み出してから霧の爪牙を使うという方法もあるが、そちらも結局前段階の準備として一手間必要なのは間違いなかった。

 あるいはこれで霧の爪牙のレベルがもっと上がり、それこそレベル五になってかなり強化された場合は積極的に霧の爪牙というスキルを使うようになるかもしれないが。


「ともあれ、試してみるか。……セト、霧のスキルを使ってくれ。そこまで広くなくても、この辺だけでいい。それから続けて霧の爪牙を頼む」

「グルルルルゥ!」


 レイの言葉にセトは早速スキルを発動させ、セトを中心に十m程度の狭い範囲に霧を生み出す。

 それを確認したセトは、続けて霧の爪牙を発動する。


「グルルルルゥ!」


 霧の爪牙を発動させると、霧の中に牙を持つ口と爪を持つ足が同時に一つずつ姿を現す。

 レベル一の時は、どちらか一つしか出現させることが出来なかったことを考えると、倍に増えたと喜べばいいのか、たった二つしかないと嘆くべきなのか、レイは少し迷う。


(いや、後者だな。……スキルの前提として霧が必要な以上、牙や爪が一つずつ、あるいはどちらかが二つだけというのはちょっと)


 そんな風に考えながら、レイは牙と爪に近くにある木を攻撃するようにセトに言う。

 すると牙と爪はすぐにセトの意思に従って攻撃を行うが、木の幹にそれなりに大きな傷を付けるだけだった。

 人間で言えば、金属鎧は勿論、革鎧を装備している相手には致命傷を与えられないくらいの威力。

 もっとも、それはつまり鎧の類を着ていない相手……もしくは鎧を着ていても関節部分のように鎧で覆われていない場所に対しては致命傷、あるいはそこまでいかなくても大きな傷を与えることが出来るということでもあるのだが。


「どんなスキルも使いよう……か。とはいえ、今までこのスキルを試し以外で使ったことがあったか? まぁ、レベル二になったとことで爪や牙を二つ生み出せるようになったし、今後はレベルが上がればそれなりに使い勝手もよくなる……かもしれないか」


 そう言いながらセトに霧の爪牙と周辺を覆っている霧も解除するように言う。

 するとレイとセトのいる一帯に存在していた霧は、瞬く間に消えていく。

 レイはそれを感心したように眺め……そして次に、地面の布の上にある二つの魔石に視線を向ける。


「セト、一応聞くけど……本当にクリスタルドラゴンの魔石はお前が使うのか? 見た感じ、とてもじゃないけど、お前が飲み込めるようには思えないんだが」


 駄目だろうなとは思いつつも、レイは改めてセトに尋ねる。


「グルルゥ!」


 しかし、セトはそんなレイの言葉を聞いても問題ないといったように喉を鳴らす。

 セトの様子を見る限り、何の根拠もなくクリスタルドラゴンの魔石を自分が使おうと思っている訳でもないのだろうと判断し、レイは諦めたように大きく息を吐いてから地面にある布の上に置かれた魔石……闇の世界樹の魔石を手に取る。


(さて、巨狼の魔石はセトが使ったから、今度こそデスサイズの番だけど、スキルを習得出来ないってことはない……よな?)


 少しだけ不安に思うのは、闇の世界樹は生粋のモンスターという訳ではなく、ヴァンパイアが介入して育てられたモンスターだからというのが大きい。

 そういう意味で普通のモンスターとは違う以上、もしかしたら……と、そうレイが思ってしまうのは仕方がないだろう。

 とはいえ、だからといって闇の世界樹の魔石を使わないという選択肢はないのだが。

 レイは闇の世界樹の魔石を空中に放り投げ、デスサイズで一閃し……


【デスサイズは『マジックシールド Lv.三』のスキルを習得した】


 頭の中に響くアナウンスメッセージ。


「よし!」


 そのアナウンスメッセージの意味を理解した瞬間、レイは喜びの声を上げる。

 マジックシールドというのは、あらゆる攻撃を一度だけ防いでくれる光の盾だ。

 一度だけというのはレイにとっても少し残念に思う部分だったが、それでもどんな攻撃でも防いでくれるというのはレイにとって非常にありがたいことだった。

 それに光の盾は一度攻撃を受ければ消滅するが、レベル二では二枚の光の盾を生み出せた。


「つまり……マジックシールド!」


 デスサイズを手に、スキルを発動するレイ。

 するとレイが予想した通り光の盾は三枚が展開される。


「よし」

「グルゥ」


 笑みを浮かべて呟くレイに、セトがおめでとうと喉を鳴らす。

 レイは笑みを浮かべてセトを撫でながらも、自分の側に浮いている三枚の光の盾を見てふと思う。


(光の盾が増えたのはいいけど、これ……レベル三で三枚なら、四で四枚、そして五になれば一気に強化される訳で……どうなるんだ? もしかして、俺の周囲に十枚も二十枚も光の盾が浮かぶとか、そういうことにはならないよな?)


 今はまだ三枚でそこまで問題ではない。

 だが、このまま十枚、二十枚といったように光の盾が増えていった場合、その盾によって視界が塞がれてしまうのではないか。

 そうなってしまっては、幾らマジックシールドが高性能なスキルであっても、レイにとっては邪魔にしかならない。

 目の前に広がる光の盾で視界を塞がれているところで攻撃され、それによって致命傷を負うというのをレイは遠慮したい。

 勿論マジックシールドはそんな攻撃も防ぐ防御力を持っているので、レイが見えない場所から攻撃されても、基本的にその攻撃は防いでくれるだろうが。

 だが、折角出したマジックシールドが自分の視界を防ぎ、それによって攻撃されて数を減らして行くのでは意味がない。

 そんな心配をするレイだったが、それでも絶望はしない。

 レベルが五になれば、スキルは飛躍的に強化される以上、もしかしたらその時にマジックシールドの性質が変わる可能性があるのだから。


(出来れば光の盾の数は一枚で、レベルの分だけ敵の攻撃を防げるとか、そういう感じになってくれるとうれしいんだけど)


 自分にとって一番便利な効果を想像するレイ。

 もっとも、レベル五になってスキルが強化されても、本当にそれがレイの思うようになるかどうかは……また別の話だ。

 具体的に何がどうやってレベル五になった時にスキルが強化されるのかは、レイにも分からない。

 それこそレイの希望に沿ったスキルになる時もあれば、完全に予想外のスキルになる時もあるのだから。


「グルルルゥ!」


 レイがスキルについて考えていると、セトが喉を鳴らす。

 それがどのような意味を持ってのものなのかは……セトの視線が、唯一残ったクリスタルドラゴンの魔石に向けられているのを見れば明らかだった。 

【セト】

『水球 Lv.五』『ファイアブレス Lv.五』『ウィンドアロー Lv.四』『王の威圧 Lv.四』『毒の爪 Lv.七』『サイズ変更 Lv.二』『トルネード Lv.四』『アイスアロー Lv.五』『光学迷彩 Lv.七』『衝撃の魔眼 Lv.四』new『パワークラッシュ Lv.六』『嗅覚上昇 Lv.六』『バブルブレス Lv.三』『クリスタルブレス Lv.二』『アースアロー Lv.二』『パワーアタック Lv.二』『魔法反射 Lv.一』『アシッドブレス Lv.四』『翼刃 Lv.三』『地中潜行 Lv.一』『サンダーブレス Lv.一』『霧 Lv.二』『霧の爪牙 Lv.二』new



【デスサイズ】

『腐食 Lv.六』『飛斬 Lv.六』『マジックシールド Lv.三』new『パワースラッシュ Lv.五』『風の手 Lv.五』『地形操作 Lv.六』『ペインバースト Lv.四』『ペネトレイト Lv.六』『多連斬 Lv.六』『氷雪斬 Lv.五』『飛針 Lv.二』『地中転移斬 Lv.一』『ドラゴンスレイヤー Lv.一』


衝撃の魔眼:発動した瞬間に視線を向けている場所へと衝撃によるダメージを与える。ただし、セトと対象の距離によって威力が変わる。遠くなればなる程、威力が落ちる。レベル一では最高威力でも木の表面を弾く程度。レベル二では木の幹にも傷を与える。レベル三では岩に傷をつけられる程度。レベル四では直径五十cmくらいの木を折れる程度。ただし、スキルを発動してから実際に威力が発揮されるまでが一瞬という長所を持つ。


霧の爪牙:霧のスキルを使っている時や自然現象の霧がある場合のみ、使用可能。霧の一部が牙の生えた口や爪の生えた足となって物質化し、標的を、攻撃出来る。レベル一の時は、一度に出せる牙や爪はそれぞれ一つずつ。レベル二では二つずつ。


マジックシールド:光の盾を作りだし、敵の攻撃を一度だけ防ぐ。敵の攻撃を防いだ後は霞のように消え去る。また、光の盾は通常はオートでレイの邪魔にならないように動いているが、意識すれば自分で好きなように動かすことも可能。レベル一で一枚、レベル二で二枚、レベル三で三枚の光の盾を生み出せる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] マジックシールドが5レベになれば色付け出来て透明化だの自身の攻撃は素通りになるかもしれんな、そうすれば一度のみの無敵化でも十分になるんじゃないかな?
[気になる点] あれ、女王蜂の魔石そういえばどうなったんだっけ? 今吸収してるの巨狼、吸血鬼、闇の世界樹、キマイラ、クリスタルドラゴンの5つだけだけど…私が忘れてるだけか?
[気になる点] 3313話で『飛斬』がLv.六になった分が反映されてません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ