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レジェンド  作者: 神無月 紅
穢れ
3327/3865

3327話

このライトノベルがすごい!2023が始まりました。

レジェンドも投票作となっています。

投票は以下のURLから行えます。


https://questant.jp/q/konorano2023


回答期限は9月25日23:59分ですので、是非レジェンドに投票お願いします。

 ブルーメタルを受け取ったレイは、先程ダスカーと共にいた客室に戻る。

 レイの案内役となった騎士は、レイをその部屋まで案内するとすぐに自分の仕事に戻る。

 そうして部屋に戻ったレイは……


「あ、レイ、おかえり。それでブルーメタルってどうだった?」


 レイが入ってきたところで、それを見たニールセンが隠れていた場所から姿を現してそう聞いてくる。


「迫力のある金属だったぞ。……それより、サンドイッチは全部食べたのか」


 テーブルの上にある皿には、既にサンドイッチは一つも残っていない。

 レイがブルーメタルを取りに行く時はまだそれなりに残っていたと思うのだが。

 どうやらレイとダスカーが部屋の中からいなくなったのをこれ幸いと、ニールセンが残っていたサンドイッチを全て食べてしまったらしい。


「う……その、美味しかったわよ?」

「だろうな。けど、だからって俺の分まで食べてしまうのはどうかと思うぞ? これについては、長に知らせた方がいいかもしれないな」

「ごめんなさい!」


 何とか誤魔化そうとするニールセンだったが、レイが長に知らせると言った次の瞬間には素直に謝罪の言葉を口にしていた。


「最初から素直に謝っていればいいものを」

「だから、ごめんって謝ってるでしょ? それで、ほら。その……ブルーメタルってのはどういうのなの? 見せてよ」


 半ば無理矢理話題を変えるニールセンに呆れつつも、レイはミスティリングの中からブルーメタルを取り出す。

 ニールセンの頼みを聞いたのは、ブルーメタルは穢れに対して効果があるのが関係している。

 妖精だけが穢れについての伝承を伝えていたことを考えると、穢れに対して有効なブルーメタルについても何かわかるのではないか。

 そう思っての行動だったのだが……


「へえ、青いのね。ブルーメタルって言われるだけはあるわ」

「それだけか? もっとこう……ブルーメタル独特の何かとか、そういうのを感じたり出来ないのか?」

「へ? いや、そういうのはないけど? こうして見る限り、綺麗な金属だとは思うけど」

「……そうか」


 当てが外れたレイは、このままブルーメタルを出しっぱなしにしておいても面倒なことになるかもしれないと判断して、ミスティリングに収納する。


(ニールセンは分からなかったみたいだけど、長とかならどうだ? 長なら穢れについてもかなり詳しいようだったし、そういう意味ではブルーメタルを見て色々と思うところがあってもおかしくはないか)


 ニールセンで駄目なら、より上位の妖精の長に頼めばいい。

 そう判断し、レイはソファに座る。

 そんなレイの側にニールセンが飛んでくる。


「ねぇ、それでこれからどうするの?」

「どうするって言われてもな。魔剣と指輪の鑑定をする人がまた来てないから、それが来るまではここで待っているつもりだ」

「えー……それじゃあ、暇じゃない」

「少しくらいはゆっくりしてもいいんじゃないか? 昨日まではかなり忙しかったんだし」

「それはそうだけど、もう疲れなんかすっかり抜けてるわよ!」


 若いな。

 そう思ったレイだったが、その考えとは裏腹にレイもまた身体に疲れはない。

 そういう意味では、レイの身体も十分に若いのだろう。

 ……実際には若い云々以前に、レイの身体はゼパイル一門の手によって作られている。

 当然だが体力や疲れの回復という意味では常人などよりも、回復速度が上なのは間違いない。


「そうか。なら長との勉強をしっかりと出来そうだな」

「あ、やっぱりちょっと疲れたかも」


 レイの口から長との勉強という言葉が出た瞬間、ニールセンは体力が限界だと言いたげにソファの上に降下していく。

 そんなニールセンの様子に呆れていたレイだったが、それもニールセンらしいと思えば下手に突っ込むようなことはしなかった。

 そうして話をしていると……


「ん? 誰か来たな」


 部屋に近付いてくる気配にレイがそう言うと、ニールセンは素早く部屋の片隅に隠れる。


(これだと、サンドイッチを全部食べたのは俺だってことになりそうなんだが……それはそれであまり面白くないな)


 ニールセンがいなければ、恐らくレイは全てのサンドイッチを食べていたのは間違いない。

 だが、結局サンドイッチは全てニールセンに食べられた以上、それを自分のせいにされるのはレイとしても面白くない。

 やはりこの件も長に話すべきだろうか。

 そんな風にレイが思っていると、部屋に近付いて来た気配が部屋の前で止まり、扉をノックする。


『失礼します。レイ様。マジックアイテムの鑑定を出来る方がいらっしゃいましたが、お通しして構わないでしょうか?』


 その言葉にレイは驚くと同時に納得する。

 ダスカーに呼ばれたにしても来るのがかなり早いと思うのと同時に、ダスカーに呼ばれたのだから来ないという選択肢はなかったのだろうと。

 扉を開け、目の前にいたメイドに向かって口を開く。


「分かった、通してくれ。それとダスカー様にも知らせてくれ」

「既に知らせてあります。書類の整理が一段落したらすぐに来るとのことでした。それまで、出来ればマジックアイテムの鑑定の説明をするのは待っていて欲しいと」


 メイドの言葉に、レイはそうだよなと納得する。

 元々マジックアイテムの鑑定が出来る相手はダスカーが呼んだのだ。

 そうである以上、その人物が来たら最初にダスカーに報告をするのは当然の事だった。


「分かった。なら、俺はその人物と少し話をしてダスカー様が来るのを待ってるから、そう言ってくれ」


 レイの言葉にメイドは一礼すると、早速その人物を呼んでくるということで部屋を出ていく。


「えー……その人が来たら、私は何も出来ないじゃない」


 メイドがいなくなると、即座に隠れていたニールセンが姿を現し、不満そうな様子でそう言う。

 ニールセンにしてみれば、ダスカーのように自分のことを知っている相手がいるのならまだしも、それ以外の……自分のことを知らない者がいる場所では、自分が好き勝手に移動出来ないのが不満らしい。


「とはいえ、オーロラの魔剣や指輪は穢れの件について重要な手掛かりになるかもしれないしな。それなのに話を聞かない訳にもいかないだろう? ……長になんて言うんだ?」

「う……それは、その……」


 ニールセンも、そう言われると反論は出来ない。

 ここで反論しようものなら、それが長に知られてしまう可能性が十分にあった為だ。

 そうなると、待っているのはお仕置きとなる。

 それだけはニールセンにとっても絶対に避けたい。


「分かったわよ。じゃあ、どこか適当な場所に隠れて話を聞いてるから」


 そう言うと、ニールセンは部屋の隅に向かう。


「いや、まだ来てないんだから、今すぐに隠れる必要はないと思うんだが。……まぁ、いいか」


 ここで下手にまだ隠れなくてもいいと言ったりすれば、ニールセンも後で隠れるのは嫌だと言うかもしれない。

 それなら隠れるつもりになった今、そのまま隠れておいて貰った方がレイにとっては面倒がなくてよかった。

 そんな風に思いつつ、レイはソファに座ってじっとしている。

 ニールセンが隠れたので、話をする相手もいないのだ。

 いや、無理矢理にでも話そうと思えば話せるだろうが、そうして話している中で鑑定をする人物が来たら、ニールセンの存在を怪しまれてしまう。

 そうならないようにするには、やはりここで大人しくしていた方がいいだろうと考えたのだ。

 実際、メイドが鑑定する人物がやって来たと報告に来たのだから、そう時間が掛からないうちにここに来るのは間違いない。

 であれば、レイはただじっと待っていればいいだけであり……


「来た」


 特にやることがなかった為だろう。

 レイの感覚は鋭敏に部屋に近付いてくる気配を感じ取った。

 ニールセンと話をしていなかったのを助かったと思いつつ、少し経つと部屋の前でその気配が止まり、扉をノックする。


『レイ様、ダグラス様をお連れしました』

「入ってくれ」


 ダグラスという名前は初めて聞くが、それでも今までの流れからすると、そのダグラスというのが誰なのかを想像するのは難しくはない。

 レイの言葉に扉が開き、メイドが一人の男を伴って入ってくる。

 初老と思しき年齢だったが、その動きは非常にスムーズで年齢を感じさせない。

 部屋の中にいるレイを見ると、笑みを浮かべて小さく頭を下げる。

 レイのことを知っているからこその行動だろう。

 もっとも、ダスカーに呼ばれた時にそれなりに事情を聞いている筈なのだから、どのようなマジックアイテムを見るのかを聞いてるのかどうかはともかく、そのマジックアイテムの持ち主がレイなのは聞いていてもおかしくはないが。


「では、ダグラス様、ダスカー様が来るまでもう少々お待ち下さい」

「うむ、あの深紅のレイ殿と話す機会は滅多にないのでな。寧ろこのような機会を作って貰って、ダスカー様には感謝しておるよ」

「紅茶と……サンドイッチでよろしいでしょうか?」


 ダグラスの言葉を聞いたメイドは、テーブルの上にあった、少し前に自分が持ってきたサンドイッチが山盛りになった皿が空になっているのを見て、そう言う。

 特に驚いた様子を見せないのは、それがメイドとしてレイに対して失礼になるからだろう。

 あるいは忙しいダスカーがサンドイッチを食べたのを喜んでいるのか。


「ああ、そうしてくれ。ただ、サンドイッチ以外にも焼き菓子か何かも欲しい」


 レイの要望にメイドは一礼して部屋を出ていく。


「さて、では……一応自己紹介をしておこうか。儂はダグラス。今はもう半ば引退しているが、ダスカー様とは色々と親しくてな。今回レイ殿が入手したマジックアイテムを鑑定して欲しいということで呼ばれたのだ」

「レイだ。ダグラスが言ったように、未知のマジックアイテムについて鑑定して欲しくてダスカー様に無理を言ってあんたに来て貰った。……本来ならこういう真似をしないで、自分でマジックアイテムを売ってる店に行ければよかったんだけどな」

「はっはっは。クリスタルドラゴンなどという未知のモンスターの件があるのだから、それは無理もないだろう。それでも冬になって多少はレイ殿と接触したい相手も減ったのではないかな?」


 ダグラスのその言葉にはレイも素直に頷く。

 実際に確認した訳ではないが、冬になってギルムから出て行った者も多い。

 そのような者達がいなくなった為に、レイと接触しようとした者が減ったのは事実。

 とはいえ、それが具体的にどのくらいなのかは、レイも顔を出して公に行動している訳ではないので、分からないが。


「そうだといいなとは思っているし、予想もしている。とはいえ、それでも実際に試してみたいとは思わないけど」

「その気持ちは分からないでもないよ」


 そう言うダグラスの表情は、表向きの薄っぺらい言葉ではなく、きちんとレイの状況を理解した上での言葉だった。

 レイにもそれが分かったのだろう。

 ダグラスに対して素直に感謝の言葉を口にする。


「そう言って貰えると嬉しいよ」

「いや、気にしないでくれ。それに儂は以前からレイ殿とは会ってみたかったのだ。レイ殿は色々なマジックアイテムを持っていると聞く。そちら方面にそれなりに詳しい身としては、話してみたいと思っていたのだよ」


 そう言い、笑みを浮かべるダグラス。

 これがレイを騙してマジックアイテムを奪おうとしているような相手なら、レイも警戒しただろう。

 あるいは本能的に危険な相手だと判断したかもしれない。

 だが、ダグラスが浮かべているのは、好奇心に目を輝かせた……それこそ子供がお宝を発見したかのような、そんな表情だ。

 とてもではないがレイから何かを奪おうといったようなことを考えているようには思えない。

 ……もっとも、もしダグラスがレイに自分の考えを読ませないようにしているだけであっても、ダグラスは決して若くはなく、身体の動きも鈍い訳ではないが、だからといって若者のように俊敏な動きが出来るとも思えない。

 また、特に戦闘訓練を積んでいるようにも見えないし、何よりもダスカーに信頼されている者がここで妙な真似をするとも思えなかった。


「儂はマジックアイテムを好む。それが高じて、ダスカー様からそれなりに重用して貰えることになったのは幸運だったのだろう。だからこそ、レイ殿が持つという色々なマジックアイテムは非常に興味深いと思っていたのだ。その……もしよければだが、今回儂が呼ばれた魔剣と指輪以外で、何か面白そうなマジックアイテムがあったら見せて貰えないだろうか?」


 好奇心に目を輝かせてそう聞いてくるダグラスに、レイは特に問題ないだろうと判断して頷くのだった。

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