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レジェンド  作者: 神無月 紅
妖精のマジックアイテム

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2958/3882

2958話

カクヨムにて5話先行投稿していますので、続きを早く読みたい方は以下のURLからどうぞ。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219415512391



今年もこのライトノベルがすごい!2022のアンケートの時期がやって来ました。

詳細については、以下をご覧下さい。


https://questant.jp/q/konorano2022


回答期限は9月23日(木)23:59となっています。


是非、レジェンドに投票をお願いします。

 結局レイが選んだギルムに行く手段は、スレイプニルの靴で飛び降りるというものだった。

 マリーナの家を見張っている者がいる可能性は高い……というかほぼ確定だったが、レイとセトではその大きさが違う。

 そうである以上、レイが上空を飛ぶセトから飛び降りてマリーナの家の中庭に着地するのは、見つからない可能性もあった。

 あるいは以前と同じように空からやって来るような真似はしないだろうと、そんな風に考えている者がいれば、その逆を突くという考えもある。

 分の悪い賭けではあるし、もっと時間を掛ければもっと確実な……見つからないで中に入る方法を思いつくかもしれない。

 今すぐにギルムに行った方がいいということになり、だからこそすぐに思いつくような方法で一番可能性が高いのがそれだったので、仕方がない。

 しかし……そんな中でレイのアイディアに反対する者もいる。


「ちょ……ちょっと待ってよ。私も行くのよね? そうなると、私は以前と同じようにレイのローブの中に隠れていないといけない訳で……私も一緒に落ちるの!?」


 そう、レイと一緒に高い場所から落ちることになるニールセンだった。


「空を飛べるんだから、ニールセンは飛ぶのに慣れてるだろ?」

「飛ぶのに慣れてはいるけど、落ちるのには慣れてないのよ!」


 ニールセンにしてみれば、自分で飛ぶのは何も問題ない。

 だが、それはあくまでも自分で飛ぶ場合であって、レイのドラゴンローブの中に入ったままで落下していくのは恐怖心しかなかった。


「なら、レイさんと一緒に落ちるのではなく、普通に飛んでいけばいいでしょう。レイさんなら誰かに見つかる可能性も高いですが、ニールセンなら遠くから見ている者に見つかる可能性はまずないでしょうし」


 そう言い切る長の言葉に、話を聞いていたニールセンは救われた表情を浮かべる。

 それなら、自分はレイと一緒に高所から落ちるといった真似をしなくてもいいのだろうと。

 レイもそんなニールセンの態度に若干思うところはあったものの、ニールセンが納得しているのならそれでいいだろうと思う。


「じゃあ、そういうことで。悪いけど、早速行ってくる。穢れがそこまで危険なら、出来るだけ早くダスカー様に報告した方がいいだろうし」


 最悪……本当に最悪の場合、この大陸そのものが破滅してしまう。

 長に言われたその内容はレイに焦燥感を抱かせるには十分だった。


「ええ、お願いします。私の方は封印した穢れをなるべく早く処理出来るように頑張っておきますね。ニールセンがいないのが、どう影響するのか……」


 ボブの身体から出た穢れがニールセンの放った光によってダメージを受けたのを見れば分かるように、ニールセンが得た新たな力は穢れにも効果がある。

 その光を上手く使えば、穢れを消滅させるのもそう難しくはないだろう。

 だが、それはあくまでも上手く使えればの話だ。

 先程ニールセンがお仕置きされていたように、失敗すれば色々と不味い事態になるのは間違いない。

 そういう意味では、ニールセンが下手に手伝わない方がいいのかもしれないが……長にとってニールセンは自分の後継者とでも呼ぶべき存在だ。

 そうである以上、穢れについての対処は是非とも教えておきたかったのだろう。

 ……最大の問題は、長とは違ってニールセンは穢れの存在を感じられないということだろう。

 この辺りはすぐにどうこう出来る訳ではないので、長もまた急いでいる様子はなかったが。


「分かった。じゃあ、そんな感じで。……あ、俺達はギルムに行くけど、ボブはどうすればいい? 昨日の疲れからか、まだ眠ってるけど」

「それはこちらで面倒を見ましょう」


 そう告げる長だったが、少し……本当に少しだけだが、その顔に嫌そうな色があったのは間違いない。

 長にしてみれば、ボブはこの妖精郷に穢れを持ち込んだ相手だ。

 勿論、穢れの件を知ることが出来たというのは大きいが、それでもやはり妖精郷に穢れを持ち込んだというのは長にとって面白くなかったのだろう。

 そんな長だったが、それでもレイの客人という意識はあるのか、ボブをどうこうするつもりはなかったようだったが。

 穢れを封印することに成功したのだが大きいのだろう。


「悪いな、頼む」


 レイは長に感謝の言葉を口にする。

 そんなレイの様子に長は首を横に振ると、早速行動に移ることになった

 具体的には、出来るだけ早くギルムに……ダスカーに会う為に、領主の館に行くことに。


「ニールセン。今回の一件は貴方にとっても大きな意味を持つでしょう。それを理解し、くれぐれも悪戯や好奇心の赴くままに行動するといったようなことをしないように。……いいですね?」


 そう告げる長は、口元にこそ笑みを浮かべているものの目は笑っていない。

 真剣な表情のままである以上、ここで迂闊な言葉を口にした場合は不味いと、そう理解出来るだけの判断力はニールセンにもあったらしい。


「分かりました。精一杯頑張ります」


 真面目にそう告げる様子は、ニールセンも真面目にやるつもりになったのだろうと思える。

 ……少なくてもレイにはそう思えたのだが、長はそんなニールセンの様子を見ても決してすぐに信じた様子を見せない。

 何も言葉を返さず、ただじっとニールセンを見る。


「う……」


 長の視線の圧力に押されたかのように、ニールセンは後ろに下がる。

 空を飛びながら器用なことだと、そうレイには思えてしまったが。

 とにかく、ニールセンは今の状況をどうにかして抜け出したいと考えているらしく、再び口を開く。


「も、勿論ですよ。私は本気で真面目にやります。穢れなんて存在、決して許しておくことは出来ませんし! ですから、長は安心して私にこの件を任せて下さい!」

「……分かりました。ニールセンがそこまで言うのなら、任せましょう。ここまで言った以上、これで実は失敗しましたなどということはまずないですね?」


 しまった、嵌められた。

 一瞬そう思ったニールセンだったが、だからといって今のこの状況で何かを言っても、それは決して長に聞いて貰えない。

 それどころか、下手なことを言えば先程の言葉は嘘だったのですか? といったように責められてもおかしくはない。

 そして長から下された指令に失敗すれば、それは長のお仕置きが待っているということを意味していた。


「はい! 問題ありません!」


 元気よく返事をするニールセン。

 そんな、一種漫才か何かの掛け合いを見ていたレイだったが、話はひとまず終わったのだろうと判断して口を開く。


「それで、話が決まったのならそろそろ出発してもいいよな?」


 レイの言葉に、長は今のやり取りを思い出して羞恥で顔を赤くしながらも頷く。

 ニールセンの方は、長とのやり取りを強制的に終わらせることが出来ると、喜んでいた様子だったが。


「じゃあ、行きましょう! 穢れの件は少しでも早く知らせないといけないもの。今は急ぐわよ!」


 先程まで躊躇っていたのが嘘のように、ニールセンがやる気満々といった様子で言う。

 今は少しでも早く長から離れたいと、そう思っているのだろう。

 ニールセンにしてみれば、ギルムに行くのと長から叱られるののどちらがいいのかと言われれば、それこそ考えるまでもなく決まっていたのだから。

 こうしてレイとセト、ニールセンはギルムに向かうべく妖精郷を出るのだった。






「狼はやっぱりセトが怖いらしいな」

「グルゥ」


 妖精郷から出て、霧のある場所で狼がセトを見るや否や、その場から離れたのを見てレイが呟き、それを聞いたセトが残念そうに喉を鳴らす。

 狼達にしてみれば、もしセトが妖精郷に侵入しようとする相手なら容赦なく攻撃をするだろう。

 それこそ自分達との力の差があっても、それを考える様子もなく。

 しかし、それはあくまでもセトが敵であればの話だ。

 現在セトは妖精郷の客という扱いであり、だからこそセトも自由に妖精郷に出入り出来る。

 狼達はそれを知ってるからこそセトと戦うといったようなことはせず、自分からセトに関わるといったような真似もしない。

 ……狼達にしてみれば、触らぬ神に祟りなしといったところなのだろう。

 妖精郷の中では狼の子供達はセトに懐いており、一緒に遊んでいるのだから。


「妖精郷に出入りしていれば、そのうち向こうから懐いてくれるようになると思うから安心しろ」


 励ましながら、レイはセトを撫でる。

 それは適当なことを口にしているのではない。

 今までレイが宿に泊まった時、セトは基本的に厩舎に預けられていた。

 そして宿の厩舎には当然ながら他の宿泊客が使っている馬の類がいるのだが、その馬も最初はセトの存在を怖がっていたものの、時間が経てばセトが自分よりも上位の存在ではあっても敵対する相手ではないと判断し、怖がることはなくなる。

 勿論、本当に心の底からセトに気を許すといった訳ではないのだろうが、それでも無意味に怖がったりといったようなことはなくなるのだ。

 何度も妖精郷に出入りをしていれば、狼達もセトと接する機会が多くなって次第に慣れてくるだろう。


「何なら、私から狼達にセトを怖がらないようにって言っておこうか?」

「いや、ニールセンが言ってもそれで聞くとは到底思えないんだが」


 これが、あるいは狼がセトを敵視していて見掛けると攻撃をしてくるといったようなことがあった場合は、ニールセンが攻撃をするなと言えば効果はあるだろう。

 だが、セトを見ても怖がるなと言ったところで、狼達にしてみればそれは本能的な行動だ。

 それを怖がるなと言われても、そう簡単に命令を聞ける筈もない。

 レイは落ち込むセトを励ましながら歩き続け、やがて霧の場所から抜ける。

 霧の場所から抜けると、ニールセンはレイのドラゴンローブの内側に入り、レイはセトの背に乗り……セトは数歩の助走の後で翼を羽ばたかせながら上空に向かって駆け上がっていく。

 トレントの森の上空から周囲の様子を見たセトは、遠くに湖や生誕の塔があり、見る方向を変えるとギルムの城壁を見ることが出来る。

 そうして上空から見たところでは、特に何かが変わった様子もない。

 ……勿論、レイがいないエグジニスに行ってる間に樵達がトレントの森の木を伐採しており、伐採された場所は十分に広がっている。

 そういう意味では変わったと表現してもいいのかもしれないが、レイの目から見る限りだと特に変わっているようには思えなかった。


「グルルルゥ」


 セトが喉を鳴らしてギルムの方を見る。

 行ってもいい? そう態度で示されたレイは、問題ないとセトの首を後ろを軽く叩く。

 するとそのタイミングでセトは翼を羽ばたかせながら進み始めた。

 本来ならトレントの森とギルムはそれなりに距離がある。

 しかし、セトの翼で移動すれば一瞬……というのは少し大袈裟だったが、それでもすぐにギルムの上空までやって来た。

 ただし、以前エグジニスから一度ギルムに戻ってきた時はかなり高度を落として飛んでいたものの、今はいつもより高く……高度二百m程の場所を飛んでいる。

 これだけの高度なら、地上から見てもそう簡単にセトだとは思わないだろうというレイの指示だった。

 ……ただし、当然だがギルムには増築工事でやって来た訳ではない、昔からギルムで活動している腕利きの冒険者達がいる。

 そんな冒険者達なら、二百mの高度を飛んでいるセトであっても判別可能かもしれないが。


(そういう連中に見つかったら、運が悪かったとしか言いようがないが……それは今更の話か。穢れの件をダスカー様に早く知らせないといけない以上、そうなったら強行突破だな)


 クリスタルドラゴンの件でレイに接触してくる者が多いのはレイにとって非常に面倒なことだった。

 とはいえ、それも仕方がないという思いがあるのも事実だったが。

 未知のドラゴンの素材とは、それだけ大きな意味があるのだから。


「グルゥ」


 考えごとをしていたレイは、セトが喉を鳴らしたことで既にギルムの真上までやって来ていたことに気が付く。


「っと、悪いなセト。……じゃあ、俺は地上に降りるから、三十分くらいしたら降りてきてくれ。その後は出掛けないで、マリーナの家の庭にいてくれればいいから」

「グルゥ?」


 それでいいの? と、喉を鳴らすセト。

 だが、セトが降りてきたというのを知れば、多くの者の意識がマリーナの家に向けられる。

 そうなると、既に街中に出ているレイから意識は逸れるのだ。

 ……それでもレイを直接知っている者がレイを見れば、それが例えドラゴンローブのフードを被って顔を隠している状態であっても、レイだと分かるのだが。

 そうなったらそうなったでしょうがない。

 そう思いながら、レイはドラゴンローブからニールセンを出して、セトの背から飛び降りるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 光学迷彩を使用すればよいと思います。
[良い点] 光学迷彩で消せば良いのでは。
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