表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レジェンド  作者: 神無月 紅
妖精のマジックアイテム
2956/3865

2956話

今年もこのライトノベルがすごい!2022のアンケートの時期がやって来ました。

詳細については、以下をご覧下さい。


https://questant.jp/q/konorano2022


回答期限は9月23日(木)23:59となっています。


是非、レジェンドに投票をお願いします。

 ようやくニールセンのお仕置きが終わると、レイは改めて長に尋ねる。


「それで、長は今までニールセンと何をやってたんだ? 昨日の今日ということを考えると、多分穢れに関することだと思うんだが」

「そうですね。昨日封印した穢れの件です。封印はしましたが、出来れば早く穢れというのはなくした方がいいですから」

「それは……まぁ、そうだろうけど」


 レイも穢れについて詳しい話はあまり知らない。

 それこそ悪い魔力ということくらいだ。

 だが、穢れという名前からして、出来るだけ早く処分してしまった方がいいのは間違いない。


(となると、封印した穢れを処分……それこそ浄化とかそんな感じにしようとしていた時に、ニールセンがミスをした訳だ)


 そう考えれば、長がニールセンをお仕置きしていた理由も理解出来た。

 もっともレイが他の妖精達から聞いた話によると、ニールセンがされていたお仕置きはそこまで強烈なものではないらしい。

 レイから見れば、身動き出来ない状態で空中を縦横無尽に移動させられるというのは、かなり厳しいお仕置きに見えるのだが。


(そうなると、あのお仕置きよりもっと凄いお仕置きって一体どういうのがあるのか……正直ちょっと気になるよな。とはいえ、それを素直に長に聞きたいとは、到底思わないけど。勿論自分で体験してみたいとも思いたくないし)


 長はレイに丁寧な態度で接しているが、それでも別に全面的にレイに従うといった訳ではない。

 もしレイが横暴な態度を取ろうものなら、当然のようにそれを断ってくるだろうし……場合によっては全力で抗うだろう。


「どうかしましたか?」


 笑みを浮かべながら、長は自分を見ていたレイに尋ねる。

 その言葉は一体何を思ってのものなのか。

 レイは正直その笑みについて聞きたいところがあるのだが、現在の状況でそのような真似をした場合、知りたくないことを知ってしまいそうな気がして怖いという思いもある。

 なので、長の言葉に首を横に振った。


「いや、ちょっと考え事をな。……それより、そろそろニールセンは大丈夫なのか?」


 長によってお仕置きをされていたニールセンは、当然ながらそれから解放されたからといって元気一杯といった訳ではない。

 それこそ完全にグロッキーな状態だった。

 無理もないと、長の行っていたお仕置きを思い出し、今のニールセンの状態にも納得出来てしまう。

 とはいえ、ニールセンがやったことを思えば決して庇おうとは思わない。

 それを口に出せば、色々と不味そうだったのでそれを実際に口に出すような真似はしなかったが。


「ええ、大丈夫ですよ。特に何も問題ありません。すぐにでも元気になりますから」


 本当か? と思わず突っ込みたくなるレイ。

 だが、長は本当にそうなると思っているようで、それどころか少し元気になるのが早すぎるのではないかしらと、そんな風にすら思っているようだった。

 レイとしては、それに突っ込むのを我慢するのに苦労し……この件から話を変えた方がいいと判断して口を開く。


「穢れの件は一体どうなったのか聞いてもいいか? 何かニールセンがミスをしたって話だったけど」


 結局その件には触れず、もっと気になっていたことを尋ねる。


「ええ。穢れそのものについてはそこまで濃い穢れではなかったので、少し時間は掛かりますが消滅させることは出来ます」

「消滅……そ、そうか。消滅か」


 てっきり浄化といったような言葉を使うのだと思っていただけに、長の口から出た消滅という言葉はちょっと意外だった。

 とはいえ、浄化でも消滅でも結局穢れがなくなるのは間違いないのだから、そこまで気にする必要はないかもしれないが。


「ええ、消滅させます。その準備をしている時に、ニールセンがミスを……」


 う、と。

 長に視線を向けられたニールセンは、何も言えなくなる。

 実際に自分がミスをしたのはニールセンも十分に理解しているのだろう。

 それを分かっているし、穢れというこの妖精郷にとって悪しき存在であるものを消滅させるのは、ニールセンも絶対に必要だというのは十分に理解していた。

 だからこそ、ニールセンも長からのお仕置きは抵抗せずに受けたのだ。

 ……もっとも、長とニールセンの間にある実力差は大きい。

 もしニールセンがお仕置きが嫌で逃げ出そうとしても、長がそれを許す筈もなかったが。


「そうか。……ちなみに、本当にちなみにだが、穢れというのはマジックアイテムを作るのに使えたりするのか?」

「……は?」


 一体この人は何を言ってるのか。

 もしかして正気ではなくなってしまったのか。

 そう言いたそうな『は?』という呟きだった。

 長の信じられないものを見る目を向けられたレイは、それだけで答えは理解出来てしまう。


「なるほど。穢れをマジックアイテムの素材に使ったりといったことは出来ないのか」

「それは……まぁ、そうですね。正直なところ、そんな風に考えたことはなかったので何とも言えませんが。ただ、私はやろうとは思えません。危険ですし」


 しみじみと告げる長の言葉に、レイも長の性格を考えるとそうなるよなと納得する。

 だが同時に、ギルムにいる錬金術師達なら素材として使えるかどうかを考えるのではないかとも思う。


(もっとも、その結果として穢れによる暴走とか汚染とかが起きそうだけど。そして周囲に大きな被害を与える訳だ)


 それはレイの予想……あるいは妄想とでも呼ぶべきものだったが、それでもレイとしては恐らくそう間違っていないだろうという思いはある。


「そうか。取りあえず、その穢れをどうにか出来るのなら問題はないな。もしどうしても穢れを持て余しているのなら、穢れを封じた花の形をした宝石を俺に渡せばいいと言おうと思ったんだが」

「レイさんに? どうするんですか?」

「俺の持っているミスティリングは、収納しておけば内部で時間が流れない。そういう意味では、封印をするには便利だからな。もっとも、封印は結局封印でしかない。消去出来るのなら、それが一番いいのは間違いないと思うけど」


 封印というのは結局封印でしかない。

 例えばもしミスティリングが壊れた時、場合によっては花の形をした宝石に封印された穢れが解放されるかもしれないのだ。

 勿論、ミスティリングはそう簡単に壊れるような物ではない以上、そのようなことは心配のしすぎかもしれない。

 しかし、何事にも例外はあるのだ。

 そうである以上、楽観的に考えるといった真似はしない方がいいのは間違いない。


「そうですね。レイさんの提案も助かりますが、やはり穢れは封印よりも消滅させた方がいいのは間違いないと思います」


 きっぱりとそう言い切る長に、レイもセトとも……そしてお仕置きされたニールセンも異論はないのか、反対するようなことはない。


「じゃあ、穢れの件はそれでいいとして。こっちも穢れとちょっと関係があるのかどうかは分からないが、一応話しておいた方がいいというか、聞いてみたかったことがあるんだが」

「はい? 何でしょう? 私に分かることでしたら構いませんけど」

「長に分かることというか、多分長にしか分からないことだと思う。昨日、ボブの身体から穢れが出て来た時があっただろう? 長の音楽に苦しむような形で」

「ありましたね。それが?」

「その時……正確にはニールセンが光を放った時に、ボブはどこか自分が現在いるのとは全く違う場所の光景を見たと言ってるんだが」

「え? それって私の力のおかげ!?」


 レイの言葉に喜んだ様子を見せるニールセンだったが、ニールセンの光によって全く別の場所の光景が見えたというのだから、普通に考えればそれは喜ぶべきことではないだろう。

 もっとも今回に限っては穢れについての何らかのヒントを知ることが出来るという意味で、悪くないことだったのは間違いないが。


「どうだろうな、タイミングを考えればニールセンの光が関係してる可能性は高いと思うけど。……で、その辺はどう思う?」

「自分ではないどこか、ですか。……聞いた話によると、ボブが穢れと関係したのは以前どこかの洞窟だという話でしたね? なら、その洞窟の光景が見えたのですか?」

「いや、違う。馬車の中と思しき光景だったらしい」

「……は? 何故馬車?」


 レイの言葉を聞いて、その意味を理解出来なかった長の口からそんな言葉が漏れる。

 とはいえ、レイもそれに突っ込むつもりはない。

 自分も最初ボブに話を聞いた時、そのように思ったのだから。


「分からない。分からないが、それでも馬車のような場所だったのは間違いないらしい。さっきも言ったが、タイミング的に穢れにニールセンの光が命中したことから、穢れに関係はあると思うけど、何か分からないか?」

「そう言われても……」


 レイの問いに、長は戸惑う。

 これが先程口にしたように、以前ボブが寄った洞窟であれば、あるいは納得出来ることもあっただろう。

 だが、そのような洞窟ではなく馬車。

 一体何がどうなってそうなるのか?

 長はそう疑問に思うと……ニールセンから旅について色々と聞いたことを思い出す。

 その中の一つに、ボブは別に尾行の類をされていないにも関わらず、敵に襲われたというのがあった。

 それはつまり、何らかの方法でボブのいる場所を敵が把握しているということを意味している。

 そしてボブが見た、馬車の中の景色。


「もしかしたら……本当にもしかしたらですが、ボブを狙っている敵は何らかの手段でボブの視界を盗み見ていたのでは?」




 何らかの手段と口にした長だったが、ボブがその光景を見た時のことを思えば、それがどのような手段なのか考えるまでもないだろう。

 それはつまり、穢れの力によってボブの視界を盗み見ていたのではないかと。


「可能性はある……のか?」


 長のその言葉に、レイも少し考えてその可能性はあるのか? と思う。

 ボブが尾行もいなかったのに、敵に襲われたこと。

 そして穢れという存在のことを思えば、もしかしたら長の言うように何らかの手段でボブの視界を盗み見るといった真似が出来てもおかしくないのでは? と。

 実際にはレイには穢れというのが具体的にどのような存在なのか分からない。

 分からないものの、それだけにレイには思いも寄らぬ使い方をしてもおかしくはなかった。


「ええ。あくまでも可能性ですけど。ただ、そうなるとボブを狙っている存在は何らかの方法で穢れを使っているということになりますね。……命知らずなことに」


 最後の言葉は小さく呟いただけだったが、それでもレイやニールセンには聞こえる程度の大きさだった。

 そして、小声だっただけに長が本気でそのように思っているのだということを理解するのに十分でもあった。


(この様子だと穢れってのはよっぽどの存在なんだろうな。いやまぁ、昨日のボブの一件を考えれば普通の存在とは到底思えないけど)


 ボブの身体から出て来た黒い霧は、長が悪い魔力といった表現をするように非常に厄介な相手に思えた。

 具体的にどのような存在なのかというのは、まだ分からない。

 分からないものの、それでも厄介だというのは十分に理解出来たのだ。

 そんな穢れを使っているのだから、長に命知らずと言われてもおかしくはない。


「長、穢れを使うというのは、そこまで危険なことなのか?」

「危険です。……勿論、私はどのようにして穢れを使っているのかとは分かりません。もしかしたら、穢れの危険さをどうにかする方法を発見して穢れを使っているという可能性もありますが……どうでしょうね」


 長の言葉は、出来ればそうであって欲しいといった希望的観測が込められている。

 しかし、そう思いながらもそれはまず有り得ないことだろうという諦観の色も強い。


「ちなみに、もしボブを狙ってる連中が穢れの制御……という言葉が適切かどうかは分からないが、とにかく扱いに失敗した場合、どうなる?」


 恐らくろくなことにはならないだろうと理解しつつも、レイは長に尋ねる。

 だが、そんなレイの質問に長から返ってきたのは聞いたレイにとっても予想外の言葉だった。


「向こうが扱っている穢れの量にもよりますが、最悪の場合はこの国……いえ、大陸が滅ぶかもしれませんね」

「マジか……」


 長の口から出たその言葉は、レイにとっても完全に予想外だった。

 ボブが見たという、洞窟がある森が滅ぶといったくらいであれば、レイも納得出来ただろう。

 あるいはその近くにあるかもしれない村や街が穢れによって滅びると言われても、まだ納得は出来た。

 また、決して好ましくないものの国が滅びると言われても……まだ何とか納得することが出来ただろう。

 しかし、大陸が滅びると言われてしまえば、さすがにレイにとっても信じられない出来事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これはグリム案件
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ