↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レジェンド  作者: 神無月 紅
妖精のマジックアイテム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2894/4266

2894話

好きラノ2021年上期が始まりました。

レジェンドは16巻が対象になっていますので、投票の方よろしくお願いします。


URLは以下となります。

https://lightnovel.jp/best/2021_01-06/


締め切りは7月24日となっています。

 二頭の狼の子供は、セトと共に遊んでいた。

 妖精郷を守っていた狼の群れはセトの存在に怖がり、あるいは畏怖していたものの、二頭の狼の子供はそんなセトに懐いている。

 勿論、狼の群れの態度は最初は妖精郷に近付いてきたレイやセトを警戒し、ある意味で敵対していたのだから、それが大きく関係しているのかもしれないが。

 そんな狼の群れと子供の狼の態度が違うのは当然だろう。


「前に見た時と比べると、随分と大きくなったな」

「そうですね。こう言ってはなんですが、妖精郷で育っているというのも関係していると思います」

「妖精郷で……なるほど」


 具体的にどうこうと説明された訳ではないのだが、妖精郷で育っただけでというのはレイを納得させるには十分な説得力があった。


「だとすれば、この二頭はいずれモンスターになるかもしれないな。具体的にどんなモンスターになるのかは分からないけど」


 レイが欲している機能を持つ霧の音を作る為に必要な魔石を持つスモッグパンサーは、豹系のモンスターということで珍しい存在だ。

 もっとも、それはあくまでもレイが今まで豹系のモンスターと戦っていない、あるいは戦った回数が少ないのでそう思ってるだけかもしれないが。

 それに対して、狼のモンスターとは何だかんだとかなり戦っている。

 あくまでもレイの感覚ではあるが、狼の方がモンスターになりやすいような気がするのは間違いない。

 二頭の狼はレイとの触れあいに十分満足したのか、その場を走り去る。

 セトもレイを見て喉を鳴らすと、その後を追う。


「あの二頭の件はいいとして……スモッグパンサーの件に話を戻すが、具体的にどこにスモッグパンサーがいるのかというのは分かってるのか?」

「ええ。ニールセンなら案内出来る筈です」

「……別にニールセンに拘らなくてもいいと思うんだけど」


 ニールセンはレイと一番親しい妖精であるのは間違いない。

 そういう意味では、長がニールセンをレイと一緒に行動させるようにしてくれるというのは親切心からだろうと理解出来る。

 しかしニールセンの性格を知っているレイにしてみれば、もしニールセンが自分と一緒に行動した場合、色々と面倒なことが起きるのではないかと思う。


「うおっ!」


 そんなことを思っていた瞬間、いきなり後方から自分に向かって猛スピードで飛んできた何かの気配を察知し、半ば反射的に回避する。

 すると一瞬前までレイの頭部があった場所を通りすぎた何かは、そのまま上空に移動して動きを止めた。

 腰に手を当てて地上にいるレイを睨んでいるその様子は、明らかに自分は怒ってますといった態度を示している。

 そして、そのような態度を取っているのが誰なのか……それはレイも見れば分かった。


「ニールセン、一体何のつもりだ?」

「それはこっちの台詞よ! 私が一緒に行くって言ってるのに、何で不満そうなのよ! 普通なら、ここは私と一緒に行動するのを喜ぶところでしょ!」


 がーっと、レイに対して叫ぶニールセン。

 それは今まで我慢していた不満を一気に吐き出したかのような、そんな叫び。

 レイにしてみれば、それがそこまで気にするような件なのか? といった疑問がある。

 とはいえ、今の状況を思えばニールセンがそんな不満を持つのが多少なりとも理解出来ない訳ではなかったが。


「長との話を聞いてたのか? ……なら、俺が何を言いたいのかも大体分かると思うけどな。俺のドラゴンローブの中に入ってギルムに行った時、ニールセンはかなり興奮して危なかっただろ? もしお前の存在が他の奴に見つかったりしたら、間違いなく騒動になるぞ」


 それは大袈裟な話ではない。

 妖精というのは、ある意味で幻の種族と言った認識の者も多いのだ。

 だからこそ、レイはこの妖精郷を観光地にすれば一儲け出来るのでは? とそう考えたのだが、妖精郷に部外者を入れたくないという長の言葉によって、観光地にするというのはレイもすぐに諦めた。


「そ、それは……でも、しょうがないでしょ、人のいる場所とか普通は行くことが出来ないんだから。それにお菓子とかも一杯あったし!」

「いや、それは理由にならないだろ」

「大丈夫よ。スモッグパンサーのいる場所には、人が住んでないもの。私が普通に行動していても、何も問題はないのよ」

「……なるほど」


 ニールセンの口から出た言葉は、レイを納得させるだけの説得力がある。

 確かにニールセンを連れていくのが問題となっているのは、人に見つかると面倒だからというのが大きい。

 しかしスモッグパンサーを倒すのなら、当然のようにスモッグパンサーが棲息している場所に行く必要があり、そのような場所に人がいる筈がない。

 いや、実際には冒険者がいる可能性はあるので、絶対にニールセンが人に見つからないという訳ではないのだが、それでもギルムに行くよりは大分安心だろう。


「ほら、大丈夫でしょう? なら、私を連れて行っても問題はないのよ」

「うーん……そうだな。そう言われるとそうなんだが……」


 それでも素直にニールセンの同行をレイが承知しないのは、何となくニールセンはトラブルメーカーのような存在であるような気がするからだ。

 何らかの根拠があってそう決めつけている訳ではないし、そもそもトラブルメーカーというだけならレイも十分にそう呼ばれてもおかしくはない。……いや、レイの場合はトラブルメーカーというよりも、トラブルを引き付けるような性質を持っているというのが正しいだろう。

 事実、クリスタルドラゴンの一件で避難していたエグジニスにおいては、ドーラン工房の闇に関わることになった。

 そして最終的にはエグジニスを動かしている四人のうちダイラスが失脚する事態となり、そのダイラスはネクロゴーレムとして街中で暴れて大きな被害を出している。

 とはいえ、レイがドーラン工房の闇に……ネクロマンシーを使って人の魂をゴーレムの核の素材にしているといったようなことを解決しなければ、今でもエグジニスではドーラン工房が同じような真似をしていたのだ。

 トラブルを引き寄せるのは事実だが、それによって幸せになる者が多かったのも、また事実。

 とにかく、レイは自分がそういう性質であるというのは……渋々ではあるが、認めている。

 そこに更にトラブルメーカーであるニールセンが一緒に行動し、スモッグパンサーの棲息している場所まで行くとなれば、一体どんなトラブルに巻き込まれるのか分かったものではない。

 とはいえ、ニールセンや長の様子を見る限りでは、そうするしかないというのも理解出来る。

 レイから見てニールセンは特別有能なようには見えないが、実際ギルムの領主であるダスカーと交渉をしたりといった真似をしているのを見れば、結果からしてレイの見立てとは違って有能なのだろう。


(長も、実はニールセンを自分の後継者にとか……いや、ないだろ。もしそんな真似をしたら、それこそここにいる妖精が大きな被害を……)


 受けるかもしれない。

 そんな風に思った瞬間、まるでそんなレイの考えを読んだかのように、ニールセンが上空から真っ直ぐレイに向かって突っ込んでくる。


「っと」


 しかし、レイはそんなニールセンの突撃をあっさりと回避した。

 先程のように不意打ちをしてきたのならともかく、今は見える場所にニールセンがいたのだ。

 妖精は結構な速度で飛行出来るものの、それでも見ている状態からレイを相手に一撃を入れるのは不可能だった。


「ちょっと、なんで避けるのよ!」


 自分の突撃が回避されたことが不満だったのだろう。

 ニールセンのその抗議の声に、レイは呆れたように口を開く。


「お前が突撃してくるんだから、避けないと命中して痛いだろ」

「当然でしょ!」


 叫ぶニールセンに、レイは何と答えるべきか迷う。

 とはいえ、ニールセンが怒っている理由が理解出来ていない以上、何を言っても場当たり的なものにしかならないのだが。


「大体ね……」

「ニールセン」


 レイに向かって不満を言おうとしたニールセンだったが、それを遮るように長がその名前を呼ぶ。

 すると、その言葉を聞いたニールセンは黙り込み、それ以上は何も言えなくなる。

 ここで長の命令に逆らうような真似をすれば、一体どうなるか。

 それはこの妖精郷に住んでいる者なら、誰でも理解出来たのだ。


「はぁ。この様子だと、本当にニールセンをレイさんと一緒に行かせるのは不味いかもしれませんね」

「そんな!」

「……ニールセン?」

「あ、はい。すいません。黙ってます」


 今の状況で口を開くのは自殺行為であると知ってはいたものの、それでもレイと一緒に出掛ける機会を逃してしまいかねないと、思わず口を挟むニールセンだったが、それもやはり長の一言であっさりと封じられてしまう。

 さすがにそんなニールセンを哀れに思ったのか、それとも多少なりとも一緒に行動するのなら、少しは気心の知れた相手の方がいいと思ったのか、レイは長に話し掛ける。


「その辺にしておいてやってくれ。何だかこのままだと色々と面倒なことになりそうだし、俺と一緒に行くのはニールセンでいいから」


 レイの言葉を聞き、ニールセンは自分『で』いいと言ったことに怒るべきか、それともレイと一緒に出掛けることを喜ぶべきか、迷ってしまう。


「本当にいいのですか? 無理をするのであれば……」


 長としても、今回の一件は重要な件だ。

 スモッグパンサーの魔石は、霧の音以外のマジックアイテムであってもそれなりに使い道は多い。

 ……だからこそ、今回のように足りなくなったりするのだが。

 霧の音を始めとして、妖精の作るマジックアイテムというのは錬金術師が作るマジックアイテムと比べても性能は上だ。

 勿論、錬金術師の中には天才と呼ぶべき存在もいるので、そのような者が作ったマジックアイテムは妖精の作ったマジックアイテムよりも高性能であることもあるが。


「ああ、それで問題はない。別に俺が無理を言ってる訳じゃないしな。ただ……出来れば長の方から、ニールセンが妙な行動をしないように言っておいてくれると助かるけど」


 その言葉に長は頷き、黙って視線をニールセンに向ける。

 そんな視線を向けられたニールセンは、何かを言おうとしたものの、結局黙り込む。


「ニールセンにはレイさんと一緒にスモッグパンサーの討伐に行って貰います。スモッグパンサーの棲息している場所は理解出来ますね?」


 長の問いに、ニールセンは無言で頷く。

 色々と言いたいことはあるが、今は少しでも早くこの状況からどうにか脱出をしたいのだ。

 その為には、今はこうして黙っているのが最善なのだと、そうニールセンは理解しているのだろう。


「どうやら任せても大丈夫なようですね。……レイさん、もしニールセンが勝手な行動をしたら、どうしても構いません。そうですね……それこそスモッグパンサーを誘き寄せる生き餌として使ってもいいかもしれませんね」


 長からのその言葉に、ニールセンは数秒前とは違って、首を横に振る。

 悪戯好きなニールセンであっても、生き餌として使われたくはないのだろう。

 ……レイにしてみれば、元からそんなつもりはないので安心して欲しいところなのだが。


「落ち着け。取りあえずお前を生き餌にするつもりはないから、安心しろ。ただ、移動中とかに妙な真似をしたら……その時はどうなるか分からないけどな」

「ちょ……」

「ニールセン?」

「……分かりました……」


 レイの言葉に抗議しようとしたニールセンだったが、長からの一言でそれも封じられる。


「じゃあ、取りあえずそれで話は決まりだな。……とはいえ、結局スモッグパンサーは具体的にどこにいるんだ? ニールセンがその場所を知ってるって話だったが、出来れば前もってその場所を知っておきたいんだが。でないと、道に迷う可能性もあるし」


 そう言うレイだったが、道に迷うという意味では元々が微妙に方向音痴気味のレイだ。

 長から場所を聞いても、その場所に真っ直ぐ向かうということは難しい筈だった。

 長は方向音痴気味だということについて知らないので、そんなレイの言葉を聞いても特に気にすることもなく口を開く。


「そうですね。この場所……トレントの森から考えると、東の方に向かえばいいかと。生憎と人の暮らしについては詳しくないので、具体的にどこの村や街の近くだといったようなことは言えませんが。ただ、ニールセンなら詳しい場所は知ってると思うので、問題はないかと」


 そうですね? と視線を向ける長に、ニールセンは何度も首を縦に振る。

 今のこの状況ではそうするのが最善の選択だと、そう理解しての行動だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。