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レジェンド  作者: 神無月 紅
ランクA昇格試験
2591/3865

2591話

今年もまた、ライトノベル界の中でも屈指の規模の「このライトノベルがすごい!2021」が始まりました。

レジェンドにも是非投票をお願いします。


URLは以下となります。

http://blog.konorano.jp/archives/52066788.html


締め切りは9月23日となります。

 レイの言葉を聞いたワーカーは、たっぷりと数分程沈黙した後でようやく口を開く。


「今、何と?」


 レイがランクAモンスターを規定の二匹を超えて、その倍以上倒したといった時にも驚いていたのだが、今はそれ以上の驚きだ。

 それこそ驚きすぎて茫然自失といった表現が相応しいくらいだ。

 そんなワーカーに向かい、レイは予想以上に驚かせたなと思いつつ、改めて口を開く。


「ランクSモンスターを倒した。そう言ったんだ」

「……そう、ですか。聞き間違えではなかったようですね」


 レイの言葉に、ワーカーは本当にランクSモンスターを倒したと言ったのだと理解する。

 そうしながら、それでも確認する必要があるだろうと判断して口を開く。


「それで、何故そのモンスターがランクSモンスターだと認識出来たのですか?」


 尋ねたワーカーの心の中には、もしかしたらレイがランクSモンスターを倒したとはいえ、それが実はランクAモンスターだったのではないかと、そう思ってのことだろう。


「相手の持つ迫力だな。それに、ワイバーンの類ならともかく、本物のドラゴンがランクAモンスターってことはないだろう? いやまぁ、ドラゴンは何気に数が多いらしいから、ランクAモンスターのドラゴンもいるかもしれないけど」

「……ドラゴン?」

「ああ。魔の森の奥に向かう途中で、まだそこまで奥じゃないってのに、いきなり現れてな」


 正確には、レイとセトが倒したワームの死体の臭いに惹かれてやってきた……というのが、正しいのだろう。

 だが、そんなワームの死体の臭いも、そんなに遠くまでは漂わない筈だ。

 そうなると、当然だがレイ達が戦ったクリスタルドラゴンは、本来いた場所からかなり離れていたということになる。

 そういう意味で、レイは運が悪かったのだろう。……いや、ランクSモンスター、それもドラゴンの素材や魔石を入手出来たのを考えれば、運が悪かったとばかりは言えないのかもしれないが。


「その、どんなドラゴンが聞いても?」


 ドラゴンの種類によって、大体のランクは理解出来る。

 特にワーカーは辺境にあるギルムのギルドマスターという仕事をしている以上、その辺の知識はかなりしっかりと理解していた。


「クリスタルドラゴン。俺は取りあえずそう呼んでるな。身体がクリスタルで出来てるようなドラゴンだったし」


 あくまでもクリスタルドラゴンというのは、レイがそのように呼んでいるだけにすぎず、実際の名前ではない可能性が高かった。

 それでもレイにしてみれば、やはりこれまでずっとクリスタルドラゴンと呼んできたのだから、クリスタルドラゴンという方が呼びやすい。


「クリスタルで? それは……ドラゴンではなく、ドラゴンの形をしたゴーレムなのでは?」


 ワーカーはギルドマスターとしての知識で知ってる限りのドラゴンの種類を思い浮かべるが、生憎と身体がクリスタルで出来ているなどというドラゴンについての情報はなかった。

 だとすれば、それはドラゴンの形をした、クリスタルで出来たゴーレムなのでは?

 そうワーカーが思うのも、当然だったのだろう。

 人が作るゴーレムの類は、当然だがその外見を好きに変えることが出来る。

 あるいは、魔力が集まってゴーレムというモンスターとして生まれた存在であっても、何らかの理由でドラゴンの外見をしているといった可能性は否定出来ない。

 そう思っての言葉だったが、レイはそれに首を横に振る。


「死体は持ってきてるから後で見て貰うけど、あれは間違いなくドラゴンだ。……そもそも、ゴーレムだったら無機物だろ? いやまぁ、ネクロゴーレムとか死体で作ったゴーレムとかもあるらしいけど、それは置いておくとして。俺が倒したドラゴンは、間違いなく生き物だった」

「……ですが、クリスタルなのですよね?」

「そうだな。そういう意味では特殊かもしれない。それと……普通ならそういう高ランクのモンスターなら高い知性があって、人の言葉を喋れたりするって話も聞いたことがあるけど、クリスタルドラゴンの場合は全く言葉を喋るといったことはなかったな」


 それはレイにとっても残念なことだった。

 もしドラゴンに……いや、知性のあるドラゴンに遭遇したら、エレーナの為にも竜言語魔法について聞いてみたいと思っていたのだ。

 とはいえ、もし知性のあるドラゴンが相手であっても、そう軽々しく竜言語魔法を教えてくれるとは、限らなかったが。


「そう、ですか。……そうなると、そのクリスタルドラゴンというのは恐らく新種ですね」


 ワーカーの言葉に、そうかと頷くレイ。

 新種のモンスターを見つけるというのは、ギルムの冒険者であればそう珍しい話ではない。

 地球においても、アマゾンのような場所では年に多数の新種が見つかっている。

 それを考えれば、辺境のギルムで未知のモンスターが何種類も見つかるというのは珍しい話ではない。

 ましてや、レイがいたのは魔の森という、辺境と言われるギルム周辺の中でも更に特殊な場所だ。

 そこに棲息するモンスターに新種が多くても、おかしなことはない。


(というか、水を生み出している水晶が何らかの理由でそういう新種を作り出しているとか、そういうことはないよな?)


 ふとそんな疑問を抱くレイだったが、それが実際にありそうで困る。

 何しろ、あの魔の森にはゼパイル一門の隠れ家があるのだ。

 魔獣術を開発したゼパイル一門にとって、大変だったのは当然ながら魔石を集めることだろう。

 何しろ、一種類のモンスターにつき一度しか魔石を使うことは出来ないのだ。

 そんなゼパイル一門にしてみれば、次々と新種のモンスターが生まれるというのは、それこそ願ってもないことだろう。

 寧ろ、それを狙って魔の森にあの水源を生み出したのではないかとすら、思ってしまう。


「レイ?」

「ああ、悪い。魔の森に新種のモンスターがいるのは、特におかしくはないと思ってな。それで、クリスタルドラゴンを含めたランクAモンスターはどうする? それ以外に、ランクBモンスター以下のモンスターでも、解体を頼みたいモンスターの死体はかなりあるんだけど」


 実際、今回の二泊三日で得たモンスターの死体は、かなりの量となる。

 自分でそれを解体するというのは……やれば出来るだろうが、レイとしては大変な作業である以上、それを得意としている本職の者達に任せたい。

 解体の技術が必要なモンスターの場合は、ある程度解体に慣れてきたレイであっても素材を傷付けたり、可食部位を大きく減らしたりといったようなとになりかねない。

 特にセトという食欲モンスターを連れている身としては、可食部位が減るということは絶対に避けたかった。

 ……もっとも、食欲モンスターという点ではセトだけではなく、レイもまた同様だったのだが。


「そちらも引き受けますよ。ただ……ランクB以下のモンスターならともかく、ランクAや、ましてやランクSとなると……」


 困った様子を見せるワーカー。

 迂闊な場所で作業をした場合、間違いなく目立つ。

 そして目立てば、当然だが馬鹿なことを考える者も出て来る。

 何とか解体している場所に紛れ込み、素材を奪うといったような。

 何しろ、ランクAとランクSのモンスターだ。

 素材の部位によっては、数年どころか一生遊んで暮らせるだけの金額になってもおかしくはない。

 ワーカーもそれを知っているからこそ、警戒しているのだろう。


「あそこはどうだ? 以前、俺がガメリオンの死体を大量に運び込んだところ。……あ、そう言っても分からないか」


 レイがガメリオンの死体を大量に運び込んだのは、まだマリーナがギルドマスターをしている時だった。

 それを思い出し、去年の冬のことを思い出す。


「ほら、冬にギガント・タートルの解体をした時、スラム街の住人が一時的に住んでいた場所」


 ギガント・タートルの解体は、結構な報酬が出た。

 それを目当てにスラム街の者達もやって来たが、スラム街だけに金を持っているのを見られれば奪われる可能性もある。

 また、スラム街である以上、暖房の類も少なく凍死する者も少なくない。

 そのような訳で、去年の冬には一時的にギルドが所有している倉庫にスラム街の面々は寝泊まりしたのだ。


(そう言えば、あの連中はどうしたんだろうな。何だかんだで結構な金額を貰ったし、上手くスラム街から出て行けていればいいんだけど)


 何らかの理由……冒険者として活動する為にギルムにやって来たのに実力が足りなかったり、商売に失敗したり、表にいることが出来なくなるような犯罪に手を染めたり……それ以外にも様々な理由で、スラム街に落ちる者は多い。

 それ以外であっても、それこそスラム街で生まれたという者すらいる。

 そのような者達がスラム街から出るというのは、かなりの運が必要になるのだが……そういう意味で、スラム街にいた者達にとってギガント・タートルの解体に自分達を雇ってくれたレイという存在は、感謝すべき相手だった。

 そんな者達がどうしたのか……そうレイは思うが、全員がスラム街から出ることに成功したとは思えない。

 そう考えるが、今はそれよりもミスティリングに入っているモンスターの死体についてだと、頭を振って意識をそちらに集中する。


「で、どうだ? あの場所ならかなり大きかったから、大丈夫だと思うけど」

「そのクリスタルドラゴンを倒したレイがそう言うのであれば、構いません。……一応念を押しておきますが、本当に大丈夫なんですよね?」

「ああ。とはいえ……クリスタルドラゴンの他にも、ランクAモンスターの死体はある。ちなみにランクAモンスターの種類についても話しておくか?」


 ランクAモンスターを複数倒したという話はしたが、具体的にどのようなモンスターを倒したのかといったことは、まだ説明していない。

 ワーカーは、そんなレイの言葉に少し悩む。

 クリスタルドラゴンの例に漏れず、ここでどのようなランクAモンスターを倒したのかと聞かされれば、間違いなく驚く。

 ましてや、そのモンスターは魔の森に棲息するランクAモンスターだ。

 そのような状況である以上、ここで驚いてから倉庫で実際にランクAモンスターの死体を見て再度驚く方がいいのか、それともここで話を聞かず、倉庫で実際にランクAモンスターの死体を見て大きく驚いた方がいいのか。

 その辺りは、悩みどころではあったが……やがて、ワーカーは決断する。


「分かりました、話を聞かせて下さい」


 それは、単純にワーカーが衝撃を二段階に分けた方がいいという判断もそうだったが、それ以上に、やはり魔の森に棲息したランクAモンスターが気になるという点も大きいのだろう。

 ギルドマスターという仕事をしている関係から、少しでも早く魔の森に棲息する未知のモンスターについての情報を知りたいというのもあるが、ただ単純にワーカーにとっても魔の森のランクAモンスターは興味深いというのもあるのは間違いなかった。

 ギルドマスターという仕事をしている以上、その辺りのことはレイにも納得出来る。


「そうか。まずは、巨狼だな。これは単純に巨大な狼のモンスターと考えてもいい。ただし、かなり高い知性を持っていた。……まぁ、それが仇となったんだが」


 そう言い、レイは巨狼との戦闘について簡単に説明する。

 知性が高いからこそ、レイとセトを見ても自分ならどうとでもなると油断し、そこに付け込み、半ば力押しで倒したと。


「生半可に知性があったのが不幸なのかもしれませんが、そのような相手でも力押しで勝てるという時点で大概ですね」

「どうだろうな。実際、何だかんだと強かったし。……次は、女王蜂だな。ただ、この女王蜂の場合はそっちで確認して貰う必要があるけど、ランクAモンスターかどうかは分からない。純粋に個として考えれば、強くなかったし。たっぷりと毒煙を吸わせたのも影響してるのかもしれないが」


 そう言い、レイは次に女王蜂について説明していく。

 巨大な蜂を見つけ、その巣が地中にあったので毒の煙をたっぷりと流し込んで、地中の奥深くにいただろう女王蜂は、その分だけ地上に出るまでにたっぷりと毒煙を吸うことになり、地上に出て来た時は毒の影響でかなり弱っていたこと。

 だからこそ、はっきりとは分からないが、ランクAモンスターとしては弱いと思ったこと。


「……なるほど。そちらについては、後で死体を調べればある程度は判明するでしょう」

「頼む。で、次は闇の世界樹だな」

「闇の世界樹?」


 仰々しい名前に眉を顰めるワーカー。

 そんなワーカーに対し、レイは闇の世界樹についての説明をするのだった。

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[気になる点] あのギガントタートルの解体の時のスラムのリーダー格の女の子がどうなったか気になるンゴねえ…
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