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レジェンド  作者: 神無月 紅
ランクA昇格試験
2588/3865

2588話

今年もまた、ライトノベル界の中でも屈指の規模の「このライトノベルがすごい!2021」が始まりました。

レジェンドにも是非投票をお願いします。


URLは以下となります。

http://blog.konorano.jp/archives/52066788.html


締め切りは9月23日となります。

 魔石の数も残り二つ。

 何だかんだと、ここまではどの魔石を使ってもスキルを習得出来た。

 これは、実はレイやセトにとっては非常に珍しいことだったりする。

 何しろ、基本的に弱すぎるモンスターの魔石や、一度使った魔石はスキルを習得出来ないのだから。

 そういう意味では、さすが魔の森に存在するモンスターの魔石といったところだろう。

 もっとも、大量に襲ってきたモンスターの大半がレイの魔法によって死んでおり、身体どころか魔石までもが燃えてしまったモンスターが多いだけに、そういう意味ではこうして目の前にある二つの魔石もその炎の壁を生き残った――モンスターは死んでるので、その表現は正しくないのかもしれないが――存在ということだろう。


「セト、残り二つだ。どっちを選ぶ?」

「グルルルゥ」


 どちらを選ぶと言われても、どの魔石がどのようなモンスターの魔石なのか分からない以上、セトとしては勘で選ぶしかない。

 若干大きい方の魔石を咥え、そのまま飲み込み……


【セトは『クリスタルブレス Lv.二』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。

 それを聞いたレイは、驚きの……いや、驚愕の表情を浮かべる。

 昨日、レイは魔の森でクリスタルドラゴンと戦った。

 そのクリスタルドラゴンが使ってきたクリスタルブレスは、極めて強力だった。

 何しろブレスの範囲内にいる相手をクリスタルに閉じ込めた後、それが砕けるといったような、そんなブレス攻撃だったのだから。

 勿論、それはクリスタルドラゴンが極めて強力な高ランクモンスター……ランクSモンスターだからこその話で、使っていたクリスタルブレスもセトのレベル一と比べると圧倒的に高レベルなのは間違いない。


(いやまぁ、もしかしたらクリスタルブレスのように見えてはいるけど、実は違うスキルって可能性もあるけど)


 クリスタルドラゴンというのも、その外見からあくまでもレイがそう予想した程度にすぎない。

 そうである以上、クリスタルブレスのように見えて、実はクリスタルブレスではないという可能性も、否定は出来ない事実なのだ。

 とはいえ、結局レイの予想通りといった可能性の方が高いのだが。


「よし、セト。じゃあ使ってみてくれ」

「グルルルルゥ!」


 レイに頼まれ、早速クリスタルブレスを使うセト。

 だが、やはりレベル一がレベル二になった程度の為か、標的となった小さめの岩がクリスタルに包まれているといった程度でしかなかった。

 気持ち……本当に気持ち、石を包んでいるクリスタルが厚くなってるようにも思えたが。

 レベル一との違いとなると、その程度でしかない。

 それでもレベル五になれば圧倒的に強化されるのは確実なので、そういう意味では間違いなく前進だろう。


(問題なのは、クリスタルブレスなんてスキルを使うモンスターが珍しいってことだよな。同じモンスターの魔石は使っても意味はないし。……そう考えると、クリスタルドラゴンの魔石がクリスタルブレスの可能性が高いのは、嬉しいやら残念やら)


 クリスタルブレスを使うモンスターの数が少ない以上、クリスタルドラゴンの魔石でクリスタルブレスを強化出来るのは嬉しい。

 だが……クリスタルドラゴンはランクSモンスターなのだ。

 そう考えると、もっと別のスキルでもいいのではないかと、そう思ってもしまう。


(まぁ、別にクリスタルブレスと決まった訳ではないし、今は考えても意味はないか)


 こうしてレイが幾ら考えたところで、習得出来るスキルを自由に選べる訳ではない。

 習得してみたら、実は全く思いもしなかったスキル……といったことも、珍しくないのだから。

 ただ、スキルは魔石を持っていたモンスターによって変わってくる以上、そのスキルは単純にモンスターが戦闘で使用出来なかったのか、もしくは素質があっても覚えていなかったといったようなスキルなのだろうが。


「ともあれ、これが最後の一個だな。……さて、どんなスキルを習得出来るか」


 呟き、魔石の最後の一個を空中に放り投げると、デスサイズを振るう。


【デスサイズは『マジックシールド Lv.二』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。


「マジか!?」


 レイの口から、驚きの声が漏れる。

 当然だろう。マジックシールドは光の盾を生み出すというスキルで、どのような攻撃であっても一度だけではあるが、防ぐといった能力を持つ。

 これまで、何度もレイを敵の攻撃から救ってきたスキルだ。

 そのスキルがレベル二になったのだから、それがどのように強化されたのか確認してみるのは当然だった。


「マジックシールド!」


 スキルを発動すると同時に、光の盾が姿を現す。……ただし、二枚。


「これは……」


 レイにしてみれば、マジックシールドが二枚あるというのは非常にありがたい。

 何しろ、どのような攻撃であっても二度は防げるということを意味しているのだから。


「いや、待てよ? マジックシールドが二枚になったら、実は防御力も半分になったなんてことはないよな?」

「グルゥ……」


 レイの言葉を聞いたセトは、心配しすぎなんじゃ? と喉を鳴らす。

 とはいえ、レイにしてみればマジックシールドは強敵と戦う時にはよく使うスキルだ。

 威力が半分になって光の盾が二枚になるといったようなことになれば、強敵と戦う時の戦術を変える必要がある。


「セト、悪いけどちょっと試してくれるか? 光の盾で……そうだな、パワークラッシュを使ってくれ」


 セトの持つスキルの中で、レベル六に達しているのは、パワークラッシュと光学迷彩の二つだけだ。

 光学迷彩は非常に強力なスキルではあるが、それは姿を見えなくするといったスキルで、直接的な攻撃力がある訳ではない。

 ……もっとも、セトのような巨体を持つモンスターがどこから攻撃してくるのか分からないというのは、敵対している者にしてみれば非常に凶悪な能力だろうが。

 ともあれ、今のレイにとって必要なのはパワークラッシュの持つ直接的な攻撃力の高さだった。


「グルルルゥ……」


 当然だが、セトはレイに向かってそんな攻撃をしたいとは思わない。

 気が進まない様子のセトに対し、レイは光の盾を動かす。

 基本的に光の盾はレイの周囲に浮かんでおり、邪魔にならないよう動いているのだが、レイが動かそうと思えば自由に動かすことも出来る。

 スキルの制約の為か、十m近く離れた場所にいる別の仲間を光の盾で防御するといったような真似は出来ないが。


「グルゥ」


 レイの近くでないのなら、と。セトもパワークラッシュで攻撃することに納得する。

 レイが動かした光の盾から、少し離れた場所に行き……そして、助走して前足の一撃を光の盾に叩き込む。


「グルルルルルゥ!」


 パワークラッシュが発動したセトの一撃は、それこそ圧倒的な破壊力を持っている。

 ギィン! という音と共に、パワークラッシュの一撃は光の盾に防がれ、そして攻撃を防いだと判断したのか、光の盾はそのまま消滅していく。


「なるほど。今の一撃を見る限りだと、光の盾一枚ずつの性能が下がっているって訳じゃないのか。普通に、光の盾が二枚になったと考えてもいいみたいだな。にしても……」

「グルゥ?」


 スキルの強化に納得し、嬉しそうにしていたレイだったが、何かを考えた様子を見せる。

 そんなレイに、セトはどうしたの? 首を傾げた。

 愛らしいセトの様子に、レイはその頭を撫でながら言葉を続ける。


「いや、マジックシールドが強化されたってことは、昨日の俺達を追ってきた敵の中にも同じようにマジックシールドのスキルを使えるか、そのまま同じじゃなくても似たようなスキルを使えるモンスターがいた筈だ。なら、炎の壁に突っ込むといったような真似をしなくてもよかったんじゃ? と思ってな」


 どんな攻撃も一度だけは防ぐ光の盾。

 そんなスキルがあったのなら、わざわざ死ななくてもすんだ筈だった。


「グルルルルゥ」


 セトはレイの説明を聞き、なるほどと納得する。

 今まで何度もマジックシールドを見ているセトにしてみれば、マジックシールドならレイの魔法であっても一度なら間違いなく防げるだろうと、納得出来た。

 それだけに、何故モンスターがそのスキルを使わなかったのかという、レイの疑問ももっともだった。


「まぁ、スキルを使われたらそれはそれで面倒になっていたんだし、そう考えればラッキーだったんだけどな」


 もしマジックシールドの魔石を持っていたモンスターがスキルを使っていた場合、その時はモンスターが生き残って魔の森に逃げ出していた可能性が高かった。

 そうなっていれば、レイはマジックシールドのレベルを上げることは出来なかっただろう。

 そういう意味では、この魔石を持っていたモンスターがスキルを使わず、何も考えないで炎の壁に突っ込んできてくれてよかったのは間違いない。


「ともあれ、これで魔石は全部使い終わったな。最後の最後で、まさか六個の魔石全部からスキルを入手出来るとは思わなかったけど」

「グルルルゥ」


 レイの言葉に、セトも同意するように喉を鳴らす。

 とはいえ、レイとしては六個の魔石全てでスキルを習得出来たことを喜んでいいのかどうか、微妙だが。

 勿論、六個の魔石全てからスキルを習得出来たことは、喜ぶべきことだ。

 だが、レイが魔法で生み出した炎によって身体どころか魔石までをも燃やされてしまったということは、今になって考えてみれば明らかに惜しかった。

 昨日は日中にランクSモンスターのクリスタルドラゴンと戦い、それ以外にもランクAモンスターのキメラと戦ったり、そのような二匹には及ばずとも、高ランクモンスターと呼ぶに十分な相手と多数戦った。

 特に霧のモンスターは具体的なランクは分からなかったものの、厄介な相手だったのは間違いない。

 極限まで集中したことによって倒せたが、それによってレイは自分がどれだけ疲労しているのかを実感してしまい、実感したことによってその疲労が如実に身体に表れてしまう。

 それ以外にも魔の森で二泊三日をしたということで、隠れ家という安全な場所で寝泊まりしたとはいえ、やはり精神的な疲労が重なっていくのは当然だ。

 そんな状況で三十匹近い空を飛ぶモンスターを引き寄せ、一網打尽にしたのだから、威力を細かく調整するといったよいうな真似はとてもではないが無理だった。

 レイもそれは分かっている。

 分かってはいるのだが、それでもやはり今こうして思うと三十匹中六個の魔石というのは、惜しいことをしたと、そう思ってしまう。


(魔の森、それも夜に活動していたモンスターなんだから、魔石が残ってれば……多分、最大三十個くらいのスキルを入手したり強化したり出来たんだろうな)


 そう思うと、やはり残念に思う。

 思うが、もうやってしまったことである以上、どうしようもない。

 精々、次に魔の森に来るようなことがあったら、もう少し威力の弱い魔法を何度も連続して放ち、弱い――あくまでも魔の森のモンスターとして――モンスターを、魔石は燃やさない程度に倒していくといったようにしようと思うことだ。


(あるいは、魔の森に来ても地上に降りないで、夜に上空を飛んでモンスターを引き連れて離れるといったような真似をしてもいいかもしれないな)


 結局のところ、昨日の最大の失敗要因はレイが疲れていたからというのが大きい。

 つまり、地上で戦って疲れるから問題なのであって、最初から空を飛んでいる敵だけを目的にすればいいのだ。

 ……もっとも、魔の森という未知のモンスターの宝庫を前にして、それが我慢出来るかどうかというのは、微妙なところだが。


(それに、この方法だと身体が燃えてる分だけ、どんなモンスターの死体なのか分からないというのが痛いんだよな)


 後々、どこか別の場所で倒したモンスターの魔石を使っても、魔の森で魔石を使ってスキルを習得していたので、新たなスキルは習得出来ませんでした。

 そんなことになったら、微妙に嫌な思いをすることになってしまう。


「グルルルルゥ?」


 考え込んでいるレイに、セトはどうしたの? と喉を鳴らす。


「いや、何でもない。ただ、スキルの習得も終わったし、そろそろギルムに戻ろうかと思ってな。……セトもギルムで遊びたいだろ?」

「グルゥ!」


 当然のように、セトはレイと一緒にいるのは大好きだ。

 だが同時に、ギルムにいる者達と一緒に遊ぶのも、また大好きなのだ。

 ギルムから外に出て、まだ十日も経っていない。

 それでもレイの言う通り、セトはギルムにいる多くの相手と遊びたいと、そう考え……レイの言葉に同意するのだった。

【セト】

『水球 Lv.五』『ファイアブレス Lv.四』『ウィンドアロー Lv.四』『王の威圧 Lv.四』『毒の爪 Lv.六』『サイズ変更 Lv.二』『トルネード Lv.四』『アイスアロー Lv.五』『光学迷彩 Lv.六』『衝撃の魔眼 Lv.三』『パワークラッシュ Lv.六』『嗅覚上昇 Lv.五』『バブルブレス Lv.三』『クリスタルブレス Lv.二』new『アースアロー Lv.二』『パワーアタック Lv.一』『魔法反射 Lv.一』『アシッドブレス Lv.二』『翼刃 Lv.二』『地中潜行 Lv.一』『サンダーブレス Lv.一』『霧 Lv.一』



【デスサイズ】

『腐食 Lv.六』『飛斬 Lv.五』『マジックシールド Lv.二』new『パワースラッシュ Lv.五』『風の手 Lv.四』『地形操作 Lv.五』『ペインバースト Lv.四』『ペネトレイト Lv.四』『多連斬 Lv.五』『氷雪斬 Lv.四』『飛針 Lv.一』『地中転移斬 Lv.一』


マジックシールド:光の盾を作りだし、敵の攻撃を一度だけ防ぐ。敵の攻撃を防いだ後は霞のように消え去る。また、光の盾は通常はオートでレイの邪魔にならないように動いているが、意識すれば自分で好きなように動かすことも可能。レベル一で一枚、レベル二で二枚の光の盾を生み出せる。


クリスタルブレス:相手を水晶に閉じ込めるブレス。現在はLvが低いので水晶でコーティングする程度の威力。ただし、それでも相手の動きを多少止めることは可能。

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― 新着の感想 ―
[一言] クリスタルブレスはレベル三に上がったんじゃないか? と言われてる方々いますが、 今回上がったのは二で合ってますよ。 割と使ってるけど、今回が初上がりですし。 クリスタルドラゴンの魔石はまだ当…
[一言] 手にしてから随分経って、漸く1レベ上昇か……長かったな
[一言] 牛の魔石をデスサイズに使わないのかな??
感想一覧
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