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レジェンド  作者: 神無月 紅
ランクA昇格試験
2587/3865

2587話

今年もまた、ライトノベル界の中でも屈指の規模の「このライトノベルがすごい!2021」が始まりました。

レジェンドにも是非投票をお願いします。


URLは以下となります。

http://blog.konorano.jp/archives/52066788.html


締め切りは9月23日となります。

「ん……んん……」


 目を覚ましたレイは、すぐに我に返る。

 これが街中であったりすれば、十分……あるいはもう少し寝惚けていたりするのだが、街の外である以上、レイにしてはみれば寝惚けていられるような暇はない。


「んー……大分マシになったな」


 昨日、魔の森から脱出して空を飛ぶモンスターを一網打尽にし、その魔石を集めた後でレイはセトにのってある程度魔の森から離れた。

 セトの飛ぶ速度を考えれば、それこそギルムに到着することも可能だっただろうが、レイとしては既にかなり限界を迎えていた。

 その辺りの理由もあって、魔の森から十分離れた場所でマジックテントを取り出して野営をしたのだ。

 見張りにはセトがいるので、取りあえず問題はないと判断しての行為だったが……


「まぁ、取りあえず昇格試験の内容としては問題ないだろ」


 魔の森で二泊三日し、ランクAモンスターを最低二匹以上倒すというのが昇格試験の内容だ。

 レイは、十分にその条件を満たしている。

 昨日も日付が変わった後に魔の森を脱出するといったことになれば、昇格試験は失格だっただろう。

 しかし、レイはきちんと日付が変わる前にセトに乗って魔の森を出た。

 そういう意味では、間違いなく昇格試験の合格ラインには達している筈だった。

 ……ランクSモンスターのクリスタルドラゴンを倒したという時点で、実力的には問題ないのだが。


「ともあれ、まずは魔石だな。ギルムに帰る前に、昨日の魔石だけは使っておきたい」


 三十匹程のモンスターが追ってきて炎の壁に焼かれ、灰にも炭にもなっておらず、死体から取り出すことが出来た魔石の数は、六個。

 三十匹の中の六個と考えると少ないのかもしれないが、それでも六個の魔石を入手出来たのは大きい。

 問題なのは、死体のほぼ全てが炭となっていたり、焼けてしまったりしていた以上、そのモンスターが具体的にどのようなモンスターなのか分からないという事だろう。

 レイが倒したモンスターではあるが、普通に戦闘をして倒した訳ではなく、罠に嵌めて一方的に炎の壁で蹂躙した以上、そのモンスターが具体的にどのような攻撃手段を持っているのか分からない以上、どのようなスキルを習得出来るのか分からないという不安もある。


「そう言えば、逃げてる時に炎とか風とか針とか、そういうのが飛んできてたよな。どのモンスターが攻撃してきてたのか分からない以上、結果として意味はないんだけど」


 そんなことを考えながら、レイは身支度を調えてからマジックテントの外に出て……


「うお」


 驚きの声を発したのは、そこにセトがいたからだ。

 いや、セトがいるのは当然なので、そこまで驚くようなことではない。

 だが、セトの横に牛のモンスター……魔の森に入る前に遭遇したのと同じモンスターの死体があり、その横に座っているセトが円らな目に期待を込めて自分を見ているのだから、それで驚くなという方が無理だった。

 いつもこういう時のセトは寝転がっているのだが、今のセトは犬で言うお座りの体勢で、尻尾を激しく振っている。

 セトが何を期待しているのかは、レイにも理解出来た。

 出来たのだが、寝起きでいきなりだっただけに、やはり驚くのは当然だろう。


「この牛、夜に襲ってきたのか?」

「グルゥ!」


 モンスターに襲われて嬉しそうな声を出すというのも、レイはどうかと思わないでもない。

 ただし、セトであればそのような真似をしてもおかしくはないし、何よりもセトが倒した牛のモンスターの肉は美味かったのをレイも覚えている。


「ただ、今からこれを解体するのはちょっとな。……出来れば魔石を使ったら、すぐにギルムに戻りたいし」

「グルゥ……」


 レイの言葉に、残念そうな声を出すセト。

 期待の視線を向けられていただけに、レイはセトのそんな様子に申し訳なさを感じ……


「ほら、取りあえずこの牛じゃなくて、前に解体した牛の肉を食おう。それならいいだろ?」

「グルゥ? ……グルゥ!」


 レイの言葉に、セトは嬉しそうに鳴き声を上げるのだった。






「さて、朝食も食べ終わったし、いよいよ本題といくか」

「グルゥ」


 レイの言葉に、牛肉を食べることが出来て嬉しいセトは同意するように喉を鳴らす。

 セトにしてみれば、牛肉もそうだが、やはり魔獣術で生み出された存在だけに、魔石の件には強い興味を持つのだろう。


「魔石は六個。……ただし、この六個はどれがどういう能力を持つモンスターの奴なのかは分からない。いや、一応これは分かるか」


 一際大きい魔石は、ワイバーンから剥ぎ取った魔石だ。

 とはいえ、基本的に魔石の大きさというのはそこまで変わらない。

 ワイバーンの魔石であっても、セトは容易に飲み込むことは可能だった。


「このワイバーンの魔石はどうする? 希少種だったらスキルを入手出来るかもしれないけど、普通のワイバーンだとスキルを習得することは出来ないけど」


 魔の森以外の場所で倒したワイバーンなら、普通の……特に希少種でも何でもないワイバーンだと認識してもいいだろう。

 だが、相手は魔の森で倒したワイバーンだ。

 それもモンスターの活動が活発になる、夜に活動していたワイバーン。

 そうである以上、希少種であるという可能性は決して否定できなかった。


「グルルルゥ……グルゥ!」


 少し迷った後で、自分が使う! と喉を鳴らすセト。

 そんなセトを見ながら、レイは一応といった様子で確認する。


「魔石は全部で六個だ。つまり、セトとデスサイズで三個ずつだ。その三個のうちが、このワイバーンの魔石になるんだが……本当にそれでいいんだな?」

「グルゥ!」


 レイに対し、問題ないと喉を鳴らすセト。

 そんなセトに、レイはそれ以上何も言わずにワイバーンの魔石を渡す。

 それをクチバシで咥え、飲み込み……


【セトは『アシッドブレス Lv.二』のスキルを習得した】


 アナウンスメッセージが、脳裏に流れる。


「希少種だったか」

「グルルルルゥ!」


 可能性は高いと思っていた。

 だが、それでも多分違うんじゃないのかといった予想がレイの中にはあったのだが、いい意味で予想を裏切られた形だ。

 嬉しそうにしているセトを見ながら、あるいは残っている魔石は実は全て希少種の物なのでは? といった疑問を抱くレイ。

 だが、すぐにそれを否定する。

 希少種というのは、希少な存在だからこそ希少種なのだ。

 そうである以上、一度に大量の希少種が出るとは思えない。


(まぁ、常識が通用しないからこそ、魔の森なんだけど。……実は、魔の森に水を流している、あの水晶から出ている水が希少種を生み出しやすくしているとか、そういうのはないよな? ゼパイル一門の技術力を考えると、何だか普通にありそうなんだけど)


 ギルムでは、何かあったら『レイだから』という理由で納得されることが多かったが、レイにしてみれば魔の森で希少種が多くても『ゼパイル一門だから』で納得してしまう。


「取りあえずセトの一個目は無事にスキルの習得が出来たな。アシッドブレスを試してみてくれるか?」


 レイの言葉に、少し離れた場所にある植物や岩に向かってアシッドブレスを放つセト。

 レベル一では植物が半ば溶けてしまうといった程度の威力だったが、レベル二では植物は完全に溶かすことが出来て、岩もそれなりに溶けるといったような威力を発揮した。

 ……もっとも、植物が溶けるといっても、植物によってその辺りの耐久性は違うだろうし、魔の森の植物とそれ以外の場所の植物となると、それだけでもそれなりに耐久性が違ってきそうだが。

 そうしてアシッドブレスを確認すると、次はレイが魔石の中から一つ選ぶ。

 具体的にどのようなモンスターの魔石なのか分からないので、フィーリングで選んだ魔石だ。

 実は魔石の中には最後に炎の壁に突っ込んできた亀の魔石もあるのだが、疲れていたこともあってか、他の魔石と一緒にしておいた為に、どれが亀の魔石なのかはレイにも分からない。

 なので、運試しということで魔石を空中に放り投げてから、デスサイズで切断し……


【デスサイズは『多連斬 Lv.五』のスキルを習得した】


 頭の中にアナウンスメッセージが響く。


「って、マジか!?」

「グルゥ!?」


 レイは驚き、セトもまた同様に驚く。

 当然だろう。多連斬というのは、デスサイズが習得しているスキルの中でも極めて強力なスキルだ。

 そしてスキルは、レベル五になると進化と表現してもいい程に強化される。

 レベル四では、デスサイズで実際に行った攻撃以外に四つの斬撃が出る。

 それがレベル五になって強化されたら、どうなるか。

 ごくり、と。

 一体どれだけ強力なスキルになっているのかを心配し、唾を飲み込んだレイはセトに声を掛ける。


「セト、多連斬を試してみる。……一体この魔石を持っていたのがどういうモンスターだったのかは、今となってはもう分からないが、ともあれ多連斬がレベル五に達したのは俺にとっても嬉しいことだ」

「グルゥ」


 セトもまた、多連斬がどれだけ強力なスキルなのかを知っている以上、レイの言葉には素直に頷き、距離を取る。

 十分にセトが距離を取ったのを確認してから、レイは更に念の為にとマジックテントもミスティリングに収納しておく。

 魔石を使ったら、後はもうギルムに真っ直ぐ向かうつもりだったので、レイとしてはマジックテントを出しておく必要がない。

 そうである以上、もし何の理由もなくマジックテントを出しておいて、多連斬の効果で傷を付けるといったようなことになったら、最悪の事態だ。

 だからこそ、レイは今のうちにマジックテントをミスティリングに収納したのだろう。


「よし……行くぞ」


 意識を集中し、先程のセトのアシッドブレスで表面が溶けた石に向かってデスサイズを振るう。


「多連斬!」


 デスサイズが振るわれ……次の瞬間には、本物の斬撃の他に、十個の斬撃が出る。


「うおっ!」


 レベル五になったことで、スキルそのものが大きく強化されるのは知っていた。

 だが、それでもまさか今まで四つだった斬撃がいきなり十個にまで増えるというのは、さすがに驚く。

 ただ、何らかの特殊な効果が追加された訳ではなく、単純に追加で発生する斬撃の数が増えただという意味では、強化内容としては単純なものだろう。

 ……ただし、その十個の斬撃は全てがレイのデスサイズと同じだけの威力を持っているのだ。

 つまり、レイがデスサイズで十回……いや、本物の斬撃も含めれば一度の攻撃で十一回相手に斬撃を与えることになる。

 レイの普通デスサイズの斬撃は、一撃で凶悪な威力を持つ。

 それが十一回も同時に放たれるのだから、その威力は凶悪という言葉でも言い足りないくらいだろう。

 当然だが、アシッドブレスで表面が溶けていた岩も、多連斬によって完全に切断され、破壊されていた。

 あまりの出来事に、レイの口から驚きの声が漏れるのは当然だろう。


「うん、取りあえずこれはこれでいいとして……残り四個か。セト、どれにする?」


 布の上に置いた魔石のうち、残りは四つ。

 セト、デスサイズの順番で来たのだから、当然のように次はセトの番となる。

 だが、どれにする? と言われても、セトはどの魔石がどのモンスターの物なのか分からない。

 そうである以上、当然だがセトは自分の勘に従って魔石を選ぶ必要があった。


「グルルゥ」


 喉を鳴らし、セトは魔石を咥えて飲み込み……


【セトは『翼刃 Lv.二』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。

 だが、このスキルにはそこまでレイも驚くようなことはない。

 今回倒した敵は、その全てが空を飛ぶモンスターだ。

 そうである以上、敵は鳥型のモンスターも多く、その中には翼の外側を刃のようにするスキルを持っているモンスターがいてもおかしくない。

 レイはセトにスキルを使って貰って調べてみたが、レベル一よりも強化されているのは間違いなかった。

 具体的にはレベル一では皮と肉を斬り裂く程度の威力だったが、レベル二では肉を斬り裂いて骨を切断するだけの威力があるのは間違いない。


「さて、そうなると残り三つか。次は俺だな。……どんなスキルを習得出来るか」


 呟き、レイは魔石を手に取って空中に放り投げ、デスサイズで切断する。


【デスサイズは『氷雪斬 Lv.四』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。


「氷雪斬か。……何だかんだと、氷雪斬のレベルが大分高くなってきたな」


 氷雪斬はあまり使う機会のないスキルだったが、基本的に炎の属性で攻撃する機会が多いレイだけに、氷属性の攻撃を行うことが出来るというのは、決して悪い話ではない。

 レイもそれを理解しているのか、強化された氷雪斬を発動し、デスサイズの刃を覆う形で生み出された氷に、満足そうに頷くのだった。

【セト】

『水球 Lv.五』『ファイアブレス Lv.四』『ウィンドアロー Lv.四』『王の威圧 Lv.四』『毒の爪 Lv.六』『サイズ変更 Lv.二』『トルネード Lv.四』『アイスアロー Lv.五』『光学迷彩 Lv.六』『衝撃の魔眼 Lv.三』『パワークラッシュ Lv.六』『嗅覚上昇 Lv.五』『バブルブレス Lv.三』『クリスタルブレス Lv.一』『アースアロー Lv.二』『パワーアタック Lv.一』『魔法反射 Lv.一』『アシッドブレス Lv.二』new『翼刃 Lv.二』new『地中潜行 Lv.一』『サンダーブレス Lv.一』『霧 Lv.一』



【デスサイズ】

『腐食 Lv.六』『飛斬 Lv.五』『マジックシールド Lv.一』『パワースラッシュ Lv.五』『風の手 Lv.四』『地形操作 Lv.五』『ペインバースト Lv.四』『ペネトレイト Lv.四』『多連斬 Lv.五』new『氷雪斬 Lv.四』new『飛針 Lv.一』『地中転移斬 Lv.一』


多連斬:一度の攻撃で複数の攻撃が可能となる。レベル二では本来の攻撃の他に二つの斬撃が追加される。レベル三では他に三つ、レベル四では他に四つ、レベル五では他に十の斬撃が放たれる。


アシッドブレス:酸性の液体のブレス。レベル一では触れた植物が半ば溶ける。レベル二では岩もそれなりに溶ける。


氷雪斬:デスサイズに刃が氷で覆われ、斬撃に氷属性のダメージが付加される。また、刃が氷に覆われたことにより、本当に若干ではあるが攻撃の間合いが伸びる。


翼刃:翼の外側部分が刃となる。レベル一でも皮と肉は斬り裂ける。レベル二では肉を斬り裂いて骨を断つ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ザカットが迎えに来てるものだとずっと思ってました。
[一言] 同じ文章が何ヶ所もあります。
[一言] (´・ω・`)んん?前書きと本編が同じになってる……?
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