第五十六話
お待たせしました。五十六話になります。
俺は早速少し離れたところにある一本の木を座標設定し、もとの崖の下まで戻り実験を開始することにした。
その際、間に遮蔽物があったときにどうなるのかを知るため、わざと俺の太ももくらいの太さの小ぶりな木を間に挟んだ。
これで、エネルギー発射後に間に挟まれた木がどうなったかを確認すればいろいろなことが分かるだろう。
エネルギーの発射を友ちゃんにお願いした瞬間、間に挟んだ木が俺の頭の高さで爆ぜた。
どうやらエネルギーは特に指定をしない場合は俺の頭部から発射されるみたいだ。
これが「眼からビーム」という奴だろうか? いや違うか。
間に挟まれた所為で爆ぜた木の様子も気になったが元々の目標にしていた木の状態を今はまず確認しよう。
気持ちの悪い堆積物の上をぐちょぐちょ言わせながら歩いて目標に近づいていくと、狙い通りの位置で爆ぜて煙を上げている木があった。
爆ぜた部分より上はすぐそばに倒れるような形で落ちていて、その周囲には例の気味の悪い瘤のような何かが……ってなんだこりゃ。
散らばった瘤がびくびくと痙攣していた。
煙を上げている木より痙攣している瘤のほうがインパクトが強くてどうしても注意がそちらへ行ってしまう。
気持ち悪かったがもう少し近づいて瘤の様子を確認しようと思ったら、唐突に痙攣していた瘤が走り出して別の木を駆け上がっていってしまった。
これは瘤じゃなくて動物的な何かだ、つまりこの周囲に積もっている堆積物はこいつらの糞なのか。
追いかけてまで確認したくなかったので、爆ぜた木のほうへ無理やり意識を戻すと、倒れた木の周囲に何体かエネルギー波に巻き込まれた瘤が内蔵をぶちまけて死んでいた。
瘤はもう動物で確定だな。
そのとき、煙を上げていた木の周囲の景色がゆらりとゆがんで見えた気がして「おや?」っと思ったら煙を上げていた木を中心にして脛くらいの高さであっという間に何かが周囲へとふわっと広がっていくのが見えた。
それは凄く幻想的な光景で、現在の状況を忘れて不覚にも綺麗だという感想が浮かんだ。
勿論それは俺のほうにも広がってきて、あまりの速さに一瞬反応できなかったが……熱い!?
って、これ燃えてる!
唐突に火あぶりにされて俺はパニックを起こしてしまい、とっさに低いところを目指して走り出した。
特に何か考えがあってそうしたわけではなく、反射的にそうしてしまった感じだ。
もしかしたら無意識で先ほど自分が作った池を目指したのかもしれない。
走り出しても周囲が燃えているという状況は変わらず……いや、変わっていた。
木にしがみついていた瘤達が炎にあぶられた所為なのか発狂したように地面を走り回っている。
その所為で更に地面から引火性のガスが沸きあがって火勢がますます激しくなり、もはや呼吸も満足にできない。
このままでは俺も一緒に焼き殺されそうだ。
パニックを起こした所為で衝動的に炎から逃れようと必死で走っていたが、ふと友ちゃんに領域を作ってもらえばいいんじゃないかと気がついた。
「ナイス! 俺!」
先ほど決めたばかりの合図、水の領域を叫び、炎から隔絶された水の中に全身を浸し一息ついた瞬間、今度は俺を取り囲んでいる水を目指して炎に焼かれて発狂した瘤達が我先に飛び込んできた。
水の領域は外から入ってくるものを問答無用で水に変換する、ただし、受けた圧力は内部に伝わるという性質のものだ。
つまり、大量の瘤に突進された領域は周りから連続して体当たりを受けているような状態になり、中に居る俺はまともに身動きできなくなった。
その状態で廻りには領域から発生した水がどんどん溢れ出して行き、溢れた水は周囲の炎にあぶられて水蒸気へと変換されていく。
それだけならまだ良かったのだが、俺は自分の呼吸用に顔の周囲に空気を発生させている。
そこで発生した空気は当然、上方向に抜けてその結果無尽蔵の空気を周囲の炎へと供給する形になった。
つまり、可燃性ガスが充満しているところに火をつけて、大量の空気(支燃性ガス)を送り込む形になったわけだ。 ついでに大量の水蒸気も込みで。
気がついたときには俺の周囲にものすごい勢いの炎の竜巻が生まれていて、どのタイミングでそれが起こったのかはわからないが爆発がおきた。
爆発の中心=俺なわけで……領域は圧力や熱線を防いだりはしない仕様なので一瞬で皮膚が炭になり、俺の意識はそこまでで途切れた。
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