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異世界トリップ俺tureeee!!!  作者: ランド・クッカー
死んで始まる俺tureeee!!!
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第五十四話

大変お待たせしております。

放り投げる予定はありませんが時間は掛かるかもしれませんのでご容赦ください。


 「うわ、うわああああああああああ!!!」


 誰かの叫び声で目が覚めた。

 慌てて辺りを見渡してみれば叫び声はすぐ側から聞こえてくる。


 というか、叫んでいたのは自分だった。


 「はあ、はあ……」


 何か恐ろしい夢を見ていたようだ。

 激しい動悸がして寒いわけでもないのに体もガタガタ震えている。


 夢……そうだ。


 夢の中で誰かと凄く大事で恐ろしい話をしたような気がする。

 自分の生き死ににかかわってくるような非常に大事な内容だったように思うのだがどうしても思い出せない。

 寝ている間にかいていた粘りつくような汗を手のひらでぬぐい、うなりながら首を捻っても、時間が経てば経つほど夢の輪郭は解けてしまう。

 その事に焦燥感を感じるが自分ではどうしようもない。


 もやもやするが思い出せなかった夢の事は諦めて違う事へと意識を向ける事にした。

 そこで、ふと思ったのだが、俺は元々こんなふうに簡単に意識の切替が出来る人間だっただろうか?

 浚われてきて色々な経験をした所為で内面的な変化がおきたのかもしれないが、何となくこの変化は再構成が原因のような気がする。

 まあ、気がするというだけで根拠の提示は出来ないわけだが。


 そんなことを考えていたら起き抜けに感じていた恐怖感も薄れ、段々落ち着いてきた。


 さて、起きたんだし、何時までも思い出せない夢の事にこだわっても仕方ないか。

 肘を突いて寝そべっていた体を起こす。

 ここは俺が作ってしまった小さな池のほとり。

 まだ出来たばかりなので魚も居ないし、水質は底の方に堆積した泥まで見えるほど澄んでいる。


 周囲を見渡してみると、この場所は両側を山で挟まれた三角形の隙間のような地形になっているようで、たまたまその谷部分の地面から俺は飛び出したようだ。

 斜面には木が生えていてその先がどうなっているのかはここからは分からない。

 三角形の先端部分は山と山が接して崖のようになっているのが見える。

 底辺部分に関しては……黒い壁のように見えるがここからは良く分からない。 

 取り合えず、日はまだ高いのでそれほど長い時間寝ていたわけではないようだ。


 ただ、起きたばかりの所為かなんだか凄く体がだるい。

 と思ったら腹がなった。


 「……腹減った……」


 手を腹にあててそうつぶやく。

 その時、視界に入った自分の手や腹の異常に気が付いた。


 あれ? なんだこれ?


 意識して全身を見れば、手や腹だけではなく色々な箇所に痣、というか、うっすらと黄色いしみ……これは黄疸か? いや、どちらかといえば内出血なんかをするとなるような色の変化が発生している。

 皮膚の上から触ってみても色の変わった箇所に痛み等はないのだが、何が原因でこうなったのか凄く気になる。


 今日一日の自分の行動を少し思い出してみよう。

 最初、山の中で足を踏み外して川に落ちて……そのまま川の中を転げまわって流されて……人殺しの村で追い掛け回されて……地面に沈んで……土を水に変えたら凄い勢いで空中に放り出された。


 あー、これは普通に全身打撲とか体中に内出血くらい起こっていても不思議じゃないな。

 じゃあ、いきなり寝てしまったこともこの全身のだるさもそれが原因か?


 正解が本当にそれなのかはわからないが、何となく納得はできた。

 とりあえず、今は空腹をどうにかしよう。

 そう考えた俺は立ち上がろうとしたが、意識した所為か今頃になって全身が痛くなってきた。頭痛までする。

 それでも無理やり体を動かし、よろよろと立ち上がると池の側を離れ、山の中へと足を向ける。


 しかし、数歩歩くと股間がぶらぶらしているのが気になって落ち着かない。

 そういえば、またもや全裸である。

 何かあるたびに全裸になってしまうのは何かの呪いなんだろうか?

 俺自身もいい加減全裸の状態に慣れてきてしまっていて、それが又切ない。


 とりあえず、寝る前に友ちゃんに出してもらっていた布の内、二枚を端っこで結んで腰に巻く。

 まあ、布を巻いたところでぶらぶら感が無くなる訳ではないのだが、局部が隠せているというだけでも精神的にかなりマシだ。

 その後、更に布を追加で出してもらい、山に入る為の靴を作るが、ここのところ回数をこなした所為か段々靴を作るのにも慣れてきた。

 というのも、作った靴を使い捨てにすると割り切って着脱の事は考えずに作るなら、ある程度の形さえ整えておけば後はセルロースもどきを使用しての成形が可能になったので、履き心地を追求しないのならばかなり簡単に作ることが出来るからだ。

 ただ、内張りが手触りの悪い布そのものなので、履いているうちに皮膚と擦れた場所が靴擦れになってしまうのがキツイ。


 靴を作っているときに、ついでに上半身も同じように布をセルロースもどきで繋いで覆ってしまおうかと思い試してみたら、こちらはどうにも巧くできず肩の部分で動きが邪魔されたり呼吸をするたびに圧迫感を感じたりと散々だったので今回も上半身の装備は腕を防御するガントレット的な物だけで我慢する事にした。


 ガントレットは前回の失敗を生かして少し内部空間に余裕を持たせて作ったので前よりはマシになった気がする。

 装着感を確かめる為、いろいろな方向にガントレットを装着した腕を動かしてみる。

 すると、隙間を作った所為か今度はガントレットが腕を動かすたびにずれてしまい、よろしくない。

 そのままでは使えないと判断し、一旦分解して内側に布を軽く巻き、その上にもう一枚布を巻いて、そちらを硬質化させたら今度は良い感じになった。


 靴とガントレットに腰巻という、ビジュアル的にはどうなんだろう? と思わないでもない状態だが、その格好のまま山に入る。


 この段階になって初めて気が付いたが、ここの山は今まで居たところと大分雰囲気が違い、下草が無く、かわりに足元は粒子の粗い黒い土でびっしりと隙間無く覆われていた。

 生えている樹木も時期的なものか全て枯れていて葉をつけているものは無く寒々しい雰囲気だ。


 足元に転がる粒粒つぶつぶを少し手に取って観察してみると、黒い粒粒はまるで何かの糞のように感じる。

 大きさ的には山羊の糞とかウサギの糞が近いだろうか?

 だが、これが糞だとすればそれを出した何者かが居るはずだが、人間におびえて隠れているのか周囲には生き物が居る様子はない。


 ここに来てから草が黒いことに慣れてしまっていた所為で、山の中が真っ黒に見えてもそれが地面の色なのか、木の影なのか、繁茂している草が黒い所為なのか全然気にしていなかった。

 踏み込んでみると少し足が沈んだ感触とともに足元から何かが腐ったような酸っぱいにおいと長い間洗ってない犬のような不快な臭さが立ち上る。


 やっぱりこれは何らかの動物の糞なのだろう。

 靴を通して伝わってくる足元の感触は油断すると滑って転んでしまいそうな不安定な感じだ。

 それに、踏み潰すたびにもわっと湧き上がるこの酷い匂い、一寸嗅いだだけで鼻の粘膜が痛くなり涙が勝手に出てくる。

 ただ、暫く歩いているうちに匂いの許容限度を超えてしまったのか匂いを感じなくなってしまった。


 吐きそうな不快感を我慢して枯れ木の立ち並ぶ斜面を登っていくと、途中から周囲の風景が変わってきた。

 枯れ木ばかりだった斜面に不思議な樹木が点在するようになってきた。

 それは不思議な樹木で、枝葉が無く幹だけの木にバスケットボール程もある毛の生えた瘤がぼこぼことくっついている。


 木の表面は下のほうから何かに抉られたようにみえる跡が連続していて殆どの樹皮部分が無くなっている様に見える。

 見た目にかなり気味が悪いけど、この木は何の木だ?

 このビッシリと毛の生えた瘤はもしかするとこの木の種子か?


 キウイフルーツがバスケットボールサイズになって木の幹から生えているイメージを想像すれば俺の見ているものが伝わると思う。

 たまに離れた場所からボトッと重量感のある物が落下したような音が聞こえるのでもしかすると瘤の部分が熟れて地面に落ちているのかもしれない。


 そういえばチョコレートの原料であるカカオの木は幹から直接実がなるんだっけ?

 後、何の音かは分からないがここに登ってきてから絶え間なくカシカシとかシャリシャリとか何かを擦り合わせるような音がずっと聞こえている。

 最初は木の葉が風で揺れて音を出しているのかとも思ったが、見える範囲で葉っぱの残っている木はない。


 それと、気のせいかもしれないが音は瘤から聞こえてきているように感じる。

 見たこともない木だし、もしかするとこういう音がするのが普通なのか?

 まあ、木の幹に耳を押し付ければ内部を通る水の音が聞こえるというし、似たような仕組みで瘤の中を水が通っている音が聞こえているのかもしれない。


 気味が悪い事もあり、瘤に近づいてまで確かめる気にはならなかったので一旦瘤の事は無視して他に食べられそうな物を探す事にした。

 チラッと瘤が種子だったら椰子の実のように食べられるかもしれないとも思ったが、それは他に食べられそうな物が見つからなかったときの最後の手段にしたい。


 暫く「ぐじゅ」とか「ぐじょ」とかそんな感触の地面を踏みしめながら斜面を登っていると、急に視界が暗くなり、何かの影に入ったのかと頭上を見上げれば、いつの間にか斜面の端にたどり着いていたようだ。


 斜面は聳え立つ崖で行く手をふさがれていた。


 崖はかなりのオーバーハングで、ひさしのように突き出た岩壁はとてもじゃないが普通の方法で登る事は無理な気がする。

 高い位置まで登った事で反対側の斜面の様子も見ることが出来たが、ここと同じように登れないような崖になっており、今自分が居る場所は一度入ると山側からは脱出不可能な一方通行の地形になっていたようだ。


 この空間は二等辺三角形のような形の切り立った崖に左右を挟まれているが、普通に考えれば底辺の部分から脱出できるのだろう。と思い今度は底辺側を観察してみる。


 すると……明らかな人工物。

 遠くに見える底辺側は、丸太を立てた壁? のような物でふさがれていた。

 天辺部分はギザギザで……あれ? この形状って……。

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