表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界トリップ俺tureeee!!!  作者: ランド・クッカー
死んで始まる俺tureeee!!!
45/57

第四十五話


 発見した布は、編みこみが手編みなのか不規則に編目がばらついていていかにも手作りといった風情で、あまり手触りがよさそうには見えない。

 ここに浚われてくる前の俺なら山でこんな布を見つけたとしても見向きもしなかっただろう。

 材質は不明、光沢は無いので綿や麻のような素材だろうか? 色は黒、幅が30cm程度で長さは……ここからでは薮に埋もれている部分が分からないので不明。


 幻……じゃないよな?


 あ! これは……あれか? 視覚トリックで一見いっけん布に見えるけど実は角度を変えてみれば全然違う何か、だとか?


 これまで散々良い事があるたび土壇場でひっくり返されてきた俺は目の前にぶら下がっている布を素直に受け入れる事が出来なかった。

 だって話が巧すぎるだろう?

 欲しくてたまらなかったものがこんなに簡単に手に入るなんて今までの俺の不運さから考えてもありえないレベルだ。

 抱えていた収穫物を地面に下ろし、そばに落ちていた枝を代わりに拾って片手に持ち、恐る恐る薮に近づきそっと枝の先端で布を引っ掛けて持ち上げてみる。

 ここからは見えない部分が薮に絡まっているのか持ち上げられた途中から抵抗して手に持った枝が折れそうになった。


 「布、だ……」


 引っ張ってみた感触と言い、目に見える範囲での状態といい間違いなくこれは布だ!!

 ついさっきまで疑っていた俺だったが、状況証拠が揃った事で流石に疑う心よりも興奮の方が上回り、思わず目の前の布に手を伸ばして直接掴み上げてしまった。

 薮から布を引っ張り抜くのではなく、引っかかっていた薮の方を手で掻き分けて丁寧に布を回収し、手元で広げて確認してみたところその長さは60cmというところだろうか?

 野ざらしだったはずなので汚れているかとも思ったが、手にとって見るとそれほど汚れていなかったので、つい最近誰かがこの薮を通り抜ける際に引っ掛けたことに気づかず落としたのかもしれない。

 ついでに匂いもかいでみたが汗臭くも無い、一体どういった用途でこの布が使われていたのか良く分からないな。


 でも、今はそんな事よりも……。


 「念願の布! 布を、手に入れたぞぉおおぉー!!」


 思わず馬鹿みたいに叫んでしまったがこれは仕方ないよな?

 苦しい経験を味わっていない俺の中のもう一人の俺は「何をそんなに喜んでいるのか分からない」みたいな事を言ってくるが、俺にとってはここ最近、これほど嬉しい事は無かったので今は相手にしない。

 俺は早速友ちゃんに領域の展開をお願いし、布を折りたたんで真ん中にさっきの枝を入れてぶら下げる形で領域内に布全体を入れると複製を依頼した。


 何でこんな面倒なまねをするかというと、手に持った状態で複製を依頼するとまず間違いなく布の複製と一緒に俺の手までがおまけで付いてくると思ったからだ。

 早速一枚布を出してもらったら案の定領域内に差し込まれた枝の一部まで完璧に複製されていた。


 ふっ、流石に俺も友ちゃんの行動パターンを大分学習してきたぜ。

 友ちゃんマスターと呼ばれる日も近いな。

 俺がこの調子で巧く友ちゃんに指示を出せるようにさえなれば、これからの生活は大変快適になるに違いない。多分。


 そして俺はオリジナルの布を元々引っかかっていた薮へ、最初に有った状態になるべく似せて引っ掛けなおした。


 え? 何でそんな面倒な事をするのかって?


 そりゃ、明らかに誰かが作った布だからな、無くしたのに気が付いた何者かが探している可能性があるだろう?

 俺が持ち去った所為で見つけられなくなって何時までもうろうろ探されるのは都合が悪いじゃないか。


 そんな事を考えながら複製により手に入った布を腰に巻こうと……思ったら一枚では長さが足りなかったので友ちゃんにもう一枚複製してもらって布同士を端っこで結ぶ。

 そのまま腰に巻いて腰骨の位置で引っかかる程度に長さを調整し、反対側も同じように結べば出来上がり。

 これで「風呂上りのおっさんが腰にタオルを巻いている」状態まで一気に見た目がレベルアップした!


 「裸、卒業ーー!!」


 誰に宣言したのか自分でも分からないが、変なテンションになってしまい拳を突き上げて又叫んでしまった。

 後は寝床に戻ってから何枚か布を複製してもらって簡単な履物と服と……色々作れそうだな。楽しみだ。

 本当は鍋の材料を手に入れておきたかったが、どうしても我慢できないので先に布を楽しませてもらおう。

 あ、そうだ! 寝床も布を沢山出して作れば良いじゃないか。

 これで気味の悪い髪の毛の山ともお別れだ! やった!


 取り合えず、さっき足元に仮置きした食べられそうな木の実とスカンポ(イタドリの事)を抱え直して寝床へと帰ることにする。

 帰り道は空腹なのに最高の気分で足も軽かった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 住処に戻った俺は早速、大岩の下の仮の住居を隠す格子を一旦取り外し、今まで寝床の保温材代わりに敷き詰めていた髪の毛の山を処分する事にした。

 こういうときにほうきでもあれば良かったのだが、そんな便利な物はここには無いので、大雑把に手で掻き集めては山の斜面の腐葉土が堆積している場所へと持って行き捨てる、を繰り返し……って、あ、そうか! ……あほだな俺。

 ちょっと思いついたので近くに生えていた木の枝で先が細かく枝分かれしている物を何本か折り、それを根元でまとめて簡単な箒を作り、残りは一気に掃除した。


 準備はこれで完了なので、一旦水を出してもらって汚れてしまった手を洗う。

 その後は早速友ちゃんに布を……何枚必要かわからなかったので取り合えず100枚複製してもらい、それを敷布団代わりというか、この場合は床になるんだろうか? 大岩の下に綺麗に隙間無く並べて、並べて……って並べていて気が付いたが、並べて置いただけでは固定されているわけではないし、俺が上でゴロゴロすればめくれたり動いたりするだろう。あんまり宜しくないな。


 うーん、針と糸が有れば布同士を繋いで一枚の大きなマットを作れるんだが……。


 普通、シングルサイズの敷布団の大きさというと高さ200cm×幅120cmって所だろうか?

 手元にある布を繋いでそいつを作るとすればマットを一枚作るのに最低でも布が14枚は必要か。

 ただし、手元にある布はぺらぺらで厚みがほとんど無いので一枚敷いただけでは地面に直接寝転がるのと大差が無い。


 ということは、何枚も重ねないと快適さは得られないだろう。

 とすれば最低でも敷布団用に5セットは欲しいな。つまりは布換算で70枚。

 掛け布団用にも何枚かほしいので取り合えず、今回作ってもらった100枚全てをどうにかして7セットの敷布団サイズのマットとして繋いでしまいたい。


 そうなると針と糸をどうするのか? って話だが、糸は簡単だ。目の前の布を解してしまえば良い。

 針は……松の木と同じような葉をつける樹木は無いだろうか? それを探して、もし見つけたらその葉を鉄化すれば解決するだろう。

 見つからない場合は形状的に尖ったものなら何でもいけそうな気がするのでそいつで代用するか。


 おっと、つい100枚をどう活用するかばかり考えていたが、数にこだわる必要は無かったよな。

 不足したらその都度複製すればいいんだし、考えてみれば一枚大きめのマットが出来上がった時点でそれを更に複製すれば手間もそれほど掛から無いことに気が付いた。

 ついでに、そうやって出来上がった大きなマットを二つ折りにして折り目の真ん中に頭を通す穴を開ければそれだけで貫頭衣もつくれる。


 ふぅ、勢いで100枚も用意してもらったが、マットを作るのに必要なのは14枚、失敗を考慮してもその倍もあれば十分だろう。


 まあ、余った布の使い道に関してならいくらでも思いつく。

 例えば今までは葉っぱで済ませていたトイレットペーパーの代わりに使い捨てにしてもいいし、勿論手ぬぐいとして使っても良い。

 それだけじゃなく、細かく裂けば紐にもなるし、包帯のような使い方も可能だろう。

 他にも色々活用法はあると思うが、それはその時又考えてみよう。

 靴が出来るまでは布を足に巻いておくだけでも足の裏にかかる負担は全然違うはずだ。



 ふと気が付けば、いつの間にか俺の中のもう一人の俺の声が聞こえなくなっている。


 ――視界右下の数値は2を示していた。


誤字脱字、文法表現での間違い等ありましたらお知らせいただけるとありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ