表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界トリップ俺tureeee!!!  作者: ランド・クッカー
異世界トリップ俺tureeee!!!
3/57

第三話

 これは、もしかすると、洗脳して兵士を作ると言う想像は当たっているのかもしれない。


 洗脳と言うプロセスは無かったが、相手の言いなりで簡単に生き物を殺してしまった。


 これから何度もこれを繰り返せば、そのうち相手が人でも躊躇無く殺せるようになるんじゃないか?


 そんなことを考えながら、ネズミを殺した際の凄まじい多幸感の余韻で暫くボーっとしていると、また視界が何かのスクリーンでも見ているような状態に戻った。


 そして、気がついたら俺に首輪をつけた兵士がいつの間にか傍まで来ていた。


 「******!************」


 最初のハズレを掴まされた! と言いたげだった視線とは打って変わって上機嫌で何か言葉をかけてくる。


 ……何いってんだかわかんねーよ。


 まあ、多分あれだ、良くやったとかそういう事を言ってるんだろう。


 すぐ側で死んでいるのが自分が生き残るために殺したネズミということもあり、何かを殺して褒められるというのはあまり良い気分ではない。


 いつの間にかすっかり上がりきった檻の中、ぐったりと横たわるネズミはもうピクリとも動かない。

 このあとこのネズミはどうなるのかと思い視線をやっていたら、何を勘違いしたのか「与える」と指示が来た。


 え? どういうこと? ネズミの死体をもらってどうしろと?


 指示に逆らうと痛い思いをするのがわかっているので右手に掴んでいた折れてしまった骨はその場に捨てて、左手に持っていたまだ血にぬれている先の尖った骨を右手に持ち替え、空いた左手でネズミをもっていくことにする。


 とはいってもネズミは頭が砕けて大変な事になっているので後ろ足を掴まえてぶら下げる形で持つ。


 ……まさかとは思うけどこれを食べさせるつもりで「与える」とか伝えてきたわけじゃないよな?


 まるでテレパシーのように伝わってくる指示だが、厳密に行動が制限されるわけではなく、ある程度は受け取った側で解釈を加える事が出来た。


 まあ、送られてくる指示が単純すぎるのである程度は受け取った側が判断しないと行動を起こせないから当然なんだろう。


 勿論、まったく違う指示へと曲解出来るほどの自由度は無かったが。


 なんというか、ゲームの中の登場キャラクターがコマンド方式で操られるのはこんな感じなんだろうか?


 そう考えるなら今の俺の立場は飼い主に操られるペット1とかなのか? と無意味な思考を繰り広げる。


 くだらないことを考えてネズミを持ったまま暫くぼけーっと立っていたら、兵士が「ついて来い」と指示を送ってきた。


 このコマンドを会話の代わりに使えられれば便利なんだろうが、どうもそう都合の良い話でも無いようで、単純な指示しか送ってこれない上に一方通行でこちらからの問いかけ等は一切伝わらないようだ。


 実は、さっきから兵士に向かって一生懸命心の中で突っ込みを入れたり繰り返し質問をして見たりしたが反応が一切無いので、まあ間違いないだろう。


 兵士についていく形で部屋を出て歩く。

 現状、会話出来る相手は居ないし、傍に居る兵士の話している言葉もわからない。

 そんな自分に出来ることは何時か脱出する手がかりを手に入れるために周りを良く観察することと考えることくらいしかない。


 そういえば、視界中央上の表示がゼロから数字の1のような形へと変化していた。

 とりあえずこの表示は数値だと仮定しておこう。

 変化したタイミングは多分、ネズミを倒した時だと思う。


 思う、というのはその時感情が高ぶりすぎていたので観察している余裕が無かった為だ。


 しかし、この数字の変化が何を意味しているのかは分からない。

 ゲーム的な解釈なら経験値やレベルが増加したとかが有りそうだが、まさかそんな馬鹿げた話では無いだろう。


 単純に殺傷数をカウントするようになっているのだろうか?

 大昔、キリスト教弾圧で信者を見分けるために踏み絵をさせていたように、俺に生き物を殺させることで何らかの選抜試験を行ったということだろうか?


 わからない事があっても誰にも聞けないし、調べることも出来ない。凄く不自由だ。


 本来ならストレスでイライラしそうな場面だが、兵士の指示に従い付いて行っているので気分は高揚しっぱなし。これではその内精神を病みそうだ。

 

 歩き続けているうちに今まで居た建物を出てしまった。

 日差しは弱く、もうすぐ日没のようだ。

 ようやく出られた開放感からその場で深呼吸を行う。


 見れば今まで居た建物の周囲は大人の胴回り位ある太い丸太の柵(隙間が無いのでこの場合は塀か?)で囲まれていた。


 というか、柵はこの建物を囲っているのではなく、もっと大きな何かを囲っている一部がこの建物に隣接しているだけのようだ。


 柵の高さは正確にはわからないが見上げた感じ10m以上有りそうだ。

 一番上は尖っているようで、見上げれば柵の上端のシルエットがぎざぎざに見える。


 なんと言えば良いんだろう? 鉛筆を書く側を上にしてずらっと並べたような感じとでも言えばいいだろうか。凄く不安定な構造物に見える。

 材質の強度も気になるが、あまりに高い木造建築物を見上げる形になっているのでこちらに倒れてきそうで怖い。大丈夫なのかこれ?


 びくびくしながら兵士に従う形で柵に沿って暫く歩く。

 緊張の所為か、手に持ったネズミが汗ですべり何度も掴みなおす。

 途中、自分達と同じような組み合わせのグループと何度かすれ違った。


 連れられているのは何れも裸なうえ、だらしなく緩んだ恍惚とした表情をしているので自分と同じ状況だと推測できる。


 ここは、町と言うよりは兵士の駐留している砦のような場所らしい、鎧姿の兵士ばかりで全然一般人の姿を見かけない。


 そうこうしている内に目的地へと到着したようだ。

 そこは最初に居た建物より小さく、見た目もほとんど廃屋か物置のような窓の無いぼろい小屋で、その小屋の前に兵士が立ち止まった。


 そして新しい指示は「入れ」と「休め」だった。

 日も沈みそうだし、どうやら今日はこの小屋で泊まることになりそうだ。


 小屋の中に何があるのかは分からないが、喉が渇いて仕方が無いので水と食事、後、出来ればベッドくらいは用意されていることを祈ろう。


 兵士にとって、命令したことは絶対に守られる自信がある様子で、俺が小屋に入るのを見届ける事もなく、それどころか鍵もかけずに立ち去ってしまった。


 願っても無いチャンスだったので小屋に入らず周囲を探索しようとしたら、命令違反と判断されたみたいで小屋から離れようとすればするほど強烈な不安感と痛みのダブルパンチに襲われ探索は断念することになった。


 探索できなかったことにがっかりしながら壊れそうなドアを開け……ってこれ蝶番も無いしドアと言うより板を立てかけてるだけじゃないか。


 最初に見たときもぼろい小屋だと思ったが、これは想像以上にぼろい小屋だ。


 中に入ると、ますます落ち込んだ。


 一応建物の体裁はとっているが、この小屋は地面に四角く板を立てその上を塞いだだけの作りで、小屋と言うよりもはや単なる囲いといった方がいいかもしれない出来だった。


 明かりは俺が今あけたドア(というかただの板)から差し込んでいるものと、後は壁同士がうまく繋がっていないようで四隅から少し差し込んでいる。

 だが、日も落ちそうな様子だし、すぐ真っ暗になってしまうだろう。


 まあ、雨風が防げるだけマシかと前向きに考えることにした。

 小屋の中のむき出しの地面に最初の部屋で見たお仲間達(だと思うが、顔を覚えてるわけでも無いので確信は無い)の裸な集団が座り込んだり横になったりとくつろいでいた。


 多分、俺と同じように「休め」という指示に従っているのだろう。その表情はこんなぼろ小屋の中に押し込められているのに非常に嬉しそうで凄く気味が悪い。


 小屋の中には怪我をして血を流している奴も結構いるのに、それでもニヤニヤと気持ちよさそうな顔をしていやがる。


 頭で理屈は理解できるが視覚から入ってくる情報としては納得できない。


 まるで自分がドラッグパーティーの会場にでも紛れ込んでしまったような錯覚すら覚える。

 まあ、ドラッグパーティー自体経験が無いので実際は違うかもしれないが。


 そういえば不思議なことに最初の部屋に居た時より人数が減っているようだが、もしかするとまださっきの俺のようにどこかで戦わされている奴がいるのかもしれないし、ここ以外にもこういった小屋があるのかもしれない、あまり考えても仕方が無いだろう。


 最初に小屋に入った段階で既に諦めてはいたが、一応念のため水と食事、寝る場所位は無いか入り口の板を戻す前にぼんやりと見える小屋の中を見て廻る。


 部屋の入り口の脇に瓶が置いてあり、そこに水が貯めてあった。


 ただし、飲みたいと思うような綺麗な状態の水ではなく、ゴミの浮かぶ濁った汚水にしか見えない。

 瓶にも何か色々とこびりついている。汚い。


 食事は……やっぱりというか、がっかりというか用意されていないようだ。

 水がこの状態だということは食事が仮に用意されていたとしても食えたものではなかったかもしれないが。


 寝床は当然だがそんなものは用意されているはずもなく、地面に直接、と言うことになりそうだ。

 それと、さっきから、部屋の中のやつらが俺の右手に持ったネズミの死骸を凝視している。

 中には涎をたらしている奴まで居る。まさか食いたいのか?


 あんまり信じたくは無いが、多分こいつらにとってはこれも普通に食料なんだろう。


 本当は皮をはいでなめしてそれで股間だけでも隠したかったが、俺が知ってるのは昔、漫画で見た動物の皮をはいでその皮を噛んでなめす方法だけだった。

 皮を剥ごうにもナイフもないし、なにより俺はネズミの死体にそれを実行出来そうに無い。


 ひとつ大きな溜息をつき、集団の真ん中くらいにネズミを投げ込んでみた。


 予想通り、ネズミの奪い合いが始まり、千切り取った獲物をその場でいきなり口に放り込んで居る。うげぇ。


 その時、観察していてわかったが、この集団には動物的な行動を取るものとそうで無いものが混じっているようだ。


 今ネズミに飛びつかなかった数名の顔とその居場所を覚えておこうと思い、良く観察することにした。


 もしかすると、コミュニケーションが成立するかもしれない。


 そして、奪い合うものがなくなり静かになった小屋の入り口を元通り板でふさぎ、先ほど顔を覚えた数名と接触するため暗い小屋の中を手探りで掻き分けながら歩いた。



誤字脱字、文法表現での間違い等ありましたらお知らせいただけるとありがたいです。


誤字修正

空いた右手でネズミ を 空いた左手でネズミ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ