第一話
プロローグ部分が余りに短すぎたため200文字制限に引っかかり急遽第一話に間借りしてます。
***プロローグ***
「……」
「……して」
「***をかえして!」
「いたい、いたい、いたい」
「どこにあるの?」
「かえして!!!!」
「……」
「み、つ、け、た」
「……こんなところにあった」
「ここにも!!」
「かえせっ!!!」
***プロローグ終了***
いてっ! 誰だ今俺の手を踏んだ奴……。
う……、背中と手が痛い……。
それに周りがうるさいしなんだか蒸し暑い。
左の太ももの辺りににぺたっと生暖かくて気持ちの悪い何かが押し当てられている感触もあって最悪だ。
左手で気持ちの悪いそれを払い飛ばし、普段枕元においてある時計を探して右手を動かすが、またもや先ほどとよく似た生暖かくて気持ち悪い手触りのなにかに当たったので慌てて手を戻す。
うげ、さっきからなんだこれ?
普段使っている枕もとの時計が見つからないので壁にかけてある時計を見ようと、全身に不快感を感じながらも無理やりまぶたを開けた。
まぶしい……。
ふぁ~あ。
大あくびと一緒に涙が出る。
蛍光灯つけっぱなしで寝ちまったか?
頭をボリボリとかきながら寝すぎたときのようなぼんやりとした状態でまだはっきりと見えない目をまぶたの上から擦り、そのまま両手を床について無理やり身体を起こしながらまたもや大あくびをしたら今度は全身がボキボキ鳴った。
背中に砂か何かが付いてる感じがして不快だったので右手で何度か払う。
寝巻きの感触が無く背中に右手が直に触れた。
あれ? 何で寝巻き着て無いんだ俺?
それに何時もなら布団で寝ているはずなのに布団の手触りは何処にも無い。
それどころか今気付いたが寝巻きの上下どころか下着を着ている感触もない。
あきらかに状況がおかしい。
とりあえず右手で股間を隠し、状況の把握に努める。
「……っ! ……っっ!!」
その時、近くから怒っているような人の声が聞こえて来た。
途端に背筋が冷えた。
混乱した頭で、まさか会社で勤務中に寝てしまったなんて落ちじゃないだろうな?
いやでも服着て無いってどんな状況だ? と思いながら慌てて意識をしっかり取り戻そうと頭を振る。
――だが変だ。
ここが会社なら事務所の床はOAフロアだし、もし廊下ならリノリウムのはずだ。
だが、今まで横になっていた床の手触りは、ざらざらとしたまるでアスファルトか打ちっぱなしのコンクリートのような感触だった。
もし家で寝たなら当然敷布団があるはずだし、そうでなくとも我が家は絨毯か畳が全室にあるからこんなざらざらした床のはずが無い。
まさか出先で交通事故にでもあって今まで道路で倒れていたのか? それともここは病院か救急車の中?
はっきりしない頭でそこまで考えてようやく見えるようになった視界から周囲の状態を確認しようとしたら肌色しか見えなかった。
は? え?
自分の裸だけじゃない、周り中肌色とちらほら見えるのは頭髪の黒。つまり周り中裸だ。
さっきから何度か感じている不快感の正体、ぺたっとした気持ちの悪い何かは同じように転がっていた隣の男の手が自分の太ももの上に置かれていたためのものだった。
おっさんはまだ目を覚ましていないのか横になったままだ。
おっさんの外見は……髭はぼーぼーで髪なんかいつから切って無いのかわからないくらいぐちゃぐちゃだ。しかも毛深い。
ただ、そのわりに身体の方は汚れとか全然無い。
どんな生活してきたんだこのおっさん? プロニート? まあ、今はそんな事どうでもいいか。
左手を支えにして上半身を起こした状態で暫く呆然としていた俺は床がざらついている所為で手が痛くなって来たのでひとまず胡坐をかいて冷静に考えてみることにした。
……目が覚めたら裸に剥かれて大勢の裸の人間と一緒に広い部屋に押し込まれていた。
なんだこの状況は?
隣のおっさんの裸を視界に入れないようにしながら、俺は今ウホッな夢でも見てるのか? まさかそんな趣味は無いぞ。いや無いはずだ……と黙考する。
どうやら背中に当たる床のざらざらとした感触と誰かに踏まれた右手首が痛くて目が覚めたようだ。
大規模な誘拐事件にでも巻き込まれたのか? しかしこれは……本当に現実なのか?
ほっぺたを抓ると痛みが現実だと教えてくれた。
明るさが気になって天井を見てみたが、今自分が居る部屋はそれなりに明るいが蛍光灯等の光源は見えない。
それに記憶の中にある会社の事務所にこんな内装の部屋は無い。
光源は間接照明なんだろうか?
それと広さだけではなくこの部屋は天井も高い。
普通事務所の天井は蛍光灯の交換を考慮してせいぜい2.5m~3m程度の高さになっている。
だが、ここはどういった用途なのか馬鹿みたいに天井が高い。
多分7m近くあるんじゃ無いだろうか? 掃除が大変そうだと意味の無い感想が浮かぶ。
自分の居る場所が把握できなかったので窓の外を見ようと視線を降ろし壁際を見ると、周囲を囲むように整列している完全武装の殺気立った兵士達がこちらを監視して居た。
……兵士?
コスプレ? なんだこいつら? テロリスト(笑)なのか?
中世物の映画に出てくるエキストラのような鎧を着て、剥き身の刃物をぶら下げた兵士達が四方の壁際にずらっと並んで俺達を野獣を見るような目つきでにらみつけている。
被っているヘルメットの所為で目元以外は見えないので、どんな顔つきをしているのかはっきりとはわからないがその目つきを見ればこちらに好意を持っていないことくらいはわかる。
あれは、なんだろう? 嫌悪感? 蔑み? 自分より下の存在を見ている目つきだ。
さっぱり状況がわからない。ここは笑うところなのか? やっぱり夢なのか?
俺と同じように目が覚めたやつらの中で、やはり似たような疑問を感じたのだろう。
数人の男が立ち上がって周囲の兵士を睨み付けたり叫んだりしている。
俺以外の裸の人間は不思議な事にどいつもなぜか物凄く毛深い。
叫んでいる声は外国語なのか、それともなまりが酷いのか何を言っているのかわからない。
見た感じは黒髪黒目の日本人なので外国語ではなく、なまりが酷いのだろうか?
その声に刺激されたのか裸の人間たちはほとんどが目を覚ましたようだ。
それでも見渡すと何人かはまだ意識を失っているのか眠っているのか横になったままうなされていた。
訳がわからない。
その時、兵士たちの中から一人どうみても日本人には見えない顔立ちで(他の兵士と同じで目元しか見えないが、見慣れたぼんやりとした日本人顔ではなく、はっきりとした彫りの深い目元)装備的にも豪華な鎧を着た派手な見た目の、多分指揮官らしき人物(鎧の形状や体型からして女性)が右手に鞘に入ったままの剣をぶら下げて俺達の方へ近づき大きな声でこういった。
「*********!*******************!」
は? 何でいきなり怒鳴ってるんだ? 既知外? というか意味が分からないので日本語でお願いします。
思わず誰か翻訳してくれないかな? と周囲を見回してしまったがそもそも知った顔など一人も見えないし日本語で喋っている人間も今のところ見かけない。
というか会話の内容よりもまず先になんで自分が裸にされてるのかそっちを聞きたい。
そこに先ほど立ち上がって兵士に声を張り上げていた男の中の一人が、指揮官(?)の女に向かって大声を上げながら右手を振り上げて近づいていく。
「***!」
あと少しで男の右手が届きそうな位置まで近づいた時、女が大きく叫びその右手が霞んだ。
と、思ったら近づいていた男は鞘に入った剣で頭を思いっきり殴られ吹っ飛んだ。
殴られた箇所はぱっくりと割れ血が噴き出ている。
相当痛いのか男はうめきながら殴られた箇所を手で押さえてうずくまっている。
こいつらヤバイ。
ごくり……思わずつばを飲み込んでしまった。
け、警察は何をやっているんだ!
ここで犯罪が行われているぞ! 今すぐ助けに来いよ!
心の中で警察を呼ぶ。しかし、そんな事で警察が現れるはずも無い。
――この日から俺達にとっての地獄が始まった。
誤字脱字、文法表現での間違い等ありましたらお知らせいただけるとありがたいです。