王女様の憂鬱(人物紹介)
人物紹介を兼ねた王女様の独白です。
皆様はじめまして。
わたくし、グラティティス王国第一王女のエトワール・エスポワール・グラーテスと申します。
え、グラティティス王国をご存じない?
我が国は西の大国ですが……世界は広いものですから、仕方ありませんわね。
では少々長くなりますが、どうぞお付き合い下さいませ。
グラティティス王国は先程も述べたように、西の大陸ザーパトの中央部に位置し、大陸の二分の一を納める大国です。肥沃な大地と穏やかな気候に恵まれた、祝福された大地の国ですの。
その分昔から戦の絶えない国でしたので、我が国は軍事国家としても大きな機能を持っております。それでもおじい様の時代からは平和になっておりますのよ。
ただ、身分差があるので、教育などにまだ改善の余地があるのが悩みの種。これからどのように平和を維持し、人々の心を豊かにするのかが、我らが王家の使命なのですわ。
なのに……あんのくそぼけアホ兄貴供がまったく持って頼りにならないというよりいい加減にしやがれよってくらい馬鹿なので、私も両親も頭を抱えているのですわ。
え? 王女らしくない口調ですか? でも本当にそれくらい酷いんですのよ、わたくしのお兄様方は。
ああ、家族構成をお話ししておりませんでしたわね。
グラーテス家は国王のお父様を筆頭に、お母様と四人のお兄様、そして末っ子のわたくしという七人家族ですの。親族はまだわたしくし把握出来ておりませんのでご容赦下さいませ。
だって、わたくしまだ11歳になったばかりなんですもの。まだまだたくさんお勉強しなくてはなりませんわ。
さて、お父様なのですが、お父様はわたくしの目から見ても威厳のある凛々しい殿方なのだと思いますわ。
鮮やかな金の髪に海色の瞳。威風堂々たる体躯に、素敵なバリトンボイス!!
国民を一番に考えて政治を行う方で、非常に思慮深い方ですわ。
お母様はうっとりするくらいお綺麗な方。
艶やかな黒髪に春空の淡い青のまなざしで、白百合のように楚々として優美ですの。
穏やかで優しくて、怒ると少し怖くて、とても聡明なわたくしの憧れです。
そんなお二人がわたくしに与えた名前、エトワール・エスポワールって、意味をご存じかしら?
古語で、意味は『希望の星』ですの。随分御大層な名前でしょう?
その理由は、私のお兄様方が、みな……みんな馬鹿でどうしようもないからですのよっ!!
……失礼、少しばかり熱くなってしまいましたわね。
でも、聞いてくださればわかると思いますの。巷では麗しの四兄弟とか唄われてますけど、実際は四馬鹿です、四馬鹿。
それほどボロクソに言うのは何故かって、それはもう説明するしかございませんわね。
一番上のクルークお兄様は、御年22歳でございます。
お父様から金の髪を、お母様から薄青の瞳を受け継いで、すらりとした身長に均整の取れた体躯で、それはもう『月下の王太子』と呼ばれるにふさわしい美しさですわ。ええ、外見は。
未だに恋愛経験はございません。それどころか、女性は口を出すな、三歩下がって後ろに控えろっていう、典型的な男尊女卑観念の持ち主でございます。たまたまお兄様を教えた教師の影響らしいですわ、本当に余計な事を。
つまり、非常に人を、特に女性を見下すタイプですの。完全独裁者タイプですわね、あれは。
しかも頭はいいのに古臭い固定観念に捕らわれるわ、視野は狭いわで、あれはもう『月下の王太子』じゃなくて『氷の馬鹿』で十分ですわ!!
二番目のお兄様はヴァイスハルトと仰いまして、お兄様方の中ではわたくしが一番好きで、一番まともだと思う方ですわね。三番目のお兄様とは双子で、御年19歳ですわ。
お母様の黒髪とお父様の青いまなざしの、物静かで非常に賢い方ですわ。確か『宵の貴公子』とか呼ばれておりますわね。
まあ、どんな方なのかと一言で申すなら、ヴィー兄様は引きこもりです。
ヒマさえあれば本本本本で、半ば図書館に住み込んでおりますわ。当然、王家の義務やら公式行事は万年欠席。良識はありますが常識はありませんの。
『本の虫』と言うのがひどく正しいですが、同時に物凄く喜んでしまいそうで困りますわ……
三番目のお兄様は、わたくし大嫌いです!! あんなのと血が繋がってるだなんて……世の中の女性に土下座したくなりますわ。
フェアシュタント第三王子、通称フィル兄様は、それはもう麗しい外見の、ええ、見た目詐欺ですの。
外見はお母様の顔立ちにお父様譲りの金の髪と青い瞳で、しなやかな柳のように流麗なお兄様は『太陽の君』と言われているようですわ。
中身は単なる考えなしの女好きです。ええ、もう、ナンパ男なんて言葉では生ぬるいですわ!!
見た目は、それは確かに物語に出てくる王子様のように麗しいですけれど、とにかく行動は本当に考えなしだし、八方美人だし、女の子には誰彼かまわずちょっかい出すし、もう本当に女の敵ですわ!!
あんなの『軽薄男』です!!
四の王子ことクレフティヒお兄様は、17歳で我が国の第二騎士団団長を務めるほど武芸に秀でた方です。
おじい様譲りの鮮やかな緋色の髪に、お父様の青い瞳で、『紅蓮の騎士』と女性よりも男性からむしろ支持があるようですわ。
もっとも、武芸に秀ですぎて、頭が少々悪いです。
なんと言いますか、頭の回転は速いですし、けして物覚えが悪い訳でもないのですが、いかんせん考えが足りないというか、猪突猛進な方で……思い込んだら一直線の、悪気がない分もしかすると一番たちが悪いタイプかもしれません。
あと、よくその馬鹿力で物を壊します。というか、城も壊します。で、学びません。
言ってはいけないと思いますが、『脳みそ筋肉』です。
こんなお兄様達にこの国を任せたらとんでもない事になるとお父様とお母様は憂慮なされ、どうしようもなければ、わたくしに立派な婿を取らせて国を治めさせると公言されております。
そんな人生まっぴらなので、早くお兄様方が馬鹿を卒業して下さるといいのですが……
例えば、それまでの自分を変えてしまうような、運命の出逢いをなさるとか。
ないものねだりでしょうか……ね。
どうかあなたも、この国の行く末が輝かんばかりに希望溢れるものとなる事を、祈ってて下さいまし。
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