異聞録外典/偽典
『――――ファイル修復開始――――異聞録――――再生します』
「覚えているか兄弟。かつてこの世界は闇で満たされていた。光なんてなくて、闇すらも闇と認識されるものじゃなかった。
闇と認識できるのは光が存在しているからだ。この世に一つしかないものを、別段名前を付けて区別する必要なんてないだろう。
『神』と同じく。
我々はそんな闇の中で生まれ、そして育ち、『火』を見守り続けてきた。
闇の獣――そう揶揄されるかもしれない。それでも構わない、我々は遠い昔、『神』が世界を作る以前から『火』を見守り続けてきた。
そして育ててきた。
『火』は可能性だ。
『火』は命だ。
決して曇らず揺らがず、ある時は魂を燃やし、ある時は他者を傷つけ、まるでそれは無垢な赤子の如く、その手を空に伸ばす。
『火』は魂。
『火』は創造だ。
闇の中に生まれた深淵の炎は何よりも優しく、誰よりも力強く、世界を照らし、我々を見守り、また我々も『火』を見守り続けてきた」
『―――――――――ファイルエラー発生/修復中――――異聞録の再生ができません―――ファイルが壊れている可能性があります』
『自動修復を開始/異聞録再生します』
「―――――――そして、終末を告げる黒き大蛇。こいつは生まれた新たな世界の中で今土の礎となって眠らされている。王が帰ってくるのを待ち、ずっと眠り続けている。
そして争いを告げる二つ首の灰熊、アポクリファス―――こいつはどこ、どの時間だろうな―――――――おそらく、今も争いの火種を探し、或いは与え続けているだろう。魔術、科学技術、魔導、核、特殊能力、人間。あらゆる力、あらゆる知恵は、全て争いの火種となりえるんだ。
なぜなら―――――――――扱うのは『人間』だからだ。
それに、白き羽衣の箱舟――彼女は綺麗だろう。魂の揺り籠、闇の導き手、その白さは闇の中で決して衰えることなく、我々に帰る場所を常に教え続ける、美しき灯台のようだ。王も彼女に恋をし続け、彼女もまた王を愛し続けた。
そして我らが王に仕える――――――――二頭の大狼――奴らは今、どこで何をしているのだろうか。
アトラシア――――お前は死した王をようやく見つけたのか?
ゼノアトラ――――――――王を殺したアレを未だ探しているのか?
そして――――――――――――――
――――――奴だけは許さない―――――――――――
―――――――――――我々の『火』を盗んだ―――――――――――――――我々の王を――――――
――――――開闢を告げる――大鷲――――――貴様だけは―――――どの時間にいようと――――――どこにいようと――――――必ず見つけ出してやる―――――――――
必ず―――――――殺してやる……!」
『systemに重大なエラー発生\異聞録再生不可能――――ファイル消去を自動開始します』
『error\systemが外部よりハッキング。データ抽出されていきます』
『 オレニ会ウ
オマエニハ ムリダ
ココハ 原初ノ闇
『火』ガアリシ地
神ノ『光』ノ届カナイ
コノ道ハ 遠イ
ダガ オマエハ イカネバナラナイ
白キ獣ヨ
紅キランタンヲ照ラシ 闇ヲ払イ
コノ道ヲ歩メ
タダシ オマエハ捨テテイカネバナラヌ
人ノ姿ヲ捨テ 獣ノ姿ヲ捨テ
仲間ヲ捨テ
愛ヲ捨テ
心ヲ捨テ
魂ヲ闇ニ投ゲ―――――コノ道ヲ』
『異聞録―――消去完了』
『――オマエは、一人で歩いていかねばならない』
というわけで予告
アポクリファスちゃん、出番よぉ
「来年から本気出す」
というわけでなんか書きますね。
でも次は何書こうかしら、ファンタジー、異能物、今なろうちゃんで大ヒットのVRMMOとか?まぁなんでも書きますよ気が向いたら(*´ω`*)
異聞録は物語が一つ終わるたびに開放していきます。これで二つ目、あと何編出てくるかしら。書き下ろしなのでそこまで予想してないです