Lv.4 油断「愛玩動物恐るべし」
「――――さて、準備も済んだところだし、そろそろ出発しようか」
愛用の弓を持った狩人――フォンシエが、木刀を持った異世界人――ギルベルトにそう言った。
ギルベルトは気だるそうな顔をしながらも、のんびりと首を縦に振った。
やっと、この二人の冒険が始まることとなった。
◆
「そういや、さっきから気になってた事があるんだけどよー」
ギルベルトは木刀をいじりながらフォンシエにそう問いかけた。
フォンシエはちらりとギルベルトの方を見ると、ギルベルトは自分の頭を掻きながら口を開けた。
「戦い方とかってどうやるんだ?」
「あー……」
もっともらしい質問をされて、フォンシエはそういや言ってなかったなと心の中で呟いた。
「実際戦ってみれば一番分かるんだけど、村から出ないとできないからなー」
「え、なんでだよ」
ギルベルトは首をかしげると、フォンシエは薄く笑った。
「えっとな。……こういう村とか町とかには、モンスターがはいれないように結界がはってあるんだ。そうじゃないと安心して眠れないしな」
「へー。……じゃあ、こういう所に来れば安心なんだな」
「いや、そういう訳じゃない。たまに結界が一瞬薄くなる時があって、その時にたまたまモンスターがはいりこむ、って事もあるんだ」
――――そうフォンシエが言った瞬間、突然民家の近くからガタッという物音がした。
ギルベルトは何かが落ちたりしたんだろうな、と呑気に思っていたが、フォンシエは突然笑顔を消した。
「ん、どうしたんだよ下僕」
ギルベルトがそう言うと、フォンシエは自分の人差し指を軽く唇にあてた。
「しっ、静かに。――どうやら丁度いいタイミングでモンスターが村にはいりこんだみたいだ」
「マジかよッ。……てか、よく分かったな」
「前にも言ったろ。エルフ耳の人間は五感が鋭いって。……そうだ、丁度いい。討伐ついでにお前に戦い方について教えてやるよ」
そう言うと、フォンシエは軽くウインクした。
「……めんどくせ。でもしゃーねえ、戦えねーとこの先めんどくせえもんな」
そう言うと、ギルベルトは自分の剣――とはいっても木刀だが――を構えた。
「んで、どうすりゃいいんだ下僕」
「そうだな……。多分向こうはこっちに気付いてないみたいだから、挟み撃ちにしよう。お前は正面から民家の方に向かってくれ。俺は背後に回る」
「なんか、お前に命令されるのは癪に障るが……。まあ、今回は特別だっ」
そう言った途端、ギルベルトは民家の方へダッシュした。
「俺も速くいかねーとなっ」
そう言うと、フォンシエは民家の背後へと回った。
「――――こいつ、本当にモンスターなのか?」
ギルベルトは目の前にいる――どう見ても愛玩動物にしか見えないモノを睨みつけた。
そのウサギのような何かは普通のウサギとは違い、毛が紅い。
だが、その顔を見ていると、木刀を握っている自分が悪者のような気がしてきて、ギルベルトは複雑な気分だった。
とりあえず、試しに恐る恐る近づいてみることにした。
――――もしかしたら、捕まえたら高値で売れるんじゃね?
そんな残念な事を考えていると、突然、
「シャーーーーーーーーーーッ!!!」
「くぁwせdrftgyふじこlpぎゃあああああああああ!!!!!!!!」
ウサギのような何かは口から炎を吐きだし、それがギルベルトの右足にヒットした。
「あづ!! あづ!! 死ぬ、あづッッッ!!」
そんな風にギルベルトがギャーギャー騒いでいる間に、ウサギ以下略はその場から逃げ出そうとした。
――――その刹那。
「『パラサイット』!!」
バビュッ、という音とともに、風が実体化したような矢がウサギのような何かの左前足にヒット。
あまりにも突然の事だったので避ける事が出来なかったウサ以下略はモロに命中し、悲鳴をあげて蹲った。
ギルベルトは声の方に慌てて振り返ると、そこには弓を持ったフォンシエがいた。
「すまんすまん、もっと早く駆け付けるつもりだったんだが」
涙目のギルベルトを見て、フォンシエは苦笑いしながらそう言った。
「ったく、本当にそうだっつーの!!……つーか、今のって下僕の技なのか?」
「おう。……一応麻痺してるとは思うけど、まだ止めを刺してないからな。戦闘方法を教えながらやっつけちまおう」
ニコリとフォンシエが笑うと、ギルベルトもつられて笑った。
「うっし、ぜってーブッ殺してやる……!!」
――黒い笑みだったが。
「ははは、怖い恐い」
そうフォンシエが思わず声を漏らす。
――――そうして、ギルベルトの初戦闘が幕を開けた。