Lv.0 c
フォンシエ・コンテスティは、ごく普通の狩人だ。
イストの小さな村に住み、近くの森で鹿などを狩ったり、作物を育てたりなどといった平和的な暮らしをしていた。
……ま、そういう前置きからしてもう日常は崩れ去るんだろうな可哀想にとか思ってる人は正解である。
フォンシエはいつも通り森に行って鹿を狩ろうとした時に、突然森が眩しく光った。
慌てて森に駆け寄ると、そこには――――――
「…………誰?」
切株に寄りかかり、すやすやと寝息を立てている青年がそこにいた。
銀髪の青年は美青年と言っていいほど顔立ちが整っている。フォンシエは同性にも関わらず一瞬ドキっとしてしまった。
――――絵に描いたような美青年って本当にいるんだなあ。
フォンシエは少しその容姿を羨ましがりながら、恐る恐る近づいてみた。
「おーい、起きてるー?」
寝ているから起きている訳などないのだが、とりあえずそう言ってみた。が、やはり返事は無い。
思わずまじまじとフォンシエは青年の顔を見つめながら、村では見かけない顔だなとか、どうしてこの青年はこんなところで寝ているんだろうとか、そういえばあの光何だったんだろうなどと思った。
「ま、悩んでても仕方ない気もするんだけどな」
そういいながらフォンシエは自分の髪の毛をくるくると弄っていると、青年がゆっくりと目を覚ました。
「……ん、あれ…………?」
凛と透きとおった声がフォンシエの耳に響く。
フォンシエは慌てて青年の方に顔をやると、青年はあたりをキョロキョロと見まわしていた。
「ここ、何処だ……?」
青年は困ったような顔をする。
とりあえず何か話しかけないとな、と思ったフォンシエは、少し悩んでから口を開けた。
「やあ、初めまして……だよね。その、君は?」
言った直後にフォンシエはもっと気のきいた言葉を言えばよかったなと一瞬後悔したが、青年は嫌そうな顔をしながらも、すぐに「……ギルベルト・H・アイヒベルガー」と呟いた。
――――ギルベルト・H・アイヒベルガー、か。随分かっこいいというかゴツいというか何とも言えないような名前だな……。というか、さっきのあの顔は一体……?
と、フォンシエは思わずそう思ったが、首をぶんぶんと横に振って、自分も自己紹介しようと思った。
「俺はフォンシエ。フォンシエ・コンテスティ。この森の近くの村に住んでいて、狩人をしているんだ」
フォンシエはそう言うと、青年――――ギルベルトは「あっそ」と可愛げのない返事をした。
――――口を開くと生意気な奴、ってところか。まあ、俺より年下みたいだし、気にしないでおくか。
そう思った直後、その言葉を速攻で前言撤回したくなるような台詞をギルベルトは吐いた。
「んまあ、よく分からねえけどいいや。――――おいお前。フォなんたら。……名前めんどいから下僕。さっさとこの俺様に上質なベッドを用意しろ。というか村とかなんかショボいし都会とかのがいいな」
「…………は?」
残念な勇者の物語は、こうして幕を開けた。
――――――勇者が魔王すぎて世界がヤバイ!!