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「ウェストと戦争中だというのに世界征服宣言とかマジ勘弁してくれよもう…………DQN魔王ェ……」
そう呟いたのは、東の国、イストの国王だった。
――――この世界、【ディヴェルティメント】には、東の国のイスト、西の国のウェスト、南の国のミディ、北の国のノーフの4つの国が存在している。
東、南、北の三国は王が統制しているのだが、西だけは軍事国家であり、西は主に銃や毒薬などの近代的な武器を用いるが、他の三国は魔法を主としている。
簡単にこの四カ国を説明すると、東と西は権力は大きいが仲が悪く、昔から戦争ばかりしている。南は中立的な立場であるが、さほど力は強くない。北は他国との関わりを殆ど遮断している、という感じである。
「マジでどうする? 多分今この状況じゃ世界征服防げないと思うんだけど」
大分自由な国王がそう言うと、大臣の1人が
「それなら、勇者を召喚しません? それっぽいですし、その方が面倒じゃないかと」
と、国王と同じような感じを醸し出しながら言った。
「確かに、勇者召喚いいな。かっこいいし。……でも、召喚士とか居たっけこの城内に」
そう国王が言うと、さっきとは別の大臣が手をあげて、
「一応それっぽい事なら出来ますよ。まあ、どんな勇者が来るのかは分からないですけど」
と言った。
国王は少し不安だったが、召喚士を探すのも面倒だったために、それでいいかと思う事にした。
大臣が魔術書を片手に持ち、もう片方の手を伸ばして詠唱をし始めた。
足元には紫色の魔方陣が淡く光り、どこか神秘的な感じがする。
国王は意外な大臣の一面に驚きつつも、その様子をじっくりと見守っていた。
「――――――、出でよ!!」
大臣がそう言うと、部屋全体が突然白く光った。
「!!」
国王は思わず目を瞑ってしまったが、すぐに目をなんとか開けた。
徐々に光は消えていき、魔方陣の中央には――――――
「…………え?」
そこには、勇者どころか、何も現れていなかった。
「おい貴様なに行数の無駄遣いしてんだよゴルァ」
「いや、別に無駄じゃないです、無駄じゃないですって!! 一応その、召喚は成功してますってえええ!!!」
「いねーじゃねえかよks! どこが成功だこの塵野郎が!!」
以降、醜い大人の言い争いをお楽しみください。
「塵野郎てwww少なくとも国王が言う台詞じゃないですってwwww」
「話そらすんじゃねえよ!! どこいったんだよ勇者はよォオオオ!!」
「た、多分召喚は出来てますけど、出来てますけどって痛い痛い首締まってますってッッ」
「言えたら話すからさっさと言え!!」
そう国王が言うと、大臣は露骨に目をそらしてボソリとつぶやいた。
「……多分、成功はしましたがその、この世界のどこかに飛びました」
「…………へ?」
「いや、多分ここじゃなくて何処かに飛ばされてます」
「……H A ? ?」
素直に召喚士を呼べば良かったと心底後悔した国王であった。