Lv.12 余裕「あれ、案外チョロそうじゃね?」
慎重に足を進める剣士(木刀)、狩人、魔術師の三人。
ギルベルトは聴こえない程度に深呼吸し、身勝手に胸騒ぎする自分を鎮めようとした。
――――と、その刹那。
「『ヴィエント』!!」
フォンシエが風の矢を空中に放つ。
ギルベルトはフォンシエの行動に驚き、横目で彼の方を見る。
「んな、何やってんだよお前!」
そう叫んだ瞬間に、折れた矢と共に光り輝く何かが降ってきた。
「避けろ!!」
フォンシエは大声でそう叫び、ギルベルトは慌てて何かを避けた。
フォンシエもギリギリのところでそれを避けることに成功した。
……だが、
「きゃああっ!!」
避けようとした瞬間に何かがエテルナの左足に突き刺さる。
フォンシエはエテルナの方へと走り、エテルナに手を差し伸べた。
「立てるか?」
「はい、なんとか。――でも、大分ダメージを受けてしまったみたいです。治癒にも時間がかかるかと……」
杖を弱々しく握り、なんとか笑いかける。
フォンシエは左足を見ると、うっすらと電流が走っているのに気付いた。
「麻痺しているみたいだな。暫く休んでいれば落ち着くとは思うが……。ごめんな、こんなことに巻き込んでしまって」
「いや、いいんです。私がついていきたいって言ったんですから」
エテルナはそう言うと、最低限の治癒魔法をかけて、ゆっくりと立ち上がった。
「なので、心配しないでください。私も一緒に戦いたいんです」
まっすぐな瞳でフォンシエを見つめると、フォンシエはやれやれとため息をついた。
「そう言うなら、しっかりサポート頼んだぞ」
「はい!」
そんな会話の間、ギルベルトは周囲を調べていた。
「ったく、なかよしこよしは面倒くせえ……」
ぶつぶつとそう言っていると、半透明の壁のようなものを発見した。
「ん、なんじゃこりゃ」
試しに触ってみると、
「いっづ!! なんだこれ、電撃……?」
指先からびりびりと電撃が浸透してきた。
「って、もしかしてこれ、防護壁みたいなやつなのか?」
手ごわい敵だったら面倒くせえなあ、とぼそりと呟くギルベルトであった。
◆
「防護壁張ってるお陰で人もモンスターも来れないし、第一こんな奥に誰も来るはず無いし、ほんとここマジ天国ー」
少年はそう言うと、ぱたりと地面に寝転がった。
青々とした葉が少年の鼻をくすぐる。
「――――でも、肝心な問題が一つ」
少年はそう呟き、ゆっくりと息を吸う。
そして。
「」
「とりあえず死ねぇえええええい!!!」
と、少年が声を発した瞬間に、我らが異世界人がドカドカとあがりこんできた。
「!!??」
少年は突然の出来事に戸惑い、とりあえず自分の武器である機械の箱を持った。
「ななななんんn何故ここに侵入者が! というか防護壁は?!」
パニくる少年をよそに、ギルベルトは木刀を持ってニンマリと笑った。
「なーんだ。結構弱そう、というか絶対弱い奴じゃねえかあ。な・あ? フォンシエくぅーん」
と、背後にいるフォンシエににやにやと笑いかけながら喋ると、フォンシエにうっすらと睨みつけられた。
「馬鹿、そんなに調子こいてどうするんだ。……まさか人型のモンスターがこんなところにいるとは思ってはいなかったが……とにかく、あの防護壁を張れる位の魔力の持ち主だ、油断してるとやられるぞ」
「へーきへーき。そんぐらい俺様がボコボコにしてやるし」
ギルベルトはそう言うと、手をひらひらと動かして余裕そうな表情を見せた。
「……フォンシエ、さん」
エテルナは不安そうにフォンシエの服を掴んだ。
「はは、ギルベルトはあんな感じだけどさ。やる時にはやる奴だから平気だよ。――それより、自分の心配もしてくれよ? さっきの怪我もあるし、な」
「は、はい」
エテルナは手をゆっくりと離したが、その表情は暗いものがうっすらと残っていた。