Lv.9 天然「魔法娘は天然娘」
不思議ちゃん旅人ことトロイ・メライと別れて数十分後。
異様に緑が深い場所、リヒトの森の前に到着した。
「丁度ここを抜ければシアオンの近くに出れるらしい。本当に好都合だったよー……って、ギルベルト?」
気がつけば相方がどこかに消えたので、辺りを見回すフォンシエ。
すると、なにやらギルベルトは説明神のところにいるようだった。
「って、あんなところに……」
フォンシエはため息をつき、とりあえずその方向へと歩いた。
『ようこそ 【りひとのもり】へ!!▼
ここは みどりが こころを いやしてくれる ばしょ!▼
おもいきって はいって みれば▼
たいようの やわらかい ひかりが きみに ふりそそいで くれるぞ!▼』
――――と、そんな台詞を後頭部が光り輝くおっさんが言い放っていた。
言葉にするとかなり痛いが、説明神だから許される。説明神素敵。
「……だってさ下僕」
「いや、俺に振るなよ!」
◆
2人はどんどんと森の奥へとはいっていく。
どうやら、整備された道には簡易結界が張ってあるらしく、モンスターが入れないようになっていた。
だが、武器が眠っているという場所は、その道から外れたところにあるために、モンスターに遭遇してしまうらしい。
「まあ、だとしてもなぎ倒せばいいだけだしな」
「んな事言ってやられるなよ?」
「ッッ、おめぇこそやられるんじゃねえぞ!油断してグサッとかな」
「はいはい、気をつけまーっす」
ギルベルトの台詞をさらりと受け流し、フォンシエはのんびり歩いた。
――――と、その時。
「あー、フォンシエさん!!」
柔らかいソプラノヴォイスが、2人の耳に響いた。
ギルベルトはどうでもよさそうな顔をしていたが、フォンシエは目を丸くした。
「え、何で君がここに……?」
フォンシエは座り込んでいる少女を見て、無意識にそう言った。
「いやあ、ここってすっごく美味しい木の実が穫れるんですよ。なので入っていったんですけど、足を挫いちゃって……」
そう言って、少女は自分の右足を指差す。
見てみると、少女の右足は少し腫れていた。
「……随分痛そうだな。立てるか?」
そう言って、フォンシエは少女に手を差し伸べると、少女はゆっくりとその手につかまってよろよろと立ちあがった。
「すみません、こんなことして貰っちゃって」
「いいや、別に構わないさ」
フォンシエは心配かけないようにと柔らかく微笑む。
少女はその笑顔を見てすこし恥ずかしそうな顔になった。
……と、こんな様子を見ていたハブラレ異世界人は、不満そうに口を尖らせた。
「んだよ、俺様だけ省きやがって……。ってか、そいつ誰」
ギルベルトがどちらかというと正論を言う。
少女はハッと顔をギルベルトの方に向け、慌てて自己紹介をした。
「す、すみません!……えと、私はエテルナ。エテルナ・グラーティアっていいます。フォンシエさんとはお隣さんで、いつも優しくしてもらってるんです♪あ、ちなみに魔術師です」
少女――エテルナは、そう言うとにこりと微笑んだ。
それと同時に、彼女のチャームポイントである、太陽の光に反射して美しく輝く淡い水色のロングヘアーがさらりと揺れた。
「ふーん。魔術師、ねぇ……」
「一応、援護系から攻撃系、更には回復魔法まで、何でもできるんです♪」
そう言った途端に、エテルナはよろけて転びそうになったが、慌ててフォンシエが彼女を抱きとめた。
「っと、危ない」
「はうっ!!」
突然エテルナの顔が林檎のように真っ赤になり、エテルナは慌ててフォンシエから離れた。
「すすすすすすすすみません!!」
「ははは、別に構わないさ。――――って、そういえばさ」
フォンシエはそう言うと、エテルナに的確すぎる一言を放った。
「回復魔法使えるなら、自分の足の傷を癒せばいいんじゃないか?」
「……あ」
その後、エテルナは回復魔法を足にかけたところ、八割方回復しましたとさ。
「……アホかよ」
「人はそれを『ドジ』って言うんだぜ」