第42話:商品化される「共有文化」
開発計画の内容は、村人たちにとっても衝撃的なものだった。リゾート会社は、この村の特殊な「共有文化」を、富裕層向けの「究極の癒やし体験」としてパッケージ化し、観光資源にしようと企んでいたのだ。
「素晴らしいわ、この村の因習。現代人が忘れた『無償の愛の分配』。これを会員制の高級クラブとして運営すれば、莫大な利益が生まれる」
レイカは村の古老たちを集め、札束をチラつかせながらプレゼンテーションを行う。昨日まで佐藤とワカハを「呪われた二人」と蔑んでいた村人たちは、黄金色の誘惑を前にあっさりと掌を返した。
「……佐藤くん、ワカハさん。あなたたちへの追放処分を解除する。その代わり、開発の目玉として、あの『花嫁の共有儀式』を再現してほしい。……これは村を救うための、ビジネスなんだ」
権藤の言葉に、佐藤は吐き気を覚えた。彼らが守ってきた「共有」という名の信仰は、資本の論理によって「商品」へと成り下がろうとしていた。さらに最悪なことに、レイカは佐藤を開発の責任者に据え、ワカハをその「アイコン」として差し出すことを要求した。
「……佐藤くん、東京に戻るチャンスよ。彼女を『共有の女神』として売り出せば、あなたも彼女も、一生遊んで暮らせるお金が手に入るわ。……愛なんて、結局はお金で買える『満足感』の一種に過ぎないのよ」
レイカは佐藤の耳元で囁きながら、彼の首筋をなぞる。都会の誘惑と、歪んだ村の期待。佐藤の心は、二つの巨大なエゴの板挟みになり、激しく軋み始めた。
「黄金降る 里を売りゆく 大人たち 汚れぬ君を 守る術なし」




