わたしの居場所がほしいから
私は人形。
わたしは幽霊ちゃん。
二人で生きてく道の途中、次はわたしのハグ探し。
ハグはどこにあるのでしょう。
私はまったく分かりません。
正体すらも掴めません。
ハグはお家の中にある。
定義は様々あるのだけれど、
およそ抱き締めてもらうこと。
でもでも。
それは他人が必要でしょう。
私たちに出来るのか。
・・・それは保証が出来ないけれど。
それでも探す価値はあるはずです。
宵の空をふと見上げる。
広い広いこの空の下。
どこかにわたしの家族もいるの?
思い出せないその記憶。
私に中身がないように、
わたしもお家の中身がない。
ずっと目を逸らしてた。
触れるようになったとしても。
二人で一人になったとしても。
それでもハグには届かない。
私たちは喋れない。
ないない尽くしの私たち。
きっと人とは解り合えない。
そんな想いが増すばかり。
大丈夫だよと私は言う。
わたしの為にそう告げる。
私の言葉にありがとう。
その一言がわたしの支え。
目星はまったくないけれど。
星の光を頼りにして、
ハグを探しに飛んでゆこう。
/
夜の帳が降りるころ。
私たちはふわりと浮かんで、
夜空の世界を飛んでゆく。
真上を観れば星空が、
真下を観れば町並みが。
幻想と現実の狭間を通って、
わたしの居場所を探します。
あの家、この家、どこの家?
ぱっと見だけではわかりません。
ピンときたところで良いのです。
直感こそが大事です。
それなら降り立つあのお家。
住宅街の三番地。
/
お家の前に着いたなら、
訪問しましょうインターホン。
ピンポン、ピンポンと音が鳴る。
静かな夜に鳴り響く。
カメラからは距離を取って。
近づきすぎずに待ちましょう。
きっと私が映るはず。
お家の中から声が聞こえる。
悪戯なのかもと言っている。
残念ながら失敗でした。
諦めずに行きましょう。
それではダメよとわたしは言う。
大事なことを忘れていました。
これではただの迷惑行為。
ご近所様のご迷惑。
どうしてダメなのと私は言う。
ハグを探しているはずなのに。
出来ることはやるべきです。
私の気持ちもわかるけど、
わたしにそれは出来ないの。
わたしは幽霊ちゃんだけど、
悪い事はしたくない。
悪い事、それはダメだとわたしは言う。
私はそれが解らない。
でもでも。
なんとなく、理由は解ってきた気がする。
それは気分が沈むから。
浮力をなくしてしまうから。
私とわたしだけじゃなく、誰かがなくしてしまうから。
だからわたしの気持ちもわかる。
私も悪い事はなしにします。
ありがとうとわたしは言う。
私のためにそう告げる。
そうと決まれば計画変更。
手段を変えねばなりません。
それならどうするべきでしょう?
わたしはまったく分かりません。
私もそれは分かりません。
二人揃って八方塞がり。
それでも。
希望はきっとあります。
私たちには自由があるから。
もう一度夜空を飛んでゆこう。
月の光を頼りにして、
ハグを見つけに行きましょう。
そうねとわたしが同意して。
再び夜空へ舞い上がる。
/
町が眠りにつく頃に。
私たちはふわりと浮かんで、
夜空の世界を飛んでゆく。
町の外にも目を向けて。
何かがあるかもしれません。
田んぼ、神社、藪の中。
人は恐らくいないでしょう。
でもでも。
よくよく考えてみれば、
人じゃなくても良いのです。
人の外にも目を向けて。
誰かが居るかもしれません。
私たちと同じように、夜の時間に生きる者が。
幽霊、妖怪、吸血鬼。
きっとたくさん居るはずです。
そんな彼らはどこにいる?
墓場?棺桶?山の奥?
まずは私の知ってる場所から。
つまりは真下にある神社。
/
誰もいない神社の参道。
明かりもまったくありません。
今にもそばの暗がりから、
何かが出そうな雰囲気です。
わたしは怖くてたまりません。
私に連れられここまで来たけど、
わたしはあくまで元人間。
幽霊、妖怪、怖いです。
それでもわたしは立ち向かう。
たとえ人の外であっても、
わたしの居場所が欲しいから。
気付くと目の前には人の影。
誰かが迫ってきています。
こわい、こわい、こわいです。
怯えて竦んでしまいます。
両手で掬われ、持ち上げられて。
このまま食べられちゃうのかな?
覚悟を決めたその瞬間。
気付けばぎゅっとされていました。




