それでも二人で生きていたい
お菓子を求めて三千里。
商店街まで着きました。
通行人もいるけれど、
意外と怪しまれないものです。
お菓子屋さんはどこでしょう。
ぱっと見だけでは判りません。
お菓子屋さんにも色々あります。
和菓子、洋菓子、スナック菓子・・・
一体どれが好みなの?
私は過去なき人形さん。
好みもまったくわかりません。
だから突撃、手当たり次第。
まずは近場のケーキ屋さんから。
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ここは近場のケーキ屋さん。
中は素敵なフランス風味。
ショーウィンドウに映るのは、
色とりどりのケーキと・・・私?
初めて見たのはその姿、朽ちかけぼろぼろ人形さん。
おおよそお店に相応しくありません。
薄汚れが目立ちます。
でもでもやっぱりお菓子が食べたい。
私のことよりお菓子が食べたい。
わたしは見た目が気になるけれど、
今は私が優先です。
ところでケーキ屋に着いたはいいけど、
どうやって会計済ませるの?
会計?
それは何でしょうか。
お金を支払う事だとか。
もちろん私は持ってません。
それじゃダメよとわたしは言う。
泥棒、万引き、わるいことです。
人でなくても罪があります。
そそくさ駆けてお店を出る。
お客じゃなくてすみません。
お店に並ぶケーキより、
わたしの予想が甘かった。
私は微妙にわからないまま、
引き摺られるように店の外。
お金が必要、そう言われても。
それはどこにあるのでしょう。
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結局お菓子はダメでした。
合法的には難しい。
これではハグと変わりません。
でもでも。
ケーキは見ているだけでも素敵でした。
たとえ食べられないとしても、
私はお菓子をもっと見たい。
風のようにショッピング?
それならわたしも大好きです。
アゥが足りない気もするけれど。
それから始まる店巡り。
商店街をすたすたと。
人ごみよけて端っこを。
時には衣服を眺めてみたり。
いつかは着替えをと思っていたり。
お菓子のお店も廻ります。
私の趣味もわかってきました。
駄菓子はどうやら違うようです。
和菓子もなかなか良いですね。
好きなものを見つける度に、
嬉しい気持ちなわたしの旅。
お菓子のことがわかる度、
私のこともわかる旅。
今まで色々あったけど、
生きててよかった、そう想う。
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たくさんお店を見て回って。
わたしは何だか疲れてきました。
私がこんなに常識知らずだなんて。
わたしも私知らずです。
たくさんお店を見て回って。
私はとても元気です。
ハグもお金もきっと見つかる。
そんな肯定を今はできる。
それはそれとして。
目の前にはまたもやお菓子屋さん。
しかも試食販売しています。
これならお金もいりません。
こっそり周囲の目を盗んで、
ふわふわと浮遊して、
ぱくり、とお菓子を一口。
もちろん味はしない。
味覚なんてありません。
でも、本題はそこじゃない。
私の中身は空っぽだから。
ずっと中身が欲しかった。
中身はお菓子が良いと想った。
いつかは私も満たされる。
甘いお菓子で一杯になる。
それが私が掴む夢。
少しとは言え夢が叶って、
私の心は虹の色。
とっても嬉しい気持ちです。
メルヘンな夢ねとわたしは言う。
やっぱり私がよくわからない。
悪い意味じゃなくて、良い意味で。
私たちは別物で、
好きなものも違うけど。
でもでもそれが楽しくて。
困ることもあるのだけれど。
それでも二人で生きていたい。
お店の外に出て見れば、
空はすっかり夕焼け色。
楽しい時間はもう終わり?
いいえそれは違います。
私たちは幽霊人形。
夜中こそが我らの時間。
二人で手と手を取り合って。
更なる自由へ飛び出そう。
さてさて、お菓子は食べちゃいましたから、
次はいよいよわたしの番。
ハグは一体どこにある?




