私とわたしは違うけど
私は人形。
わたしは幽霊ちゃん。
自由を得た私たちは、何をしようか考える。
私はお菓子が食べたい。
わたしはハグしてもらいたい。
意見が対立、希望が対立。
同時にこなせるものなのか。
お菓子はお店で売っています。
だけれどハグは売ってません。
それならお菓子が先でしょう。
私はそうして歩もうとする。
それならハグが先でしょう。
わたしはそうして歩もうとする。
わたしの意思に邪魔されて。
私の意思にじゃまされて。
思うように動けない。
右足が左に、左足が右に。
私とわたしが合わないせいで、
すってんころりん転んじゃう。
今までちゃんと動けてたのに。
突然ふたりは噛み合わない。
これではどこにも行けません。
お菓子もハグもありません。
それなら一つに絞らなければ。
効率的に生きましょう。
お菓子はお店で売っている。
お菓子はお店に置いてある。
だけれどハグは売ってない。
ハグはどこにも置いてない。
ならばお菓子の方が先。
確実なのはお菓子のほう。
確かにそうだと思うのだけれど。
それでもわたしはハグが欲しい。
お菓子になんて興味ない。私のことはわからない。
そうしてわたしは黙ってしまう。
私はどうにも困ってしまう。
/
私のお菓子探し。
私ひとりのお店探し。
夢見たお菓子が待っている。
夢見た命を持っている。
でもでも。
気持ちはどうにも紺色。
そもそも場所がわからない。
お店の場所がわからない。
外に出たことなんてない。
私は箱入り人形さん。
それでもお菓子が食べたいので、
私は町をさまよいます。
田んぼ、神社、藪の中。
お店はどうにも見つからず。
私の方向感覚はダメダメ。
廃屋に戻る事すらできません。
困って迷って三本道。
どっちへ進めば良いのか。
こんな時に頼りたい。
わたしに道を教えてほしい。
でもでもわたしは眠り姫。
私の言葉で起きるのでしょうか。
/
わたしは静かな闇の中。
二人いっしょを半分やめて、わたしだけが眠るのです。
お菓子を食べたら起こしてね。
わたしは最後にそう言いました。
二人で一人はなんとも不便。
上手く行かないことばかり。
それは一体誰のせい?
どこまで行ってもわたしのせい。
わがまま娘の幽霊ちゃん。
迷惑ばかりの幽霊ちゃん。
体を貸してもらっているのに、
思い遣りが足りてないかも。
悪い子、悪い子、そう繰り返す。
わたしは悪い子なんですから。
人形に憑りつくわるいやつ。
そんな自罰な想いも含めて、
ぜんぶわたしの悪いところ。
私はわたしじゃないのだから。
わたしと違うこともある。
それでも二人で歩み寄って、
一人として生きてかないと。
誰かが呼んでる、声が聞こえる。
私がわたしを呼んでいる。
私たちで生きてゆこう。
まずはお菓子を食べることから。
/
商店街はこっちだよ。
わたしは私にそう伝える。
応えてくれてありがとう。
私はわたしにそう伝える。
それは忘れていた言葉。
あるいは今この時に覚えた言葉。
私だけでは生きて行けない。
わたしだけじゃ生きてけない。
だから私は私たち。
ふらりと離れてしまわないように。
ゆらりと消えてしまわないように。
繋ぎ合わせる必要がある。
わたしが居ないと私は居ない。
私が居ないとわたしは居ない。
半分づつの命を合わせる、
わたしと私なのだから。
ありがとうとわたしも返す。
こぼれた微笑みを私が返す。
もちろんわたしも微笑んでいる。
お菓子を求めて歩き出す。
今度はわたしも一緒にね。




