小さな小さな脱出劇
私は人形。
わたしは幽霊ちゃん。
半分の命が合わさって、ひとつの命になりました。
体が動く。どうしよう。
体がある。何しようかな。
何をするにも、まずは廃屋から出なくては。
がらくただらけの地下倉庫。
小さい体で抜け出せるのか。
そもそも出口が見つかりません。
ホントにここから出られるの?
寂しさは紛らわされたけど、
不安はどうにも消えません。
きっとできると私は言う。
わたしの為にそう告げる。
諦めずに生きてゆこう。
命を得たこの偶然。
命を得たこの奇跡。
無駄になんて、したくないから。
/
そうして始まる脱出劇。
小さな小さな脱出劇。
ラジオの上をひた走り。
空っぽ木箱をよじ登り。
がらくた山を乗り越えて。
見つけたのは小さな希望。
ひとすじだけの小さな光。
でもでも。
それは天井にある。
どう考えても届かない。
地上の床に空いた穴。
ふわふわ宙に浮かべたら、
するりと通って抜けられるのに。
きっとできると私は言う。
そんなの無理とわたしは言う。
もう幽霊じゃないのだから。
何かに触れてしまうから。
わたしは羽ばたけないのです。
体を得たはずなのに。
こんなにも不自由になるなんて。
またまた気分が落ち込みます。
わたしの気持ちは不安定。
わたしが沈んでしまいそう。
わたしを浮き上がらせるには。
私が何とかするしかない。
私の気持ちは灰色、でも。
わたしは私にしか救えない。
何と声をかければ良いのか。
何を伝えてあげれば良いのか。
私は人形、中身は空っぽ。
付き合い方などわからない。
だから。
ただ、私が想っている事を。
そのまま、わたしに伝えよう。
わたしは幽霊ちゃんだから。
きっと今でも飛べるはず。
私にわたしの自由を見せて。
自由。
どこか重みのある私の言葉に、
わたしの体は浮き上がった。
きっと私は、ずっと動けなかった。
わたしと真逆で。
だから、わたしが動かないといけない。
私と一緒に。
そうしてふわりと飛んでゆく。
幽霊の時とは違って、風のようなものを感じながら。
そうしてふわりと飛んで行く。
人形の時とは比べ物にならない、自由を感じて。
私たちは、地下を抜け出した。
/
太陽は私の真上。
わたしの感覚ではお昼間。
私たちは、廃屋の外に出た。
眩しさが懐かしいです。
眩さに目が眩みそう。
なんだかとても感動的で。
私の気持ちは虹色で。
涙を流してしまいそう。
人形だから、幽霊だから、涙が出たりはしないのだけれど。
どこに行こう。何をしようか。
本当の自由が、私たちの目の前に広がっている。




