ゴーストxドール
私は人形、中身は空っぽ。
特に何もありません。
でもでも。
私には仲間がいます。
仲間のわたしは幽霊ちゃん。
実体とかない。
人形に憑りつくわるいやつです。
ずっといつも二人。
見かけ上は一人。
気分は三人前。
死者と人形。
半分づつ命を合わせて、きっと多分生きています。
/
ここは廃屋。
ボロボロで人っ気がない。
だいたい朽ちてる。
私も朽ちかけ。
私は動けません。
命が半分しかないからです。
ほんとはお菓子が食べたいのですが、
動けないなら仕方がありません。
特に記憶もありません。
いつから私はここにいる。
五分前か五秒前か。
過去がないゆえ未来もない。
きっと、このまま消えてゆく。
私は塵へと還るだろう。
でも、それなら。
私がここにいる意味って、何―?
/
わたしは幽霊ちゃん。
事故で死にました。
ここは道路の上のようです。
わたしの死体が見えています。
わたしは物に触れられない。
命が半分しかないようです。
ほんとはハグが欲しいのだけれど、
触れないなら仕方ないです。
記憶の糸が辿れない。
わたしは死ぬ前どうしてた?
お家も学校も覚えてるけど、
肝心の中身がありません。
意識は確かにあるけれど、
これでは生きていると言えません。
わたしは幽霊ちゃんだけど。
幽霊なりに、生きていたい。
/
とは言え、あてもなく。
幽霊ちゃんは、ひたすら町をさまよいます。
商店街、住宅地、駅前公園幼稚園。
どこに行ってもひとりきり。
寂しくて泣いてしまいます。
幽霊だから、泣いても涙が出ないけど。
落ち込み続けて、物陰へ。
ふらりふらりと、暗闇に。
ふと気づけば、ここは廃屋。
ボロボロで人っ気がありません。
寂しい気持ちのせいで、寂しい場所に着いてしまいました。
気分がどんどん落ち込んで、どうしようもありません。
このまま消えちゃいたいな。
なんで生きているのかな。
気分は重力のようになって、わたしを下へ引っ張ります。
そのうちゆっくりと、床下に沈んでいって・・・。
/
誰かがここに来たような。
そんな気がします。
相変わらず人っ気はないけれど、
人じゃなくても良いでしょう。
近づいてきてる。
まるで沈んでいるように、
ゆらゆらと私のいる地下へ。
このままでは誰かさんは落ちてしまう。
私の目の前を通り過ぎて、地の奥底に。
もし、私が動けたら。
私はあなたを掴めるのでしょうか。
この半分の命でも、あなたを救えるのでしょうか。
塵になって消える前に、何かを掴みたい。
この手が動かなくても、この心で。
幸運にも、その距離は近く。
あなたも生きているのなら。
きっと、心を通わせられるはず。
私は人形だけれども。
人形なりに、生きていたい。
だから届いて、私の心―!
/
沈む心、沈むわたし。
止まりそうにない、感情の落下。
明るい気分を心掛けても、
やっぱり限度がありました。
このまま地上は遠くなって。
もう戻れなくなってしまうかも。
でも。
声が聞こえる気がする。
わたしのことを、見てる人がいるような。
それなら寂しくないのかも。
それなら生きて、いられるかも。
些細な希望だけれども、
動く理由には十分でした。
誰かが差し伸べたその心に、そっと触れて―
/
目が覚める。
人形のはずなのに、眠るとは何事か。
―違和感がある?
おはようございます。
落ち込み気分も一旦眠れば、すっきり回復するものです。
―あれ?
体がある。体が動く。
誰かがいる。"あなた"がいる。
私は人形。
わたしは幽霊ちゃん。
これは偶然なのか。
これは奇跡なのでしょうか。
半分の命は合わさって、ひとつの命になったようです。




