爺にイヤガラセ
「東大、どうですか」と言われた長男高一の冬、なんかウケて終わった。これといった変化はなく、長男も平常運転。しかし先生に東大受験を勧められた話を聞いた私の父は、それはもう盛り上がった。
お正月、姉と私達家族、弟家族が実家に集まる。その時父から件の個人面談の話を聞いていたらしい弟が、
「イチーチ、東大狙うの?」と話を振ってきた。
「いや、まさか!」とイチーチ。大学は行きたいけどまだ何処とかよく分からない、とか何とかムニャムニャ言ってると、父から爆弾発言が。
「東大合格したら報奨金で100万円出すぞ!」
とっくに年金生活の両親は二人で程々に慎ましく暮らしているのだが、父は中学卒業後ずーっと厚生年金加入。母も子供三人の出産以外はほぼほぼ働いていたので、ソコソコのゆとりはあるのだろう。が、若干イラッとした私は言った。
「よし、イチーチもニーニーもオッチー(弟の長男)も、みんなで東大行ってじーちゃんから有り金全部巻き上げてやれ。」
「いーぞー!やれやれ!」と「無理無理無理無理!」の渦。父何故か嬉しそうに爆笑。
「おぅおぅ、ニーニーもオッチーも東大だったら100万だぞ。京大でもいいな。よし、東大と京大は100万。その他の旧帝大は50万だ。がんばれ!」
「お父さん、絶対ちゃんと払ってよ。パチンコ行かないで貯金しないとね。」
ますます調子に乗る父と煽る母。自分の子供の受験時は「余裕無いから進学するなら県内の国公立限定」とか言ってたのに、年金生活のクセして太っ腹だな。いや、100万じゃ入学金と一年分の授業料でほぼお終いだ。孫の小遣いとは比べ物にならんし、ここで僻むのはフェアじゃない。私勉強しなかったので。
「なんかねー、親戚中に東大行ったのはいないから、親戚に自慢できるって。自慢代と思えば高くないって。」
とは、後日姉から聞いた話。父は7人兄弟の下から2番目。父の兄弟達にはとっくの昔に孫がいて、やっと自分の孫の話が出来るようになり、しかも何か自慢出来るのが嬉しくてしょうがないらしい。
こう聞くと可愛い系ジジバカなんだが。
そういえば。
「イチーチ高校合格のお祝いに10万円やるから顔見せに来い。」と言った父。普通に合格の報告に行くのに、この言い方。そして「コレだけ用意してて財布が空だったんで、1万円使っちゃった。」
テヘ。とか言いそうな顔で封筒を渡してくる。
「えー、そんなの全然だよー。ありがとう、じーちゃん。」と長男。そう、1万でも3万でも全然どうでもいい。金額を口にしてさえいなければな!
「口にした言葉に責任を持つ」とか「自分に落ち度があるならまず謝れ」とか、教わったり自分で考えたりした事ないのか。80年近く生きて、とか色々思う。
孫を可愛がってくれるのはありがたい。感謝の気持ちは大事にね、と子ども達を諭しつつ
「じーちゃんへのイヤガラセに皆んな東大に行け!」




