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“「えー……これで終わちゃったの(´・ω・`)?」”
“「まあ……でも、アイツやっと自分の席に座った。」”
“「あーなんかずっと他人の机の上に座ってたしねー」”
“「ほんとほんと。なんかああいうことをするやつは絶対ウザイ。」”
“「それと、映画だと絶対真っ先に裏切られるヤツw」”
“「わかるー!」”
“「というかーこれで授業が始まっちゃうよなーはぁ(*´Д`)=3だりぃー」”
“「いやいや、勉強するのが学生の本分だろうw」”
”「わかるけどさー……でもよー今日は一日目だよ?もっと気楽にやろうよー」”
”「それは先生が決めることだ」”
”「それに!クラスのみんなもまだ自己紹介してないし、急に授業を始めるなんて、誰が真面目に受けるん?」”
”「いるけどねwでもまあ、言いたいことがわからなくもない……けど、なんだかんだ言って、君はただ授業を受けたくないんだろうw」”
”「えへ(/ω\)」”
……途切れなく、延々と続いている会話。
”えへ”と打ち込んだ主は笑いを堪えず、うっすらと楽しそうに微笑んでいた。もし、これは授業中でやっていることでなければ、一つの微笑ましいことだったが……
無精ひげの先生が講壇へ戻る前に、高速でスマホを打ち込んでいる二人はまだ会話をやめる気がないようだ。
故に、このことによって、とある人物がこっそりと話しかけた。
「あの……」小さく呟いたような声。内木野比人はコソコソの声で左にいる阿多野真雅に話しかけた。
阿多野真雅は何の返事もせず、ただ疑惑の感じで、また、邪魔されたことによって、さっき楽しそうな雰囲気が完全に消え去って、少し不機嫌な目で内木野比人に見返した。
「それはもーう……やめた方がいいと思う。今、授業中なんで……」内木野比人はスマホに指差し、忠告する。
この忠告に、阿多野真雅は眉をひそめた。
彼女は彼に返した言葉は、「それはどーも」と。言葉を返したが、その視線は相変わらず自分のスマホに見つめたまま、ポチポチと会話している。
“「うざーこの隣のやつに忠告されちゃったよ。」”
“「ハハーさっきアイツの手を止めてたもんな。絶対正義魔人だよ。」”
“「わかるーw」”
“「というかーアイツを止めたからって、いい気になったじゃねえよ。」”
“「ははw実は案外、まーちゃんのことを気にかけていたりー?」”
“「いやないない。タイプじゃないし、それに本当だったらキモすぎー笑笑」”
”「ははは、ひどすぎーw」”
……
自分の忠告が無駄だとわかって、内木野比人は落ち込んだ様子で、元の方向に向いた。
”「ウィー!うちの勝ー利!ヽ(^o^)丿」”
”「まーちゃんの勝利!ヽ(^o^)丿」”
そして、講壇に戻った無精ひげの先生は、その視線がうっすらと阿多野真雅の方向に向いた。
先生が気付いた。
気付いたのもしょうがない。
実は、静かになった教室では、さっきのコソコソの音量でも若干目立っている。
忠告の話と彼女が返した言葉も、彼女の前後左右の生徒だけでなく、最前列の降里陽太にも聞かれていたのだ。ただ彼は阿多野真雅の方に向くつもりがないだけだ。
反応がないのは別に聞かれてないわけではない。そのことに目をやる意志があるかどうかの問題だ。
故に、このことに気付いたかどうかの反応も、自分のスマホに夢中しているかどうかに違いが生じる。
内木野比人は絶対聞かれたと、内心びくびくしながら何も気付かないふりで前を見た。阿多野真雅は俯いたまま、ずっと机の引き出しで隠すつもりの太ももに置いたスマホをポチポチと、和里芙田里と会話し続ける。
そのため、無精ひげの先生は、自分がとある生徒に睨まれていることに気付いてもそれを無視し、薄々笑ってるような表情で話し始めた。
まるでクラスの全員に話しかけているような、特定の誰かに話しかけているようにも聞こえる喋り方。
「さて、さっき色々あったけど、やっと静かになったね……」
“「うわーもしかして本当に今日で真面目に授業をやるの?」”
“「だりー」”
誰も声を上げず、無精ひげの先生は続けて言う。
「みんなもきっと先生のことが気になるだろうが――」
“「誰も気にしないよー笑笑笑」”
“「いや草w」”
「でも自己紹介する前に、先生は逆に、皆さんに聞きたいことがある。」
“「ワクワク」”
“「ティクタク。」”
”「それ時計w」”
「"政治”とは、いったい何のことを指しているだろうか。」
“「……?」”
“「……?」”
無精ひげの先生のこの話を聞いただろうか。ずっとスマホをいじっていた二人は、初めてスマホから離れて会話しなかった。
2025.7.17 少し修正を入れました。ほかの文章も少しずつ修正します!