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少し時がさかのぼり、とあるチャット履歴が長々と続いて、今にも会話が飛び交っている。
「おい!痛いっつってんだよ!」
“「ねえねえ。これ一体どういう状況―笑笑」”
「やってみたら?」「……あ?」「記者会見。今、ここで試しにやってみたら?」
“「さあね。でもおもろー笑笑」”
“「というか、アイツさっきからずっと前で騒がしかったもんねw」”
“「いや、さっきもっとひどいことをしようとしただろう。」”
“「ああアレね!見た見た。最低だよホンマ」”
“「見たって、君はすぐ隣だろうー笑 見てなかったら逆におかしいわw」”
「そんなことして、何になるんだよ!」「予行練習だよ――(以下略)」
“「ほんと女に手を出そうとするなんてマジ最低ー」”
“「わかるー最低―」”
「どうした?何も言えないのか?これでも暴露したいのか?記者の前に、こういう姿を見せたいのか。」「……っ!」
“「いいぞ先生!もっとやれー!(/・ω・)/もっと言え!」”
“「こういうやつはやっぱり天罰を!(・ω・ノ)ノ(/・ω・)/!\(・ω・\)」”
ポチポチと。
今は授業中にも関わらず、前に何が発生しても、両方のチャット主は相変わらずの感じで、ポチポチとスマホの通信アプリで会話し続ける。
この通信アプリで会話し続けている二人の正体は、内木野比人の両隣にいる、先生が来る前にずっと話が盛り上がっていた二人組の女子生徒である。
無精ひげの先生が教室に入って、シェークスピアの発言をした後、二人の会話の媒体は、すぐ心が通じ合っているように、口からスマホのアプリに変えたのだ。
故に、この履歴の前に、もっと色んな会話記録が残されている。
例えば――
“「ええー?何この先生。こわー」”
“「これ、戯曲か何かか?」”
“「しらん!」”
“「しらんってw学がないなーまーちゃんは」”
“「じゃあわーちゃん知ってんの?」”
“「いや?でも、デンマークという国知ってる。だからたぶん、あのセリフは西洋の映画か小説か何かかな?」”
“「ヒュー、わーちゃん博識~!」”
“「やめてそういうのwそれに、これくらい全然博識じゃないし」”
――と、このような会話もあれば、
“「ねーねーあの子はどう思う?友だちになれそう?」”
“「うーん……無理そ!なんか真面目そうだし」”
“「そうね。きついタイプかも。」”
――と、このようなクラスメイトについての評価もある。
授業中でも会話したいということを除けば、至って普通の現代子の二人だった。
二人各自の名前は――阿多野 真雅、和里 芙田里。
「もし何も言えないなら、降りてこい――」
“「ええ、もう終わるの。」”
“「ソウダソウダー!もっとアイツに恥をさらせ!」”
ただ、状況は二人の会話に従わず、降里陽太は講壇から降りて、そのまま自分の座席についた。
そして、遡った時間は――今に至る。