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「……はあ?」降里陽太は講壇の上に立って、わけのわからない表情をしている。
「そんなことして、何になるんだよ!」降里陽太は疑問を言い出したら、次に無精ひげの先生が答えた。
「予行練習だよ。君、俺の暴行が暴露したいんだろう?なら、ここで記者会見のシミュレーションでもしてみたら?この件は君に理が適ってるなら、誰も君の味方になるだろう。」
「……はあ?」
「ほら、やってみな。」
記者会見のシミュレーションなんかするかよ。そんなの付き合ってられるか!と……降里陽太は色々と言い返したかった。
ただし、講壇の上に立ったからなのか。あるいは、教室の雰囲気が変わったのを感じたからか……
「……」講壇の上に静かになったクラスの全員を見ていたら、なぜか口が開けなくなってきた。
そもそも、彼は今までずっと恐喝と脅迫でやり過ごしてた人間だ。
暴露とか、訴えるとか、そういうことなんて一度やったこともない。ないことに何をしたらいいか、当然何もわからない。
降里陽太は常人の思考回路とは違って、ただ先生というヤツらをビビらせ、自分が学校でやりたいことで楽しければそれで充分だと思っている。
自分の行動は誰に迷惑だとか、誰に傷つけたとか、そういうの一切考えていない。
つまり、世間的に言うと、降里陽太はとんでもない自己中でクズ野郎である。
けれど、こんな状況になるなんて、さすがの降里陽太でも全然想像できなかった。
「どうした?何も言えないのか?これでも暴露したいのか?記者の前に、こういう姿を見せたいのか。」
「……っ!」講壇上で何も言えなくなって、ただアホ面をクラスの全員に晒すなんて――次第に降里陽太が思った。
こんな目にあうのは初めてだ……
「もし何も言えないなら、降りてこい――」自分の位置に戻れ!と。無精ひげの先生が命令した。
降里陽太は怒りで震えながら、先生の言うことに従って、講壇から降りた。
座席に戻る途中、降里陽太は心の中でわかっていた。
この無精ひげの先生は普通の先生とはどこかが違う。
そして、彼は自分の座席につくと、心の中に決めていた――この恥はいずれ、必ず仕返してやると。
侮辱だ。これは紛れもない侮辱だ!
こう思いながら、彼は座席で無精ひげの先生を睨んで、睨み続ける。