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青筋。
「……ああ?」
内木野比人は俯いたまま。
「それは……やめた方がいいと思う。」
平実恵理戸は少し気になったみたいで、内木野比人を見始めた。
そして――「……ありがとう」と、小さく呟いた。
呟いたような声だが、ちゃんと内木野比人の耳に入った。
「……」心が、少し暖かくなった。
だが、手を止められた降里陽太にとって、このような状況はただの焦燥でしかない。
「……ふざけんなよ。どいつもこいつも――」
ダ
ダ
ダ
ここで、無精ひげの先生はようやく講壇から降りて、降里陽太の行動を止めていた。
「おい!ふざけんなよ!痛いんだよ!」無精ひげの先生は後ろから両手で警察みたいに制圧し、ずっと吼えている降里陽太の行動を止めた。
「いやぁ、ありがとうね。あなたの名前は――」
内木野比人は先生の話を無視して、直接に語りかける。
「先生は……なんで止めないんですか?」
これは予想外の反応だろうか。無精ひげの先生は一瞬だけあっけらかんとした感情を表し、次にまた微笑みの状態に戻って、語りかける。
「……先生の立場として、できないことがあるので。」
嘘だ。
「それは嘘ですね。」
「お?」
「さっきの状況、先生の立場より、もっと優先すべき立場があるはずです……」――それは、大人としての立場。
内木野比人の話を聞いて、無精ひげの先生は責められるような感情とかがなく、逆に、満足すぎるくらいに目が生き生きとしている。
その表情は内木野比人の目に収まって、心の中に色んな感情が渦巻いている。その感情に掻き出されて、次第に、次の言葉を自然に口から出てきた。
「……先生は、“悪い先生”ですね。」
「ええ。否めません。」
「僕も……先生の意図がわかったような気がします。」さっき平実恵理戸が言ったわけのわからないこと。そして、先生の行動は何のためなのか、すでに昨日で授業の時刻表を見た内木野比人にとって、少しわかってきた。
「それは良かったです。」
「……」納得いかない様子。
「まあ、覚えておくと良い。どの立場でも、完璧な立場はありません。ただ、自分に立場がないより、どんなに悪くても、立場があったほうがよほどいい。なぜなら、正の意味でも、負の意味でも、それは人の役に立つになる。」
「……ご教授、ありがとうございます」と、内木野比人が納得いかない様子で言った。
さて、と。無精ひげの先生はずっと自分に睨んでくる降里陽太のことに目をやった。
「さて、君の処遇は……」
ここで、降里陽太はいいことを思い付いたかのように、嘲笑うような感じで言った。
「……いいのか。せんせーい。」
「何?」
「こんなことして……俺、このクラスを出たら、訴えるだけでなく、絶っっ対……暴露してやる!!メディアにな!!!お前は生徒に暴力を振るう先生だとなー!!!!」
びびれ、びびれ!と。
しかし、無精ひげの先生は……ふんと、鼻で笑った。
無精ひげの先生は、「おい!痛いっつってんだ!」と言い続けている降里陽太を無理やり講壇の上に連れて、そして、ごみをポイと捨てたような感じで、降里陽太のそばから離れる。
「やってみたら?」
「……あ?」
「記者会見。やってみたら?」