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 無精ひげの先生はこの静寂の雰囲気に、何の動きもない生徒たちに、何人かを定めた。しかし、定めたものの、何も言わない。


 時間はもうしばらくして……


 この静寂の雰囲気に嘲笑う人がいた。


「はっ!先生のレベルが高すぎて、誰も知らないようだな。やはり先生の教育はどうかしている!」それは降里陽太。降里陽太は逆恨みの勢いでこう言っていた。


 この気合は、“絶対訴えてやる”との気合い。さっきの恥は、ここで晴らすつもり。


 降里陽太は、この皮肉なら絶対言い返せないだろうと思っていた。


 この先生はきっと感情的になって、なりふり構わず怒るはず。ただ、この算段は全く先生に効いていない。


 むしろ、降里陽太は反撃を喰らった。


「……君は、このクラスの生徒の代表か何かかい?」


「あ?」また思いのほかの反応に、降里陽太は直接的な反応をした。


「いや、違うだろうな。自分の無知を晒し、“誰も”という“みんな”に当てはめるようなやつは、代表のはずではない。」


「てめぇ誰に知識不足を――」降里陽太は机から降りて立って、話を続けようとしたが。


 無精ひげの先生は直接降里陽太のことを無視して、自分の話を続いた。


「――自分の知見は腹立つ人に代表されたくないなら、今でも遅くない。」


 “セリフの出処、答えが知ってる人ー?“と、無精ひげの先生は気怠そうに言って、一度目の時と同じような動きをしていた。


 内木野比人は、“いや、同じ状況でもう一度言ってもなー”と。彼はきっと誰も手を挙げないだろうと考えていた。


 しかし……


「先生。」


 内木野比人の斜め後ろから、聞き覚えのある声が耳に入った。


 その声は、斜め後ろ方向の女子生徒だ。


 今まで女性の顔を見れば必ず恥ずかしくなる感情は、ここでよりあふれていた驚きの感情に伏せられ、内木野比人は直接斜め後ろの方向に目をやった。


 そこで、女子生徒だから、手に本を持っているから、文学少女だと思ったその女子生徒の顔は、決して彼と想像した温和そうな顔つきではない。


 鋭い眼差し。薄いピンク色の唇。知的そうに見える顔だが、それは文学少女より、頭が切れる、抜け目のないエリートみたいな感じだった。


 決して醜いではない。むしろ颯爽とした綺麗寄りのその顔に、内木野比人の第一印象は、“プライドが高いかも”という勝手な印象が脳に浸透されている。


 内木野比人は女子生徒を見る。クラスにいる生徒たち皆も、この勇気のある人に注目し始める。


 鋭い目の女子生徒は無精ひげの先生に言う。


「先生。私はあんな人に代表されたくないので、答えを言います。」


「素晴らしいですね。いいですよ……あ!でも答えを言う前に、自己紹介も兼ねてお願いします。」


 女子生徒は少し先生の言葉遣いに訝しげに聞いていたが、1秒の間もなく、自分の心の中で納得した。


「……わかりました。」


 彼女は一回深呼吸して、座席の前にいる人達を一通り見たら、すぐ自己紹介した。


「私は、平実へいみ 恵理戸えりとと言います。酷すぎでなければ、私のことどう呼んでも構いません。」


 “あと、セリフの出処は、シェークスピア作の有名な悲劇・ハムレットからのものです……” 平実恵理戸は続けて詳しく説明して、最後に「このようなことは常識みたいで、誰もが知っているはずですが……」と補充し、目線が降里陽太のほうに飛ばした。


「……あ?」


「低レベルみたいな言い争いになるようなとこ、どこにもないと思います。」


 青筋。


「てめぇ……平実恵理戸って言ったか?」


「ええ。」


「……名前、覚えたぞ。」


「それはどうも。」


 両方の会話も感情も平淡なのに、火花が散るような雰囲気。


 平実恵理戸は別に空気が読められないわけではない。ただし、あんなやつと一緒にされたくない意志のほうがどの気持ちより強かった。


 刺激。


 内木野比人は平実恵理戸を見て、その目に感心した気持ちがあり、クラスの雰囲気が少し変わったような気がした。


 まるで先頭にリーダーがいたから、何人かの心が変化し始めた。当然、内木野比人はこのことを知る由がない……


 パチパチパチ。


 無精ひげの先生は微笑みで拍手した。


「素晴らしい答えでした。平実恵理戸さん。今先生の心の中、このクラスに対しての心象が少し良くなりました。ありがとうございます。」


「……はい。そうですか。」先生の反応に、微妙な感じがする平実恵理戸。どう答えた方がいいと思う時間はあったが、結局他の返事ができず、素直にこう答えた。


 そして、微妙な反応を抑えて、平実恵理戸は先生を見つめながら、次の考えたことを言い出した。


「それと、私はたぶん……先生の意図がわかりました。」


「おう?」


「だから、これから私は自分のできる限りの範囲で、積極的に発言します。」


「それはありがたいことですね。」


 言い終えて、平実恵理戸はここで降里陽太に一瞥した。無感情で。ただの無で……そして、すぐ自分の手元の本に見始めた。


 だが……ただの無だからこそ、降里陽太は不機嫌な感情が湧き上がった。


 ――あれは蔑むような目付きだ。


 彼は無精ひげの先生を後にして、直接平実恵理戸の方向へ歩き出す。


 ドン!机を叩いた。


「……貴様、俺のことを見たんだろう。」怒り。


「先生。この人、私に恐喝しています。」平淡。


 無精ひげの先生はクラスの名簿を見て、「降里陽太君。度が過ぎる。」と言った。


 冷徹。


「せんせーい。俺は手を出していないんだよ。」


「私、恐喝していると言っています。」


「……降里陽太君。自分の席に戻れ。」


「お前はビビってるのか?」


「ビビってません。ただ――」「っなら恐喝になってない。だってお前はびびってないからだ!恐喝はビビりになってから恐喝になるんだよ!」


「……降里陽太君。」


「屁理屈です。君は――」「ああーもう黙れ!」


 お前はこーだよと。


 降里陽太は、平実恵理戸に手を出そうとしている。


 この時、この瞬間。この状況に対して、ずっと目にして、おかしいと思っている人がいた。


 彼の心象変化はこうである:


 無精ひげの先生はなぜか口だけで降里陽太を止めている。まさかするとは思っていないのか、それとも最初から動こうとしないつもりなのかわからない。ただ、このやり方は効果がない。


 そして、周りの人も誰も止めようとしていない。目を付けられて、ターゲットが自分に移るのが恐れているだろう。つまり、期待できない奴らだ。


 それに、冷静に降里陽太に口答えする平実恵理戸も、どこかネジが外れている感がある。


 普通、この状況に対して、ビビるのが一般的だろう。けれど、彼女はそういう素振りを一切見せていない。


 この反応を見たら、余計なお世話だったかもしれないし、彼女自身で解決できるすら思える彼……あの手が振る前の予備動作を見た瞬間、やはりそうはいかないと心変わりした。


 今度こそ、ちゃんとした青春の学校生活を送りたかったが、やはり……これは無視できないと。


 何より、彼は平実恵理戸さっきの行動で、少し勇気をもらったのだ。


 だから、少し心境が変化した彼は――内木野比人は、降里陽太が暴力を振る前に、その手を掴んだ。


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