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 春。


 新学期の時期。


 また、新入生入学の時期。


 市立・市民高等学校では今、学生たちがわらわらと校門を通っている。


 すでに前日で入学式が終わった今日、学生たちはそれぞれ各自のクラスに目指し、教室に入る。


 しばらく時間が経ち、教室の中にどんどん人が集まって、校内の人影が減っていく。


 それぞれのクラスに先生がまだ来ていない間、教室の中に生徒たちがわいわいガヤガヤと、かなり騒がしい風景だった。


 そんな中、学校の中で建物の隅にある1年C組の札がある教室は、各クラスの中で一番喧々囂々(けんけんごうごう)としている。


 昔の仲や同一中学の生徒など、お互い知り合って騒がしい人もいれば、誰とも知り合っていない、ただ静かに座席に座っている人もいる。


 先生がまだ来ていないこの段階はいわば、生徒たちみんなが各自のグループを形成しようとしている時間だ。


 当然、クラスの雰囲気に馴染めない生徒もちゃんといる。


 ほぼ真ん中の位置に座っている男子生徒、寝たふりをしている彼は、まさにその一人だった。



「正直、昨日で入学式が終わったばっかりだから、今クラスの全員がまだ知り合っていない状態だと思うんだけど……なに、この状況……」


 こう思っている彼の名は、内木野うちぎの 比人ひと


 今度こそ、ちゃんとした青春の学校生活を送りたい!と決意した内木野比人は、入学式当日にクラスの説明会で、勇気を出してど真ん中の座席に選んだ結果、今がこうなっている。


 両隣の女子生徒が知り合いのようで、彼を隔ててわいわいと話が盛り上がっている。前方は恐らく同じ中学の男性グループで、ファッションやスポーツの話題など、明らかに混ぜられない話をしていた。


 そして、後ろの人が見えないが、時々自分の椅子にガタガタとぶつかることによって、たぶん激しい行動を取っている学生さんだと予想できる。


 四面八方に話しかけるという気持ちで座ったものの、結局勇気を出せず、昔みたいに寝たふりをしている。


 内木野比人にとって、これはまさに地獄のような状況だった。


 ただ、この状況から抜け出せるために、彼は別に何がしたいわけではない。

 そもそもその勇気があれば、寝たふりなんかしない。


 だから、今の彼はただただ一つだけ考えている。


 先生……早く来てくんねぇかなー、と。


 両手でおでこに支えて、机に俯いたまま、内木野比人は寝たふりをし続ける。


 しかし、彼は自分の思いに浸って、考えつくことができなかった。


 ダ


 ダ


 ダ


 1年C組に近づく足音。とある先生が階段を登っている。


 この足音とともに、1年C組に入ってくる先生によって、内木野比人は自分の学校生活が本当に変わるとは知る由もなかった。


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