10(しばらくの完)
無精ひげの先生は嬉しそうに拍手していたが、すぐこの雰囲気を壊した人が現れた。
「だから何だよ。選択とかどうとか知らんが、何の関係があんだよ!」
無精ひげの先生はこれを聞いて、ため息をついた。
改めて説明しようとした瞬間、自分が言いたい話は一人の女子生徒が代わりに言ってくれた。
「ここまで言ってまだわからないとなると、君はよほどの脳が悪いか、それともそこまで現実を受け入れたくないか、どっちなんでしょうか?」と平実恵理戸が淡々と言った。
「はあ?そんなの誰がーー」ここで、降里陽太は話の途中で、言葉が詰まった。
反論できないわけではない。ただ一つに気付いたのだ。
このまま反論してると、水掛け論になることに気付いたのはもちろん。だが、その上に自分がつい反論したい話の本心に気付いたのだ。
”そんなの誰が認めるんだよ!”と。ついこの反論を反射的に反応したい降里陽太にとって、当たり前のことだったが、”誰がアホだ、誰が現実を受け入れたくないんだ”と反論するのは簡単だ。
ただ、この話に矛盾がある。
それは、”俺のことは君に与えられた選択肢のどっちでもない!”という意志。
つまり、”自分はどっちでも属さない”という話。
さっきまで散々”誰の味方だ”、”票を入れろ”みたいな話をしているのに、ここで自分に不利な話となると、突然”自分はどっちでもない”、”なんで認めなきゃいけないんだ”と似たような話をすれば、完全にさっきまでの自分にブーメランをしたようなものだ。
明らかな矛盾だ。だから、彼は言葉が詰まった。
そして、降里陽太はさっき平実恵理戸と無精ひげの先生が言った話は何の意味があるのか、やっと気づいた。
はしごはもう与えた。それでも自分で外したい?と。
このまま黙ってれば、これ以上の話は言われないだろう。
だが、これは侮辱だ。自分に惨めを感じさせながら、さらに侮辱していると。
やはり、我慢できないーー
「まあいいだろう!俺はバカでも何でもいい。ただし!こんな投票なんか無効だろう!クラスの大半も全然投票してないんだぜ!」それでも自分が正しいと思わせようとしている降里陽太。
だが、今度返事したのは、平実恵理戸ではなく、無精ひげの先生である。
「は。投票しない場合は、票が相対的な多数に入れるだけだが……まあ、そんなに不服なら、今ここでもう一つの選択肢を増やそうーー」
”自分が思ったイメージはどっちでもない、あるいは未だにそこまで確かなイメージが湧かない、政治についてまだわからない人ー”
手を挙げた人は――さっき手を挙げてない残りの23人全部。このクラスの一致した動きに、降里陽太は元々嘲笑おうとしたが、この状況を見て、硬直した。
さらに、無精ひげの先生はもっと面白ものを見せようと思って、もう一つの条件を入れた。
「ちなみに、さっき投票した人でもこの票を入れてもいいよ。」
そして、手を挙げた人は――31人。この意味は、降里陽太自分以外の人たち、全員だ。
「”人生は選択の連続である”、面白いんだよね。この言葉は。」それは自分にかけた言葉なのか、それともクラスに言っている言葉なのか、降里陽太はわからない。
だが、硬直したからか、それとも心変わりでもあったのか、このあまりにも予想外の状況に、降里陽太でも無精ひげの先生の言葉を聞き入れ始めた。
「政治というのは、色んな与えられた選択肢から選ぶものだ。自分の理念と価値観に近いものに関心し、存在したことに目を向ける。その選択は、もし自分の価値観と遥かにかけ離れていたら、誰も選ばない。さらに、”選択しない”という選択の理屈も必ず出てくる……まあ、この理屈はあまり感心できないけどね。」無精ひげの先生は一呼吸し、続けて言った。
「でも、この選択の理論から生まれた一つの価値観として、きっと誰もが理解できる。それは――」
政治において、”正解”と”間違い”はない。
「あるのは、道徳の教養と、倫理観についての問われるもの。
これで、先生の授業は何を教えているのか、そして、君は自分のことでも、一体どこまで知っているのか、わかり始めたかい?」
教訓、説教。どんな言葉でもいい。
降里陽太はとある心境の変化で、思わず手を挙げた。
彼は、自分に対しての無知を、一票を入れたのだ。
静か。
クラスは再び静かの雰囲気になっていた。
ただ同時に、この授業の時間は、間もなく終わりになる。
休憩時間前のわずか5分。
無精ひげの先生は両手で講壇の机に支えて、クラスの生徒たちを見回した。
手を挙げている人に手を下げてって、また、立っている阿多野真雅にも座ってほしいと。
「正直、色々あったんだが、先生もここで自己紹介したいが……」
無精ひげの先生はもう一度に全員を見回した。
「さっきのことで、皆さんはとても教え甲斐がある生徒たちだと思いました。」
無精ひげの先生は見回して、ある生徒のほうに止まった。
「だから、ここは自己紹介より、皆さんに良い宿題を出します。それは――」
”皆さんは、政治について、どんなイメージがあるのか“と。
「……この問題は、皆さんの今学期ずっと考えなければならない宿題です。」
****余談****
これは、放課後でとある二人の学生の会話。
「ねえ!平実さんー!」
ダ、ダ、ダ、ダ。
「?」
「……ちょっと……ちょ、待ってください!」
はぁ……はぁ……はぁ……
「どうしました?内木野さん。こんなに焦って。」
「いや……はぁ……なんか……はぁ……帰りは、同じ方向……だな、って……はぁ……はなし、がけましだげど……」
「……大丈夫ですか?」
「い、いいえ……ダイジョバナイ……ちょ……ちょっと息切らして……」
「うん。」
しばらくして。
「ふぅ……」
「もう大丈夫ですか?」
「うん……ちょっと良くなりました。」
「それは良かったです。それで?どうしました?」
「あ、いやー……なんか、帰りは一緒だなー、って……」
「……本音は?」
「あ……ええと……」
「私にもう一度礼を言ってほしいですか?」
「あいやそうじゃなくて――」
「じゃあ、あの先生のことなんですね?」
「……すごいな。」
「今日の経験をしたら、それしか思いつかないので。」
「……それもそうか。」
「それで?聞きたいのは?」
「あー……ほら。」
“今日は授業の一日目だし色々聞きたいこともありますし……特に、俺はあんまり初日で友だちとか作れない人なんですし、だから誰に言えばいいかとわからないというか、つまりその――”
「……要点を。」
「ぁ……う……つまり、平実さんって、あの先生のこと……どう思いますか?」不安。
しかし、これは青春の甘酸っぱいみたいなそういう不安ではない。
これは――アレだ。
「多分、君と同じ考え方だと思います。」
!
「つまり――」
「うん。変ですね。あの先生は。」二人の会話は、当然無精ひげの先生のことを指している。
「やっぱり!!俺だけじゃないよね!やっぱあの先生はおかしいですよね!はぁああ、良かったー!俺だけじゃなかった!」
ふふ……
「あ、ごめん。はしゃいじゃって……」
「いや、いいですよ。別に。私も正直、ホッとしました。」
「え、そうなの?そうは見えませんが……」
「ホッとしましたよ。本当に。」
「そう……でも正直、俺だけじゃないかってずっと思いましたよ。」
「どうして?」
「いやぁーだって、あの状況で静かになるのはおかしいでしょう!けど、誰も発言しないし、突っ込む人もいない!それに、あの先生は結局最後まで自己紹介しなかった!おかしいでしょう!」
「ふふ……そうですね。でも、内木野さんは気付きました?」
「何を?」
「あの授業で、誰も居眠りしていなかったことを。」
「……ええ。それは……気付きました。」
「あの先生は……本気でみんなに政治学を教えようとしている。」
「……あの不良まで?」
「あの不良まで。」
「すごいな……その心意気。」
「さあね。ただの私たちの思い込みかもしれませんし。」
静か。
二人の帰り道は、静かになった。
踏み切りもなく、ただただ樹木が並び、夕陽が見える大いなる住宅街。
二人は道寄りに並べて、歩いている。ただの何となく、何となくの感じで並んで、一緒に歩いていた。曖昧な関係より、仲間という感じのほうが適切な二人である。
一緒の帰り道で、思い浮かべた考え事も偶然に一致した。
“政治は、何なんだろう”と。
この二人の答えは、少し遠くない未来に見つける。
それは似たような答えで、仲間にもなれそうな話。
“政治は、妥協の芸術。未来を良くするための、多種の制度から妥協点を探すための知識”
“政治は、生活そのもの。団体の管理に必要な技術で、改善点を見つけるための術”
その共通点として、どの領域にも関わる、最善手を選び出すという根底の思想である。
その時、この二人は理解できるようになる――日本においての、“民主”という政治の本質を。
はい!ここで一段落するつもりでーす。
まあ、物語にはまだ色々書けるものがあるけど、
今書きたいものを大体書いたし、言いたいことも何となく書きましたので、
しばらくこのまま放置しまーす!
18日、19日、20日。ちゃんと注目して、応援します!
他に言えることはあまりないのですが、
どうか、日本に良い未来がありますように!
2025.7.19 はい!修正は完了しました。
かなり大幅に変えました。
たぶん、見ている感じは前より全然違うと思いますが......どうだろう。
正直、小説の不安はあるけど、これは些細なことです。
だって明日、もうすぐです!
日本を守っている人達のために、私、祈っています!
無事に選ばれるように。
そして、悪い奴らに乗っ取られませんように!




