55.フィナーレ
わたくしは歩きました。殿下の方へ。
「殿下。」
「お前は…セイレーアか。どうした?」
「いえ、シェイン様のことで殿下が落ち込んでいるのではないかと思いまして」
「……なぜそう思う?」
「先日のシェイン様との話、申し訳ないとこに聞こえてしまったのですが、その時の殿下の顔がなんとも悲しそうで……」
「……それで、なんだ? からかいに来たのか?」
どうやら警戒心を上げられてしまったようです。
「もし良かったら知り合いを紹介しようかと思いまして」
「ほう」
よかったです。話は聞いてくれそう。
「わたくしの血縁のものに、優秀なものがおりますの。2学年下でとっくに学園に通っているのですが……。レアリアという名前なのだけど、聞いたことはあるかしら?」
「レアリア……優秀だと聞いたことがある」
「彼女を紹介してもよろしいでしょうか?」
「頼む」
「了解いたしました」
こんなふうに行動できるようになったのもシェイン様のおかげ。
シェイン様がわたくしを勇気づけてくれたから、聖女の友達だと言ってくれたから、わたくしは行動できる。
おかげでベルーゼ様ともお付き合い出来た。
そして、今、殿下に無礼になるかもしれないことを奏上出来た。
今までの自分だったら考えられなかったことだわ。
そして、そんな成長を誇りに思える。
そのことも嬉しかった。
◇◆◇
私はとうとう結婚した。
平民が……孤児が……結婚だ。これが乙女ゲームの世界だとしても驚くべきことだと思う。
カンヴェス様は私の意思をすごく尊重してくれる。
そんなカンヴェス様と私は、今、王宮魔術師団に所属している。セイレーア様も一緒だ。
女子はまだ多いとは言えない。
だけど、私たちが行くことで、その輪が広まるきっかけになればいいなと思ってる。
その目標にも最近は近づけている。
最近は古代の魔法の方法がちゃんと授業でも教えられるようになったから。
おかげで、最近は強い魔術師がたくさん入ってきてくれているし、少しずつ女子も増えているのだ。
我が国は、強い国家としてこの大陸で少しだけ、恐れられている。
聡明な国王陛下になったガベーナ様は侵攻をしようとはしていない。
他国に援助し、レアリア様とも結婚し、幸せな王宮生活、やりがいのある仕事にきっととりくんでいるだろう。
リゲイゼ商会は、今や都で一二を争う人気の商会だ。
リガーレ様の功績も大きいようだ。
「よお、シェイン」
魔術師団にいるとき、陛下が話しかけてくるのが、唯一私の心臓に悪いことだ。
ただ、心臓にいいかはともかく、女子が政治に対して少しの口だしを許されているのだ。
ガベーナ様は、これからも良き王として君臨なさってくれるだろう。
私たち全員の未来は、とても明るい。
「陛下、お久しぶりです」
「久しぶりだな、セイレーアはいるか?」
「はい、呼んできましょうか?」
「頼む」
そして、こんな風にしゃべり合える時間は、転生したときは全く想定しないものであった。
「すべてが上手くいって……よかった」
これからは、少しずつ言動の仮面をを貴族の嫁として問題にならない範囲で外していってもいいかもしれない。
そんなことを思った。
これで本編は完結です。
閑話を出そうと思っているので、しばし、お付き合いください。




