52.発表されます
いよいよ今日、論文の順位が発表される。
ここには私の未来がかかっている。
講堂に集まった面々は皆、少なからず緊張している。
「皆、この3ヶ月ほど非常によく頑張ってきたと思う。誇りに思う。……さて、今日はこれから順位を発表する。楽しみにしているだろうが、その前に一つだけ言っておきたい。皆、今までよく頑張ってきた。今年の論文は非常にレベルが高かった。順位が悪いことがあっても気にしないで欲しい」
学園長が、話しだした。
うん、心得ておこう。
「それでは、結果を発表する」
空気が変わった。静かで落ち着くような、また居心地の悪さも感じるような。
矛盾しているのはわかっているけど、こればかりは仕方がない。
「第5位、サスレイア」
サスレイア……って、あの?
私に始めの頃突っかかってきていた、あの?
そっか…ちゃんと学園は卒業できるんだ。学園長はやさしいなぁ。
安心した。あちらに非があるとは言え、卒業されないのでは後味が違う。……忘れかけたりもしたけど。
そんなことを考えている間に、四位は呼ばれていたようだ。
「3位、シェインとセイレーア・リチーア。ここからは内容も紹介する。これは、変装魔法、その他複合魔法について、だ」
3位……。もう少し上に行くと思ってたんだけど……。私の勘違いだったようだ。学園長も今年はレベルが高いと言っていたし、そこまで気にしなくてもいいだろう。
……王太子が、この上にいなければ。
「2位、ベルーゼ・ホシミア。魔剣の作成について」
魔剣の作成?
もしかして作ることができたの? だったら負けても仕方がないかも知れない。
……この上の人物は誰?
「第一位、カンヴェス・バレンティア」
カンヴェス?
彼が、一位だというの?
では内容は?
「魔法の視覚化」
魔法の視覚化。
うん、確かに彼は使うことが出来る。
だけど、論文に出せるまでに発展させることが出来たの?
いや、出来たから発表しているんだろう。だったら魔剣や複合魔法が勝てるわけがない。
「他のものの順位は、掲示板に張り出すとする。残りの時間は各自自由に使ってくれ。だがいいな? 皆素晴らしい研究……論文だった。全員に拍手を」
当たりに盛大な拍手が、長い間響いた。
「表彰は、卒業式で行う。今名前を呼ばれたものは心の準備をしておくように」
「「「「「「はい」」」」」」
「セイレーア様、少し出掛けて来ますね」
「分かったわ。今日は変装無しで頑張るわ」
「お願いします」
さて、私は行かなければならない。
王太子に挨拶をするため、この結果に委ねた私の将来を確定させるため。
そして、私の意地だ。
ここで、私の将来が決まる。
私は歩いた。王太子……いや、ガベーナ様と呼ぶべきか。ともかく彼を探して歩いた。
……講堂にまだいるはずなのだが。
確かこの場面はどうなっていたっけな、ゲームでは。シェインが1位を取っていた気がする。
だったら原作は変えられているのかも知れない。
そのことは、嬉しかった。
ようやく見つけた。
彼は、端のほうにいた。
「こんにちは」
さあ、始めよう。




