51.SIDE ガベーナ
私はこの国の王太子だ。
そして、それ相応の女性を見つけてくることを求められている。
そんな私は先日、理想的な女性を見つけた。
聖女シェイン。
これが彼女の名前と役職名だ。
彼女はその聖女の役職通り、清く生きている。
時には悪者を祭り上げることも、そしてその後処理として、自らの身を差し出すこともできる。
王妃にもってこいの人材だ。
さらに非常に多い魔力を保有している。次世代の子も期待できそうだ。
平民から高魔力保持者が生まれる。
これは数多く存在する事例だ。そして、調べた結果によると、彼女らは王子と結婚することが多い。
きっと平民上がりだから権力が欲しいのだろう。
それだったらシェインも同じはずだ。
私は物語に出てくる王子みたいに、時に愛をささやく献身的な王子を装うことにした。
しかし、シェインは一向になびかない。
どうやら彼女はあまり興味がないらしい。
そうか……
少なからずショックを受けた。
「論文の評価が殿下の方が高ければいいですよ」
そんなとき、彼女がこんなことを言ってくれた。
これならば勝つチャンスはある。いかに彼女が聖女で、素晴らしい成果をおさめていようとも、私もいままでいろんなことを学んできたのだ。
それまでに論文は一度提出していた。
せっかくのチャンスだ。
念には念を入れて、再度確認してみることにした。
論文:魔法剣の作成について
私は魔法剣に着目した。一般に遺跡でとれる、昔の剣だ。
そして、彼女たちが昔の魔術を使い始めた時から、もしかしたら作れるんじゃないかとねらっていた。
彼女たちが魔法を放つ際、剣をその先に置いておくのだ。
するとその魔法がたまって魔力剣になるのではないか、そんな仮説だったが……
上手くいった。
もちろん、この成果にはシェインたちの許可はないし、彼女たちなしにこの研究を作ることは出来なかった。
だが、これならいい所はいけるだろう。
ただ、カンヴェスに手伝ってもらい、もう少し成果を残すことに決めた。
論文提出期限2週間前。
再び論文を提出した。
前のよりも確実に良くなっているという自信がある。
……これなら、きっと彼女にも勝てる。そしたら、我が国は安泰だ。
彼女は、聖女だ。
聖女らしく、治癒魔法も使える。
他よりも秀でた模倣を使える。
だから、この国の王妃になってほしい。
その思いは今も変わらない。
「なあ、殿下殿、俺と論文の評価を共創しないか?」
「私の論文はお前にバレているが?」
「大丈夫だろ、まったく別のものをやっている」
「それで?」
「俺の方が高かったら私のいうことを一つ聞いてくれ」
「では私の方が高かったらひとつ言うことを聞いてくれよ」
カンヴェスとはシェイン関係以外であまりかかわったことはない。
だが、彼の魔法はすごい。
もし……負けたら……
「もちろん王太子として恥ずかしくないものにしてくれよ」
「それくらいは心得てる」
「そうか、それなら安心だ」
弱気になっている自分に気づいた。
大丈夫だ、カンヴェスに手伝ってもらっているとはいえ、発想は誰にも負けない自信がある。
そして、結果発表の日がやってきた。




