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50.妥協しました

大会が終わっても、普段から隠れたり変装していたりしたことの成果がようやくあらわれたようで、あまり絡まれずに済んだ。

うん、ちゃんと学習した、私。偉いと思う。

しかも大会後から授業はなくなって、研究成果を出せば終了というわけだ。だから私はずっと変装して過ごしている。

研究成果ならとっくに出した。

セイレーア様との共同研究。受理されたから、卒業できることは間違いなし、だ。


「なあシェイン。」

「なんですか、王太子殿下。」

「じゃあわたくしは出かけるわね。」


セイレーア様はベルーゼ様といちゃいちゃするし、研究成果をとっくに出した王太子は絡んでくるし。

身が持たない。


「殿下といると、私がシェインだってバレるんですが。」

「だったら私にも変装を施してくれないか?」

「…。変装」


黒髪に茶色の瞳。こんな地味なやつ、殿下はお気に召さないだろう。そう考えた私の必死の抵抗だったが。


「おお、この色はいいな、気に入った。」

「…。」


なぜか気に入られた。私は好きだよ?前世ではその色だったんだし。だけど王太子がまさか気に入ってしまうとは…。


「絶対あなたおかしいですよ。」

「シェインが私のことを知ってくれて嬉しいよ。」


一体どういうことだろう。私がヒロインの乙女ゲームだというのに…私が攻略する側なのに…しないけど…だけど王太子に攻略されそうなんだけど。



「はぁ…」

「お、隣にいることを認めてくれたか。」

「私、そんなこと言いましたか?」


確かに考えたけど。


「分かるよ。」

「そうですか…」

「まだ私との婚約を認めてくれないのか?」


捨てられた子犬のように王太子が言ってきた。


「はい。」

「君は最終大会で優勝した。聖女ばかりではなく女神だというものも現れているよ。そんな人を后にできたら王国は安泰だよ。」

「なぜ、諦めないんですか?」

「そりゃあ君のことを好きになってしまったからだよ。」

「嘘くさいんですよね。」

「酷いなぁ。」

「思ったことを言っているだけですよ。」

「やっぱり君が欲しいなぁ。」


何か、ゲームが無いかなぁ。


「論文の評価が殿下の方が高ければいいですよ。」


私のは変装だ。それ以外にも簡単なものを少し載っけた。あとは古来の魔法も。これ以上の評価を得るものはなかなか無いだろう。


「それは誠か?」

「こんなもので嘘を言っても何にもなりませんよ。」

「ありがとう!」


変な人。そう思いながら彼を見つめた。


まだ2ヶ月分、卒業までに時間はある。

それまで、ただただ私たちは過ごすしか無い。

そう、セイレーア様と会うためだけにここに来ているんだから、これからは寮で会うことにしよう。そしたら王太子に見つかることはない

それが一番いい気がする。


…そんなだからシェインは気付かなかった。


少し、変化が起こっていることに。


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