5.準備は終わった
仕返しのために、あいつらが何を目論んでいるのか、考えることにした。
が、これ、かなり都合がいいのだ。
これのお陰で王太子は近づいてこないし、これが成功すれば、セイレーア様はヒロインがいなくなって断罪されることはなくなる。
都合がいい。セイレーア様にとっては。
だけど、私にとっては都合が悪い。
だって、幸せになったセイレーア様を見ることができないから。
そうだ、目標を変えるとしよう。
『セイレーア様を幸せにし、私もそれを見守る。』
今日から私は、それのために力を注ぐ。
こちらは反論できる材料を揃えた。
後は断罪されるのを待つだけである。早く来ないかな。
そんなとき、最高学年の卒業パーティーが行われるということになった。たしか、ゲームではヒロインは。ここで選んだ人物と入場できることで、そのルートが確定した。
だけど、今の私は誰のルートにも入ろうとしていない。
仕方がない、一人で行こう。
ドレスに関しては、このような状況下でも、王家が準備してくれるのだそう。とても助かる。
最高学年の卒業パーティーになぜ在校生が参加しなければならないのか、という疑問はあるが、ゲーム的に都合が良かったのだろう。
そして、今の私にとっても都合が良い展開だ。
卒業パーティー当日まで、状況は悪化し続けた。
私に関する悪い噂話は増えていくばかり。毎回毎回それを否定する根拠を探すのが大変だった。
あの二人を尾行したりもして、頑張って探した。その際、遺憾なく魔法を使わせてもらった。全属性使えるというのは非常に楽である。
「卒業生、入場」
卒業生が入ってきた。私は、つい卒業生の人々に見惚れてしまった。みな自身にあふれている。輝いている。それが羨ましかった。
あの二人は、この素晴らしいパーティーを壊そうとしているということ……になるよね? それはやりたく……ない。
だけど……
結局、私には、勇気がなかった。そして、私に対する断罪が始まった。
「聖女、シェイン。あなたの聖女の称号を捨てる……いや、あなたは学園から消えるべきだと思うわ!」
声高らかにリガーレが叫んだ。
そう、パーティーなのに一人でポツンと過ごしている私の前で。
ホールの端っこにいた私の前にセイレーア様を連れてやってきたのだ。
ざわめきが広がっていく。そりゃあ当たり前だ。ここは卒業パーティーであって断罪の場ではないから。
「そうよ! あなたはセイレーア様を傷つけたわ!」
サスレイアも声高らかに叫ぶ。
だが、その内容を諌めるものはいない。皆、噂話で私の性格を誤解していた。
だけど、本当にセイレーア様を傷つけているのはあなた達だ。
ふつふつと怒りが湧いてきた。
「いったい私が何をしたのでしょうか?」
さあ、ここからセイレーア様をこのいやーな取り巻きから救ってあげよう。
そして、私の怒りは最高潮に達する。